20191104
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(19)Show & Tell南太平洋のアウ二マコ
春庭の日本語教室だよりを再録しています。
~~~~~~~~~
2006/03/19 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>文化を知らせ合うShow & Tell(3)バンジャブの絞り染め
初級クラスの音声表現発表は、学生自身が「日本語で発表しよう」という意欲をもって、発表のために自分から積極的に辞書をひいて単語をしらべたり、発音の練習をする自発性が大事。
「完全な日本語で、まちがいなく発表しよう」として緊張するよりは、ときどき英語まじり、クラスメートが和気藹々に日本語を口にしてみるという機会なのです。
今期の初級日本語クラスの学生達、初級文法を超特急でならったものの、まだまだ日本語会話は一人前とはいえません。
しかし、自国では中学高校の先生をしている人たちですから、立派に発表ができました。
パキスタンのフミは、頭にまいていたスカーフをはずし、「これは、私のふるさとのスカーフです。バンジャブの布です」と、絞り染めの過程について説明しました。
「はじめに、ビーズをひとつ布の上におきます」「次に、ビーズを包みます。We wrap it. そして tie,? bind? します?」
教師の助太刀。「tie and bind、日本語は、しばります、結びます。でも、今は「くくります」がいいですね。ビーズをくるみ、糸でくくります」
「イトで、くくります」と、フミは説明を続けます。
教卓に、調べてきた単語ノートを置いてありますが、ノートを見るより、教師に頼ってしまう。ま、いいか。
「ビーズ、もうひとつ。もうひとつ。たくさん。たくさんビーズをつかいます。次に、dye。せんせー、ダイ?忘れました」
「dictionary form 染める。masu form染めます」「OK! つぎに、そめます」
フミの説明を要約すると、「染色液の中に布を入れると、糸でくくったところは染まらず、白い輪が残ります。最後に布を洗ってかわかすと、スカーフにビーズの大きさに合わせた大きな輪、小さな輪を組み合わせたきれいな模様が出来上がります」。
バンジャブ地方の女の人のスカーフの巻き方と、イスラマバードやカラチでの巻き方はそれぞれ違うと言って、いろんな巻き方を見せてくれました。
南太平洋の島からきたジョー。島では数学の先生です。
近隣の住民を束ねる族長の責任も果たして、島では重要人物として暮らしてきました。妻子を島に残して単身での留学です。
島から離れたことがなく、一人暮らしもはじめてのことだったので、最初はホームシックにかかってたいへんでした。
ゆったりした島の暮らしから、目がまわるような日本の生活にスムースに移行できずに、すっかり自信をなくして、落ち込む一方でした。
島では高学歴者、有能な教師として尊敬されていたのに、日本語ではカタコトの日本語すら話せず、授業についていけない落ちこぼれになってしまったのですから、たいへんなショックだったと思います。
<つづく>
2006/03/20 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>Show & Tell(4)南太平洋の楽器アウニマコ演奏
語学の習得には、学習方法の慣れも大切。
たとえば、パキスタンのフミは、家ではバンジャブ語で生活しますが、小学校ではウルドゥ語、ハイスクールや大学では英語を習ってきて、母語以外のことばの習得に慣れています。
しかしジョーは、家ではピジンイングリッシュ、学校ではクイーンズイングリッシュ。どちらも「学習」ではなく、自然に身につけてきました。英語以外のことばを習うのは初めてのことで、語学学習方法に慣れていません。
単語カードをつくって単語を覚えるとか、母語の文法と比較しながら単語の並べ方を覚えたり、動詞の活用を覚えたりという「語学習得方法」につまずいて、すっかり混乱してしまっていたのでした。
3ヶ月たって、ジョーはようやく日本語の生活になれてきましたが、最後まで日本語は、あまりうまくなりませんでした。
でも、彼は日本がだんだん好きになって、クラスにもなじんできました。Show &Tellのために、ジョーもはりきって準備をしてきました。
ジョーは、バックから丸いつつを何本も取り出しました。
「これ、おなひと、がきです」
クラス一同、???
