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ぽかぽか春庭「教員研修生日本語で研究発表する」

2019-11-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20191121
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(28)教員研修生日本語で研究発表する

 春庭の日本語教室だよりを再録しています。
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2007/02/18 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>留学生研究発表会(1)教員研修生の研究

 現在日本語研修コースに在籍している13人のうち、6名は理系大学院へ進学、7名は教員研修コースへの進学予定者です。
 2月9日金曜日、3月に研修を終える留学生の研究レポート最終発表会があり、今教えている7名の教員研修コース留学生を発表会場の会議室へ連れて行きました。
 1年後、2008年の2月には、今、必死に初級日本語を学習している留学生たちが研究発表を行う番です。

 博士課程へ進学する残りの6人は、残って文法の授業。
 H先生の文法授業をパスできた教員研修生たち、「ラッキ~」って顔しています。

 発表の日本語は難しい専門用語もあるので、初級日本語コースの学生には、聞き取りが無理なことはわかっていますが、発表の形式や雰囲気を知るだけでも効果があります。
 発表のイメージを今から持たせ、モチベーションを与えるために、先輩の発表をきかせることにしているのです。

 発表するのは、去年私が初級日本語を受け持った学生たち。
 2005年10月から2006年2月まで初級日本語を学び、2006年4月から1年間、教育学部で中級上級の日本語を学びつつ、教育学の研究を続けてきました。
 教育研究、教授法指導法の研究の成果をまとめた留学生が、日本語で発表するのです。

 2005年10月、彼らは「こんにちは」「ありがとう」を知っているくらいで来日しました。私は彼らの日本語授業を5ヶ月間担当し、「あいうえお」「はじめまして」から教えはじめ、初級日本語の文法や会話、漢字などを教えました。
 初級日本語学習を終えたあとは、教育学部大学院の日本語研修と、美術教育専攻、数学教育専攻、科学教育繊巧などの専門分野指導教官におまかせすることになります。

 「わたしはジョーです。どうぞよろしく」さえも、たどたどしく、口がまわらなかった留学生が、堂々と日本語で自分の研究成果を発表する、晴れの日です。
 発表する留学生もドキドキですけれど、わたしも「この1年間で、どれだけ日本語が上達しているでしょうか」と、ドキドキしながら発表をききました。

 9日の発表を行ったのは、南の島の族長兼ハイスクール数学教師のジョー、タイの英語教師ナーン、パキスタンのパンジャブ地方出身のフミ、インドネシアのクリス。
 カフェ日記2006年3月16日~20日と、本宅HP『話しことばの通い路』の「留学生文化交流発表会」に彼らの紹介を書きました。
http://page.cafe.ocn.ne.jp/profile/haruniwa/diary/200603A

http://www2.ocn.ne.jp/~haruniwa/nippongoai0608a.htm

 ホームシックにかかって元気をなくしたジョーが紹介した南島の竹の打楽器アウニマコ、フミが紹介したパンジャブの絞り染め、クリスが紹介したジャワ島の影絵ワヤン。ナーンが紹介したタイ古典舞踊の衣装、去年の文化発表会、楽しかった時間がよみがえります。
 みんな日本語はまだまだヘタでしたが、とても楽しく互いの文化を紹介しあいました。

 あれから1年、今日は、「研究成果の発表」です。日本語での質疑応答もあります。ジョーの顔は緊張ではちきれそうです。
 始まる前に、「がんばってね」と、ジョーに声をかけました。「あ、センセー」と、ジョーはにこにこしました。

<つづく>

2007/02/19 月
ニッポニアニッポン語教師日誌>研究発表会(2)日常経験と化学

 今うけもっている初級日本語コース在籍の教員研修生たちは、先輩の発表をきいたあと、「先生、私は、もう明日、荷物をもって帰国します」と、言い出しました。
 「1年間で、とてもあんなにじょうずに発表できないと思います。あきらめて、今、帰国したほうがいいかも」

 逃げ帰るなんてとんでもない。今年じょうずに発表した研修生たちも1年前、「あいうえお」から初めて、専門的な発表ができるまでになったのです。
 発表原稿は、日本語の先生や専門教育の指導教官たちがアドバイスをし、日本人学生がチューターとして留学生にひとりずつ付き添って手助けし、アシスト完璧の状態で発表に至ったのですから、いま心配している初級の学生たちも、大丈夫。

 各国から選ばれて日本に研究にやってきた優秀な教員たちですから、努力を続ければ大きな力を発揮できるのです。
 「だいじょうぶ、あなた達も、来年は立派な発表ができますから、心配しないで」

 今回発表した教員研修生たちに引用の許可を得たので、1年半でこのような研究を発表できるようになる、という例として、日本語での発表レポートの一部を紹介しましょう。

 発表トップバッターはインドネシアのクリス。パソコンのパワーポイントを駆使し、化学の実験風景や手作りの化学教材を聴衆に見せながらの日本語説明です。

 「化学実験の授業を通して、日常生活の中で実際にみることのできる化学反応を生徒が理解し、興味をもてるようにする」というのが、授業案に示されている「授業の目的」です。

 1年半前は、私に「ほら、この『しんふんをよみます』とかいてあるところ、点々わすれてますよ。『しんぶん』ですよね」なんて、注意を受けていた留学生が、化学教育についての研究を堂々と発表しています。

 「問題と背景」に書かれているクリスの日本語を、引用します。
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「 化学は日常生活の中にあふれている。残念ながら、ほとんどの化学の授業では、実用的な内容は重要視しされていない。インドネシアや日本のような国では、学生は基本的な概念を理解せずに、答えを導くための経験方法を学習するような状況に置かれている。化学は、知識として覚えるというよりは、実用的であるべきものである。」
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 立派な日本語です。

 クリスは、洗剤と水の化学反応の親水性・疎水性、油分子と石鹸分子の混和性などの理解を、教える授業実践をしました。
 実験授業を通して、生徒が自ら興味を持って取り組める授業案をしめし、日本の高校で実際に授業を実施したあとのアンケート分析を発表していました。

<つづく>
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