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ぽかぽか春庭「今期の文化発表ソロバンと料理とギター」

2019-11-21 00:00:01 | エッセイ、コラム
20191116
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(20)今期の文化発表ソロバンと料理とギター

 春庭の日本語教室だよりを続けています。
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2006/07/23 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>前期もめでたくこれにておひらき(1)今期の文化発表ソロバンと料理とギター

 日本語教師の「役得」として、私が毎期楽しみにしている授業、会話クラスでの「自国の文化発表」があります。
 毎回、学生たちは、はりきって自分たちの文化をクラスメートに紹介します。観客はクラスメートのほかは、担当教師の私だけなので、日本語をまちがえても平気、ときには英語まじりで、楽しく発表をしています。

 今期の「10人のうち6人がスペイン語母語話者」という陽気なクラスでも、にぎやかに文化発表会を行いました。
 前週に、私が「そろばんでの計算方法」と「百人一首」を紹介しておきました。それをお手本にして、「説明する」というパフォーマンスを行うのです。

 私の見本の次に、パキスタンのシャーさん、「わたしは、今日説明します」と、手をあげました。
 ちょうどこの日、パキスタンの民族衣装をきて登校していたので「パキスタンの男性の伝統衣裳について」という発表をしたい、というのです。

 パキスタンの民族衣装はシャルワールカミーズという、ひざ丈のワンピースのような上着とズボン。男性用は無地。女性用は花柄などもあります。
 男性用上着の丈が短いとき、ズボンの裾が広い、ズボンの裾が細いほど、上着の丈が長くなる。

 新婚4ヶ月目のシャーさん、婚結婚式のときは、上着の前部分に花の刺繍を縫い込んだものを着る、などの説明を、しました。
 一生懸命説明したのですが、日本語でことばにつまると、英語で説明をはじめ、それを私が日本語にしたあと、リピートする、というやり方になってしまいました。

 やはり、準備なしにいきなりでは、日本語での説明はむずかしいということになりました。それぞれ準備をして、次週発表しましょう、と宿題にしました。

 文化発表の話を「日本語教員養成クラス」でしたところ、日本人女子学生が「ぜひ、見学させてください」と申し込んできました。発表の当日の授業が休講になっているので、時間があるというのです。
 「日本の文化のなかで、簡単で楽しいものをえらんで、あなた自身も発表すること」という条件で、見てもらうことにしました。

 文化発表会当日。
 はじめに、自己紹介。先生以外の日本人が教室に来たのは初めてなので、みな最初はちょっぴり緊張して、それぞれ自己紹介をしました。
 ホームビジットの前に何度も練習した日本語の自己紹介なので、じょうずに言えます。緊張もほぐれました。
 日本人学生サヤさんは日本語教師になりたいと、がんばっているところです。
 
 最初は女性3人がそれぞれの「お国料理」の作り方を発表しました。
 メモを見ながら、ときどき「センセー、手伝ってください」と、教師に助けを求めながらでしたが、インドネシアのリルは「ピサン・ゴレン(揚げバナナ)」、ペルーのアナは魚料理「セビチェ」を、イランのサラはペルシャ風デザートを紹介しました。

 料理の説明はたどたどしい部分もありましたが、授業が始まる前に、前もって黒板にレシピをに書き込んでいたので、材料や作り方がよくわかり、どれもおいしそうな料理と思えました。

 コスタリカのホセは、ギターが得意。13歳からクラシックギターの練習を始めたのだそうです。彼が披露した曲は、ブラジル人の作曲家の現代クラシック曲でした。
 すばらしい音色で、しばしクラシックギターコンサートに聴き惚れました。

<つづく>

2006/07/24 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>前期もめでたくこれにておひらき(2)今期の文化発表、サルサのあゆみと牛追い祭り

 キューバのフリオは、「今日、みなさんに、サルサの歩みを教えます」と、説明を始めました。「サルサのあゆみ?サルサの伝統についての歴史的な紹介かしら」と、思ったら、「How to dance SALSA」をする、というのです。
 「あ、それなら、サルサのあゆみ、じゃなくて、サルサのステップを教える、と言うほうがいいですね」

 フリオが辞書で「step」を調べたら「歩み」という名詞がでていたので、これだ!と思って「Salsa step=サルサの歩み」と表現したのでしょう。私の手持ちの英和も、stepの一番最初の和訳は「歩み」です。

 日本語で「~の歩み」と表現したときとき、赤ちゃんとか馬とか、実際に一歩一歩歩く姿が問題になるような場合のほかは、「~の歩み」は「~の歴史」のニュアンスになることまでは、英和辞典にも西和辞書にも載っていません。

 文脈ごとの語の意味範囲まで的確に教えるには、もう少し学習がすすんで、初級を終え中級に進んでからにしたほうがいい、初級では「今の場合は、ステップがいいですよ」と言うにとどめておきます。

 フリオが自分で持ってきたスピーカーに、ICレコーダーを接続すると、サルサミュージックがかかりました。
 金曜日午後の国際教育棟、授業をしている教室は、私のクラスだけなので、どれほど大きな音を鳴らしても、他の教室から苦情が出ることもないのが、ありがたい。

 フリオが「いちにさん、ウノ・ドス・トレス」と、リズムをとってステップを踏むのをマネして、日本人女子学生のサヤさんも、イランのサリさんもステップを踏んでみました。

 もちろん私もノリノリで。でも、私のステップをみて、フリオは「あ、これはサルサではありません。メレンゲです。サルサとメレンゲは、ちがいます」と、教えてくれました。
 はい、覚えました。サルサとメレンゲは、べつのダンスです。

 スペインのファンは、「バスク地方の牛追い祭り」を紹介しました。彼自身はバスクの出身ではないのですが、私がバスク語とバスク文化に興味を持っていることを知って、発表テーマに選びました。

 「サン・フェルミン(San Fermin)の祭り」
 スペイン語で「パンプロナ(Pamplona)」、バスク語では「イルーニャ(Irun~a)」と呼ばれる町で行われます。
 人と牛がおいかけっこをする「エンシエロEncierro(牛追い)」が、7月の初旬に行われるのだそうです。

 ファンは、小さな町の街路を牛と人とが走りぬけるようすを説明してくれました。
 私が俳句の話をしたとき、ファンは即座に「あ、知っています」と、日本語で「なつくさや つわものどもが ゆめのあと」と、一句をクラスメートに披露しました。日本文化通のファンですが、日本語会話力はクラスで一番弱いのです。

 ファンの日本語説明の足りないところは、実演でカバーです。
 わたしが指を頭の上にたてて角にみたて、牛の役をして、ファンが牛に追いかけられて走る人の役をして、教室をふたりで走りまわりました。

<つづく>
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