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ぽかぽか春庭「花・華ざかり日本画展 in 郷さくら美術館」

2021-01-19 00:00:01 | エッセイ、コラム


20210121
ぽかぽか春庭アート散歩>アート2020回顧(4)花・華ざかり日本画展 in 郷さくら美術館

 2021年11月29日日曜日は、東横線中目黒駅へ。 
 娘はこの駅に降り立つのは初めて。私は何度か降りたことがあります。旧千代田生命本社ビル(1966村野藤吾)を見るためです。

 この建物は、千代田生命倒産のため売却され、目黒区役所に生まれ変わりました。千代田生命本社のときは、生命保険にも入っていない私には縁遠い建物でしたが、目黒区役所となれば、おおやけの建物。だれでも入れます。もちろん、パブリックスペースへの転換のためには大改修が必要でした。たいてい、このような改修は不評に終わることが多いのですが、この目黒区役所は評判がいい。それじゃ物見高く見に行かねば、と、何度か出掛けました。戸籍謄本など、郵送でも申し込みが出来るのに、わざわざ目黒区庁舎に取りにいったのです。

 今回の中目黒駅下車は、郷さくら美術館へ行くため。
 郷さくら美術館東京館は、2012年に開館。昭和生まれの日本画家の作品を中心に収集されています。4室のうち、3つは季節ごとのコレクション作品、一つは美術館の名前のとおり、さまざまな画家によって描かれた桜の日本画が入れ替わりで展示されています。館内禁止マークがある絵以外は撮影自由。

 牧 進《三春瀧櫻》2000年

水谷興志「吉野にて」2003


 林 潤一《四季樹花図》2001年



 中島千波《白麗花》1993年


 小倉亜矢子《燃えんとす》2017年


 岩永てるみ「薔薇のノートルダム」2019


 森田りえ子「秋華」の前で

 郷さくら美術館入り口


 はじめて訪れた郷さくら美術館。住宅街の中にある小さな美術館ですが、きれいな花の絵、堪能しました。花の命を映し出そうと、画家は描写に命をかけたのだろうなあ、と思いました。
 同時に、毎年行われているらしい、館主催の日本画コンクールに入賞したりするとホテルのロビーなんかに飾られる大作壁画や屏風絵の注文が来たりするのだろうなあと、若手日本画家の作品を見ながら感じました。
 決して人間存在の不安をかき立てたり、自分の立ち位置の不安定さをさらに揺るがせるように、そういう種類の絵ではなく、つまり、ホテルなどに集まる多種多様な人が心地よく感じられるような美しい花の絵。心地よい絵も必要です。ホテルロビーには。

 今やムンクの「叫び」のイラストついた文房具だのハンカチだのが売られている時代ですから、1枚の絵を見ることによって世の中ひっくり返ったりはしない時代ですけれど、絵を見ることによって心になにものかが与えられるとはどういうことなのか、ということを自分に問いかけながらの鑑賞となりました。

 渋谷と吉祥寺を結ぶ線、渋谷駅コンコース壁を岡本太郎の「明日の神話」の大画面が飾られています。朝夕通勤に急ぐ人々の足は絵の前で立ち止まることはありません。
「明日への神話」。第五福竜丸のビキニ沖核実験による被爆で被災し、原爆症を発症した乗組員が亡くなりました。岡本太郎は核保有核実験への怒りを込めてこの絵を描きました。
 しかし、この絵が話題になったのは、「核への怒り」のためではありませんでした。メキシコのホテルに買われてからホテルの倒産によって行方不明になり、20年以上かかってようやく存在が突き止められた、という劇的な再発見話が話題をさらったのです。
 「明日への神話」の右下に福島原発爆発への怒りを込めてチムポンが付け加えた絵も、その怒りの表現は考慮されず「公共のものを傷つけた」という理由で撤去されました。
 ピカソの「ゲルニカ」も、スペイン戦争の争いよりも、今ではピカソがこの絵を描いていたときにふたりの愛人が絵の前で鉢合わせして大げんかしたことが有名。

 絵を描く行為には、美しい物を表現したい人も人間存在の奥底を見つめたい人も、さまざまあるでしょう。きれいなきれいな花の絵の前で、絵が人に与えるものについて思い巡らしながら、歩きました。

 そして、帰りは生まれてはじめて代官山という駅におり、おしゃれなカフェを横目に、餃子王将で晩ご飯。なんだか気分を代官山っぽくしたいからと直径2センチで一個250円ほどのチョコレートを6粒買い、家で娘と「高いね、たかいね」と言いながら食べました。

<つづく>
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