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ぽかぽか春庭「長江哀歌」

2022-04-16 00:00:01 | エッセイ、コラム


20220424
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>2022シネマ春(4)長江哀歌

 春休み、家ごもりの間は、撮りためておいたビデオ鑑賞。
 ジャ・ジャンク―監督の『長江哀歌』2006年。ヴェネツィア映画祭金獅子賞。

出演者:
ハン・サンミン(サンミン)
チャオ・タオ(シェン・ホン(チャオ・タオ)
リー・チュウビン(グォ・ビン)
ワン・ホンウェイ(トンミン)
マー・リーチェン(ヤオメイ)
チョウ・リン(マーク)

 あらすじ
 長江。三つの峡谷に囲まれた三峡付近では、「三峡ダム」の建設が進められていた。万里の長城以来ともいえる国家の威信をかけた壮大なプロジェクト。三峡ダムは第3期工事に入り、水位が上がったのち、多くの町や村がダムむに沈みことになる。
 長江を行きかう船のひとつにの乗ってきた男がいる。山西省で炭鉱夫として働いていた男、サンミンだ。サンミンは16年前に別れた妻ヤオメイと娘を探すために奉節にきたのだ。しかし妻に書いてもらった住所、奉節青石5番地はすでに長江に沈んでいた。サンミンは奉節の安宿に住み、ビルの解体工事をしながら妻子を探しつづける。
 サンミンはこの工事の作業場でチンピラのマークと意気投合しいっしょに働くが、ある日解体途中のビルが崩壊し、マークは下敷きになる。
 看護師のシェン・ホンもまた、2年以上も家に戻っていない夫を探しに奉節にやってきた。夫グォ・ビンが仕事をしている住民撤去管理部に案内されたシェンホンは、夫を社長として雇っているオーナーの資本家ディン女史とグォミンの仲について聞かされる。夫の元軍隊仲間のトンミンに助けられ、夫に会ったシェン・ホンは、夫に離婚を要求する。
 ヤオメイは義兄が作った莫大な借金のカタとして、義兄に金を貸した船主の元で働かされていた。船主は「ヤオメイを連れて帰りたいなら義兄が借りた3万元を返せ」と言う。サンミンは3万元を貯めるために、山西省に帰る決意をする。山西の違法な炭鉱で働けば、一日200元稼げる。何人もの炭鉱夫が死んでいる危険な炭鉱だが違法なことは皆知っているから、死んでも文句はいえない。それでもサンミンは金を作るために長江を下る船に乗り、山西省へ戻っていった。

 見ている間、サンミンのストーリーとシェン・ホンのストーリーがつながっているのか関係ないのか、私にはわかりにくかった。シェン・ホンに「なにか仕事ないか」と尋ねる16歳の女の子がサンミンが探している娘なのだろうと推察できたけれど、その少女とはそれっきり。
 UFOみたいな飛行機みたいな光るものが青空に現れたり、途中で展望台みたいなビルがロケットになって空に飛んで行ったりするのは、白昼夢か幻想なのか。この世の流れはしょせん白昼夢にすぎない、ってことか。
 長江の流れも、解体工事現場の埃っぽい空気も、2千年前の西漢(前漢)のお墓も、やがては水の底に沈む。

 私が2度目に中国に赴任したのは2007年でした。2006年公開の長江哀歌は南の地域のお話だから、私が働いていた北の地方とは風土は異なる部分はあったでしょうが、時期としてはちょうど同じころ。町のようすとか、同じような店があったり、解体工事現場の雰囲気などは同じでした。2007年は、2008年の北京五輪を前に、北京も長春も古いビルを解体して新しい町をつくるために湧き上がっている時期でした。
 2009年に三峡ダムは完成。
 住民110万人の強制移住・三峡各地に残る名所旧跡の水没・水質汚染・生態系への悪影響など、数々の不都合は、水力発電とひきかえに「なかったこと」にされました。

 違法の出稼ぎ先、というのもありそうな話。貧困の中で、それでも働き続けるしかない労働者と、資本を回し巨額の富を手に入れる富裕層。2006年から20年近くたち、中国の貧富の差はますます開いています。
 しかし、ジャジャンク―監督は別段共産党独裁支配を告発しているわけでも生態系や伝統文化を守れとか主張しているのではないのでしょう。
 中国4000年の歴史がとうとうと流れてきたように、長江がすべてを飲み込んで流れているその流れのようすは、たんたんとうとうと描写されています。マークが事故死した遺体も、流れは飲み込んでいくのでしょう。

<つづく>

コメント
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