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ぽかぽか春庭「山本作兵衛展 in 富士美術館」

2022-04-24 00:00:01 | エッセイ、コラム


20220424

ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩冬から春へ(6)山本作兵衛展 in 富士美術館

 山本作兵衛(1892-1984)の展覧会が富士美術館で開催されていたので行ってきました。
 前回作兵衛展をみたのは、2013年3月18日のこと。2011年に世界記憶遺産に認定されたあと、東京タワー開場55周年記念として開催されていました。   東京タワー1階の特設会場の「世界記憶遺産の炭坑絵師山本作兵衛展」は、美術館ではないので、やや会場が狭かった印象が残っています。
 春庭Annex2013年4月にUPしました。
https://blog.goo.ne.jp/hal-niwa/e/4ee93c60bfcfa94e9a027

 それからほぼ10年。作兵衛のことも、10年前から見ると知る人も多くなってきました。
 今回の富士美術館での展示は、常設展の中での開催でした。特別展の上村松園松篁淳史三代展のシルバー券1000円で常設展も見ることができたので、「チケット買わないときは図録購入OK」という自分ルールで、今回は作兵衛の図録を買いました。
 東京タワーでは絵ハガキ集を購入したのですが、すでに大半は青い鳥さんに送付して手元に残っているのはわずかになっていたので、図録で山本の画業をゆっくりたどれるので、よい観覧の機会になりました。

 富士美術館の口上
 2011(平成23)年5月25日、「山本作兵衛コレクション」697点が、ユネスコ「世界の記憶」(世界記憶遺産)に日本で初めて登録され話題を集めました。田川市石炭・歴史博物館及び福岡県立大学が収蔵する「山本作兵衛コレクション」は、筑豊の炭坑労働者であった山本作兵衛氏(1892-1984)が、自らの体験と記憶などをもとに描き始めた炭坑記録画に代表されます。作兵衛氏は60代半ばから、炭坑記録画を描き、確認されているだけでも1000枚を超える作品を残しました。
 本展では作兵衛氏の初期作品を中心とした田川市石炭・歴史博物館所蔵の原画78点を、ユネスコ「世界の記憶」に登録後初めて東京で展示公開いたします。また、作兵衛氏が炭坑の仕事や暮らしを子や孫に伝えたいと折々に描き残した貴重な個人所蔵作品32点と、この度初めての展示公開となる当館所蔵の原画4点も合わせて展示いたします。作兵衛氏が“未来に伝えたい”との情熱を持って描いた原画一枚一枚に宿る力強い筆の運びをぜひご覧ください。


会期:前期 2月11日(金・祝)〜27日(日)
   後期 3月1日(火)〜13日(日)

 前期の展示と入れ替えがあり、見ることができなかった絵もあったのですが、2013年の展示で見たものと合わせて、作兵衛画業を知るには十分でした。
 作兵衛は小学生のころから炭鉱で働きだし、学校にはあまり通えないまま卒業となりました。しかし、大人になってから、もらった漢和辞典を書き写して勉強をするなど、努力を続けました。チラシやノートに自分の記憶をメモしてしっかり書き残しています。

 暗闇の中の仕事、信頼できる相手と組んで仕事をするため、夫婦でヤマに入る組が多かった。


 作兵衛が閉山に伴い炭鉱を解雇され、警備員として働くようになったのが、1955年。夜間警備のあいだ、戦死した長男を思い出してしまう気持ちを紛らわすために、明治期に少年作兵衛が炭鉱で働き始めてから、筑豊の炭鉱が閉山される時代までの記憶をたどって、チラシの裏などに「子や孫に語り残すため」の絵を描き始めました。

 幼い弟を背負って母のあとを追って炭鉱を下っていく。


 今回の作兵衛展では、「山本作兵衛の人となり」を中心にまとめられていて、作兵衛がうたう「ごっとん節」の音声が会場に流れていたり、孫が語る「じいちゃんの思い出」がビデオ上映されていたりしました。
 9歳ころから親の手伝いで炭鉱に入り、小学校もろくろく通えなかったという作兵衛ですが、おどろくほどの記憶力を発揮して、炭鉱の道具などを細かく描いています。昭和の炭鉱では作兵衛が描いたようなツルハシふるっての採炭などはすでにおこなわれなくなっていたそうですが、作兵衛は明治大正の炭鉱の労働のようす、炭住の生活、子供の遊びなどを生き生きと描いています。

 石炭を運ぶ川船の船頭をしていた父親も、鉄道の整備で船頭の仕事を失い、炭鉱夫になる。父が船頭をしている記憶を絵にする。


 富士美術館同時開催の「上村松園松篁淳史三代展」の日本画も、女性美、鳥や花の美しい絵。こちらも美しく心打つよい展示でしたが、私はこの山本作兵衛の画業を「よくぞ描き残してくださった」と感謝したいです。
 すばらしい記憶遺産と思います。

<つづく>
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