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ぽかぽか春庭「留学生の日本文化史発表・お札の顔」

2019-12-03 00:00:01 | エッセイ、コラム
20191203
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>再録・日本語教師日誌(40)留学生の日本文化史発表

 春庭コラムから日本語教師日誌を再録しています。
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2007/03/10 土 
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本事情(12)日本文化史発表

 私の日本事情の授業、「日本史の基礎的な知識」を中心とした初期のころから、大きく授業内容を変えてきました。
 2000年以降の日本事情は、「自国と日本の交流の歴史について、テーマを決めて資料を集め、自分なりにまとめて発表する」ということがメインになりました。

 学生のほうも、10年前と現在では、「わからないことを調べる」という環境が大きく変わってきています。

 『留学生の日本史』にそって、「日本の文化と歴史」のなかで、興味をもったことについて発表する「日本の文化発表」と、「日本と自国の交流史発表」の授業をはじめたころ、最初は図書館の利用方法、資料の探し方などから指導していました。

 21世紀になってから、留学生もインターネットで検索する方法を覚えたので、以前のような資料探しの苦労はなくなりましたが、「インターネットには、確実でないことも掲載されているから、すぐにまるごと信じてしまうのは危険」という指導をいれておかなければなりません。
 何年もの時間と、人の英知を集めて編集された事典類や参考文献にはない手軽さがインターネット調査にはありますが、手軽なだけに危険もついてまわります。
 歴史上の事実を書いたサイトでも、これだけの間違いがある、というのを学生に話しています。

 「日本文化」についての発表授業。
 留学生には、「日本の歴史と文化に関連したことなら、どの時代をとりあげてもいいし、人物についてでも、事項についてでも、興味を感じたことを調べてみよう」と話しておきます。

 クラスを班に別け、班ごとにテーマを決めます。留学生が選んだテーマには、「日本の食文化」「日本人の生活文化、余暇文化」「有名観光地紹介による日本地理復習」などがあります。

 「歴史にみる日本の寺院文化」をとりあげた班は、「平等院と平安朝の浄土信仰」「永平寺と禅」「金閣寺銀閣寺と室町文化」などを紹介しました。

 個人の興味のむくままに、「パチンコ盛衰からみる日本の社会と現代文化の諸相」という発表をした学生もいたし、「パラサイトシングルということばからみる日本の家族」という発表もありました。

 日本ではじめて花火を見た感激が忘れられないといって、「花火の歴史」を紹介した学生もいれば、「わたしはゲームオタクです」という学生が、「日本の娯楽と産業・日本ゲーム発達史」をとりあげた年もありました。

<つづく>

2007/03/11 日
ニッポニアニッポン語教師日誌>日本事情(13)お札の顔

 2001年の学生の日本文化についての発表のタイトルをみると。
 「日本の着物について」「畳の効用」「懐石料理」「銭湯の歴史」など、生活文化に興味をもったり、「能楽について」「京都の葵祭」など、自分が見てきて面白かったものの紹介をしたり。

 「空手について」など、自分が大学のサークルでやっていることの紹介、貨幣博物館での見学をもとに「日本貨幣史」、沖縄名護博物館での見学をもとに「日本の捕鯨」など、それぞれが興味をもったことについて、図鑑や博物館パンフレットの文をまとめ、クラスメートの日本語能力にあわせて、わかりやすく紹介解説する努力をしました。

 2006年の発表から。
 「日本の交通」をテーマにした班は、東京の電車や地下鉄網について、また明治期に自転車が輸入されて以来の自転車文化について発表しました。

 「日本の四季」をテーマにした班は、季節ごとの天候や自然の特徴についてまとめました。自分の国と違う点、同じ点をしらべました。
 「桜前線」「梅雨」「紅葉狩り」「雪祭り」など、日本の文化が自然の姿や季節の移動と深く結びついていることを知ることは、留学生にとっても興味深いことのようです。

 今年「食文化」を選んだ班は、例年の「おせち料理」「寿司の歴史」「漬け物」などの料理ごとのトピックではなく、「日本の食器・陶磁器の歴史」や「和食の食材」「食べ方マナー」「和食の作り方」というトピックを選びました。

 「タイのお札には国王の肖像があるのに、なぜ日本の天皇はお札に顔をださないのですか」という質問がタイの留学生から出たこともありました。タイの紙幣は表が現国王プミポン陛下の肖像、裏が歴代の王様の姿です。

 アメリカドル紙幣は、大統領ワシントンやリンカーン、国家元首がお札になっています。「なぜ、日本のお札には元首が登場しないのですか?」

 聖徳太子の肖像の古い1万円札を見せて、「この人が、教科書の46ページに名前がでている聖徳太子です。太子は天皇のかわりに政治を行った摂政でした。明治時代に神功皇后という神話時代の皇后の肖像がつかわれたこともありましたが、日本ではお札に天皇の肖像が使われたことがありません」

 明治以後の近代史を扱うときのために、五百円の岩倉具視。千円伊藤博文、夏目漱石など、古いお札も「日本事情」用に保存してあります。

 留学生活もまずはお金が必要。日本に到着して一番最初に両替で目にしたお札の肖像に興味を持つ留学生は多い。
 お札の肖像になる人物は、紙幣を発行している国家の代表的人物であるから、発表するのに資料も集めやすくてちょうどいい。 

 10年前、私の日本事情授業の初期は、教師がお札を見せて、人物紹介をしていましたが、後に、「留学生による日本文化発表」という「調査と発表」がメインになると、「お札の人物紹介」は、留学生の人気テーマになりました。

 毎年のように選ばれる人気のテーマ「お札の顔」。2006年も、お札の顔をとりあげた班がありました。
 モンゴル、マレーシア、中国の学生が千円、二千円、五千円、一万円を分担し、樋口一葉、野口英世、福沢諭吉、二千円札の裏に絵がある紫式部を調べて人物紹介を行いました。

 今ではほとんど流通していない二千円札。「紫式部日記」の中に描かれた紫式部の姿が裏面右下にあります

<つづく>
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