教師が「ジョーのニホンゴ」を日本語に翻訳。「This is instruments played by women .これは、女の人の楽器です。ジョーさん、もう一度紹介してください」
「これは、おんなのひと、がっきです」ちょっとは、よくなったから、ま、いいか。次へ進みましょう。
ジョーは、にこにこして、アウニマコという珍しい竹の楽器を披露してくれました。私もはじめて聞く音色です。
長短の竹の筒が、何本もある。それを片手に2本、または3本、まとめて握る。
握った2本の音が和音になるように、組み合わせは決まっている。
床に平に筒の底があたるようにしてポンとうちつけると、共鳴して、とてもよい響きをだす。一人が規則的なリズムで右手と左手を交互に鳴らし、もうひとりは、複雑なリズムを打って、楽しい合奏ができる。
最初は私が規則正しいリズムをとって、ジョーさんが複雑なリズムを担当。あと次々にクラスメートが演奏に挑戦してみました。
竹の美しい響きが心地よいリズムをきざんで教室に広がりました。
「きれいな音ですね」「いい楽器です」と感想をいいつつクラスメートが楽しそうに演奏しています。そのようすを見ているジョーの顔には、ふるさとの音楽文化への誇りが浮かんでいました。
バングラディシュの「ベンガル虎」の紹介、フィリピンの棚田の紹介、インドネシアの影絵の紹介など、それぞれの留学生が、一生懸命自国の文化を紹介し、今期の「Show & Tell」も、とても楽しくすごすことができました。
<つづく>
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(19)Show & Tell南太平洋のアウ二マコ
春庭の日本語教室だよりを再録しています。
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2006/03/19 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>文化を知らせ合うShow & Tell(3)バンジャブの絞り染め
初級クラスの音声表現発表は、学生自身が「日本語で発表しよう」という意欲をもって、発表のために自分から積極的に辞書をひいて単語をしらべたり、発音の練習をする自発性が大事。
「完全な日本語で、まちがいなく発表しよう」として緊張するよりは、ときどき英語まじり、クラスメートが和気藹々に日本語を口にしてみるという機会なのです。
今期の初級日本語クラスの学生達、初級文法を超特急でならったものの、まだまだ日本語会話は一人前とはいえません。
しかし、自国では中学高校の先生をしている人たちですから、立派に発表ができました。
パキスタンのフミは、頭にまいていたスカーフをはずし、「これは、私のふるさとのスカーフです。バンジャブの布です」と、絞り染めの過程について説明しました。
「はじめに、ビーズをひとつ布の上におきます」「次に、ビーズを包みます。We wrap it. そして tie,? bind? します?」
教師の助太刀。「tie and bind、日本語は、しばります、結びます。でも、今は「くくります」がいいですね。ビーズをくるみ、糸でくくります」
「イトで、くくります」と、フミは説明を続けます。
教卓に、調べてきた単語ノートを置いてありますが、ノートを見るより、教師に頼ってしまう。ま、いいか。
「ビーズ、もうひとつ。もうひとつ。たくさん。たくさんビーズをつかいます。次に、dye。せんせー、ダイ?忘れました」
「dictionary form 染める。masu form染めます」「OK! つぎに、そめます」
フミの説明を要約すると、「染色液の中に布を入れると、糸でくくったところは染まらず、白い輪が残ります。最後に布を洗ってかわかすと、スカーフにビーズの大きさに合わせた大きな輪、小さな輪を組み合わせたきれいな模様が出来上がります」。
バンジャブ地方の女の人のスカーフの巻き方と、イスラマバードやカラチでの巻き方はそれぞれ違うと言って、いろんな巻き方を見せてくれました。
南太平洋の島からきたジョー。島では数学の先生です。
近隣の住民を束ねる族長の責任も果たして、島では重要人物として暮らしてきました。妻子を島に残して単身での留学です。
島から離れたことがなく、一人暮らしもはじめてのことだったので、最初はホームシックにかかってたいへんでした。
ゆったりした島の暮らしから、目がまわるような日本の生活にスムースに移行できずに、すっかり自信をなくして、落ち込む一方でした。
島では高学歴者、有能な教師として尊敬されていたのに、日本語ではカタコトの日本語すら話せず、授業についていけない落ちこぼれになってしまったのですから、たいへんなショックだったと思います。
<つづく>
2006/03/20 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>Show & Tell(4)南太平洋の楽器アウニマコ演奏
語学の習得には、学習方法の慣れも大切。
たとえば、パキスタンのフミは、家ではバンジャブ語で生活しますが、小学校ではウルドゥ語、ハイスクールや大学では英語を習ってきて、母語以外のことばの習得に慣れています。
しかしジョーは、家ではピジンイングリッシュ、学校ではクイーンズイングリッシュ。どちらも「学習」ではなく、自然に身につけてきました。英語以外のことばを習うのは初めてのことで、語学学習方法に慣れていません。
単語カードをつくって単語を覚えるとか、母語の文法と比較しながら単語の並べ方を覚えたり、動詞の活用を覚えたりという「語学習得方法」につまずいて、すっかり混乱してしまっていたのでした。
3ヶ月たって、ジョーはようやく日本語の生活になれてきましたが、最後まで日本語は、あまりうまくなりませんでした。
でも、彼は日本がだんだん好きになって、クラスにもなじんできました。Show &Tellのために、ジョーもはりきって準備をしてきました。
ジョーは、バックから丸いつつを何本も取り出しました。
「これ、おなひと、がきです」
クラス一同、???
教師が「ジョーのニホンゴ」を日本語に翻訳。「This is instruments played by women .これは、女の人の楽器です。ジョーさん、もう一度紹介してください」
「これは、おんなのひと、がっきです」ちょっとは、よくなったから、ま、いいか。次へ進みましょう。
ジョーは、にこにこして、アウニマコという珍しい竹の楽器を披露してくれました。私もはじめて聞く音色です。
長短の竹の筒が、何本もある。それを片手に2本、または3本、まとめて握る。
握った2本の音が和音になるように、組み合わせは決まっている。
床に平に筒の底があたるようにしてポンとうちつけると、共鳴して、とてもよい響きをだす。一人が規則的なリズムで右手と左手を交互に鳴らし、もうひとりは、複雑なリズムを打って、楽しい合奏ができる。
最初は私が規則正しいリズムをとって、ジョーさんが複雑なリズムを担当。あと次々にクラスメートが演奏に挑戦してみました。
竹の美しい響きが心地よいリズムをきざんで教室に広がりました。
「きれいな音ですね」「いい楽器です」と感想をいいつつクラスメートが楽しそうに演奏しています。そのようすを見ているジョーの顔には、ふるさとの音楽文化への誇りが浮かんでいました。
バングラディシュの「ベンガル虎」の紹介、フィリピンの棚田の紹介、インドネシアの影絵の紹介など、それぞれの留学生が、一生懸命自国の文化を紹介し、今期の「Show & Tell」も、とても楽しくすごすことができました。
<つづく>