
20220421
ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩冬から春へ(6)上村松園・松篁・淳之 三代展in 富士美術館
3月9日に富士美術館へ行きました。山本作兵衛の展示を見たかったのです。作兵衛展は常設展の一室でしたが、同時展覧会として「上村松園・松篁・淳之 三代展」をやっていて、どうせのことだから、上村母息子孫の三代の絵も見ました。シルバー券1000円。せっかく遠い富士美術館まで来たのですから、全展示を見なきゃ、と思って。
会期:2022年2月29日ー4月12日

平日を狙って行ったのに、館内は大賑わい。池田大先生のエッセイ本の装丁をした絵の原画があるということで、新聞などにその旨の告知があったのではないかと思われます。隣接の創価大学で講演会かなにかがあったのか、中高年の皆様が連れだってご鑑賞。
その装丁の本の展示があったのですが、大先生のファンでもないので、エッセイのタイトル、忘れてしまいました。
混みあっている中、館内一巡した後、しばらくラウンジで飲み物休憩をしたり、ビデオの作者紹介などを見ているうち、鑑賞を終えた人々がいなくなり、以前の通常くらいの混み具合、すなわち一室に数人くらいになったので、もう一巡しました。
富士美術館の口上
上村松園(1875―1949)は京都市出身。気品あふれる美人画で知られ、1948年に女性として初めて文化勲章を受章した。松篁(1902―2001)はその長男で、花鳥画の大家。松篁の長男、淳之(1933―)もやはり花鳥画の大家だ。この展覧会では「第1部:上村松園」「第二部:上村松篁」「第三部:上村淳之」の3部構成で、三代にわたる絵画芸術の系譜をたどる。
第一部では、松園の生涯を「建設期」「模索期」「大成期」の3章に分け、折々のエピソードや松園自身の言葉、遺品などを紹介しながら、彼女が作品に込めた思いや貫いた信念、また彼女自身の人間性に迫る。「女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない」と随筆で述べた松園。彼女が描こうとした理想の女性像とはどんなものだったのか。
今回の展覧会は、2020年に開催されたのに、コロナ禍のためたった二日間だけ展示されたのち、中止となった「上村松園・松篁・淳之 三代展」の再展示なのです。
上村松園「花がたみ」

この絵に描かれた照日前という女性は、継体天皇に見初められ、「迎えに来る」という言葉を信じて待ち続け狂女となった古代の人物。世阿弥の謡曲『花筐』に登場しました。
松園は、狂女のリアルな描写を求めて、精神病院に滞在し入院患者を観察をした、と制作の苦心を自身のことばで語っています。現在ではそのような意図で病院内に入ることなどできないでしょうが、制作に打ち込む松園の絵に対する情念が画面に表れているような女性像になっています。
私が好きな作品、1922年の『楊貴妃』

光源氏の愛人であった六条御息所が、正妻の葵上に嫉妬して生霊となった姿を描いた『焔』を描いたのち、松園はスランプにおちいり、4年間作品発表がありませんでした。(私は『焔』を東京国立博物館で見ました。激しい情念の女性像です。今回は展示なし)
『楊貴妃』。
絶世の美女が、湯あみを終えたばかりの一場面です。唐美人が湯あみのあとくつろぎ、侍女が髪をととのえています。楊貴妃は生まれながらに身体からかぐわしいかおりが立ち上る体質だったということですが、ゆったりとすわる楊貴妃の姿から、画面からも香気が立ち上るようです。
この絵を完成させたのち、スランプから脱却し、つぎつぎに美しい女性像を描いていきました。
「わか葉」1940

松園の息子松篁も、孫の淳之もそれぞれにすばらしい日本画家です。
おみやげの絵ハガキも5枚買いました。
上村淳史「月汀」1998(平成10)も、絵ハガキを買った一枚。

松園の作品は、近代美術館山種美術館東京国立美術館などで、見てきましたが、三代そろってのの展示は、はじめてでした。山本作兵衛展がなければ、見なかったかもしれなかったので、観覧できてよかったです。
<つづく>