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ぽかぽか春庭「女の部首 妻と妾」

2020-04-25 06:09:52 | エッセイ、コラム
20200425
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>春庭漢字話女偏(5)女の部首 妻と妾

 春庭漢字話、女偏の漢字についてつづけています。休業中の私の漢字遊びは、漢字蘊蓄です。
 女を部首に持つ漢字の中で、偏ではなく下の部分に女が含まれる漢字を取り上げてみます。
常用漢字の「委」は、部首は「女」ではなく、「禾」ですが、女を含むので、取り上げます。常用漢字の中で「女」が含まれるのは「安」「妻」「姿 」「妥」「婆 」「妄」です。「晏 」は人名漢字です。
 そのほか、いくつか常用漢字外からも、ピックアップ。

 画数少ない順に、「妄」「𡚴」「妥」「妻」「妾」「委」「姿」「娶」「婪」「嬖」「嬰」
 もっとあるかもしれないけれど、女が偏になる漢字よりもぐんと少ない。

 「妄」は呉音モウ、漢音「ボウ」。常用漢字での訓読みなし。常用外の訓読み「みだり-に」
 熟語は「妄想」「妄言」

  私には「𡚴」はお初の漢字でした。読み方もわかりませんでした。熟語でも見たことない。
 熟字訓「山女=あけび」を合字した字らしい。音読みなし。訓読みは「あけび」熟語なし。 地名で使われているのみ。「𡚴原」(あけんばら)は、滋賀県犬上郡多賀町の地名。知りませんでした。
 明治時代に地名が縦書きで「山女原あけんばら(あけびはらの訛化)」とあったものを、「𡚴」と合字してしまい、国字として残ったらしい。
 多賀町のバス停には「山女原あけんばら」と横書きの表記があると、「希少地名」歩きを続けているサイトに出ていました。

 「妥」は、女に手を当て、なだめ穏やかにさせる。呉音も漢音も「タ」ですが、日本の慣用読みでは「ダ」。訓読みなし。熟語は妥当、妥協など。

 「妻」は、「女」の上に「(婚礼の)髪飾り」をのせた象形文字で、男性から見た配偶者を表します。
 「妾」は「女」の上に「辛」の上部だけをのせた字。「辛」は刺青を入れるための尖った刃物で、体に奴隷のしるしの刺青をした女性。男性の身の回りを世話させる奴隷の意味から、のちに「めかけ」。

 1870(明治3)年の最初の明治民法では、妻も妾も戸主の二等親で、法律上はほぼ同等でした。「僧正」の次席を示す「権僧正」などと同じく「権妻ごんさい」と呼ばれました。
 江戸時代、支配階級武士の跡継ぎは男子は側室・妾の所生で、正妻から生まれることは少なかったです。正妻は御家の事情で娶る格式高い姫様が多く、いはば「床の間の飾り」。主のお好みの女性を側室にして、子をなすことが多かったためと思います。生まれた男子が当主になれば、家中で実力を持つのは側室。
 江戸時代、皇后から生まれた天皇は女性天皇109代明正天皇ただ一人。徳川将軍で正妻から生まれたのは3代家光と15代慶喜ふたりのみ。大奥で力を持っていたのは、京都の公家や宮中から迎えた御台所より、跡継ぎの母である側室のほうでした。5代将軍綱吉でいえば、御台所鷹司信子より綱吉母の桂昌院の権力が大きかった。

 正妻より側室の地位関係が、明治最初の民法に影響しているのかと思います。
 しかし、一夫一妻を正しい家庭のあり方とする西洋への配慮などがあり、1898(明治31)以後、戸籍に「妾」の文字をのせることはなくなりました。
 妾は、現代でいう愛人とは異なり、社会から隠された存在ではなかったのです。不倫の愛人関係は、妻が知らないか、うすうす気づいても公的には認めていない隠された存在であるのとは異なります。

 江戸や明治女性文学などで、女性の一人称として「妾わらわ」「妾あたし」が用いられていたのは、自分自身を謙遜して一段低い立場の女性として自己表現していたのかと思います。
 こうして時代は移り、お座敷小唄でも「♬好きで好きで大好きで、死ぬ程好きなお方でも妻という字にゃ勝てやせぬ泣いて別れた河原町」と歌っています。妻の力が大きくなってきたんですね。
 現行法では、離婚を拒んでいる法律上の妻と7年以上生活を共にしている事実婚の女性との遺産相続争いでは、たとえ「全財産を事実婚女性に残す」という遺言があっても、法律上の妻に遺留分があるそうです。

 「禾」は、イネ科植物や穀物を表します。女の上に禾で、訓読みは「ゆだね-る」音読み「イ」。委員、委嘱、委任など熟語はたくさんあります。
 禾を女性にゆだねるのは、収穫を寿ぐ新嘗祭に当たる古代の神事が、女性の役割だったからではないかと、想像します。新穀を髪にかざして神の前で踊る巫女の姿が思い浮かびます。女系社会だった日本社会において、女性を補佐する男弟(弟とは限らないが)が新嘗祭や大嘗祭にしゃしゃり出てきたのは、男系相続の中国文化の影響を受けてからだと思います。

 「姜」音読みカン、訓読みなし。現代日本では「姜尚中カンサンジュン」など、人名で見る以外で、この字は見当たりません。

 「姦」音読み「カン」。訓読み「かしま-しい、みだら」。女が3人集まって話していると煩くかしましい、という説明が「民間字源」では言われていますが、本当に元の字源であるかは定かではありません。熟語では強姦、姦淫などあまりいい意味で使われない字です。

 「嬰」は、女性の身に貝を連ねた飾りをまとった字形ですが、なぜこの字が「嬰児」の赤ちゃんに使われるようになったのか、わかりません。女性にとって、子は貝の飾りのような宝物、ということでしょうか。

 と、漢字についてああでもない、こうでもないと考えるのも頭の体操。こうしてボケ防止認知症予防活動、認活をやっていられるのも、熱もなく食べ物もおいしく食べていられるからかと思います。感謝。
 マスク2枚はありがたくもないけれど、10万円もらったら、食費にあてます。

<つづく>
コメント (2)
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