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ぽかぽか春庭「アーツ&クラフツとモリス展 in 横浜そごう美術館」

2023-11-09 00:00:01 | エッセイ、コラム


20231107
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩白秋(1)アーツ&クラフツとモリス展 in 横浜そごう美術館

 ウィリアム・モリスのデザイン、壁紙もカーテンの柄も好きですが、モリス以外のデザイナーの名は、「アーツクラフツに関連するまわりの人たち」という意識で、ひとりひとりの名前などは知らなかったです。
 今回のそごう美術館の「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」展は、モリスの作品もありましたが、モリスの仲間たちの作品が多かったです。

 アメリカでのアーツアンドクラフツの影響を受けた人として、フランク・ロイド・ライトやティファニーが展示されていました。これまでライトやティファニーをモリスと結びつけたことはなかったので、ロイドがモリスの影響を受けてきた、という流れの展示に、目を開かれました。

 モリスの代表作「いちご泥棒」


 そごう美術館の口上
 19世紀後半にイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動は、産業革命以降、急速に失われつつあった手仕事による制作活動を取り戻すこと、さらには、生活と芸術が一体化することを目指しました。中心人物となったウィリアム・モリス(1834-1896)の思想と実践は、同時代の作家に広く受け入れられ、イギリス全体、そして世界各地へと広まります。アメリカでは、建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)らも参加し、運動は新たな展開を見せました。
 手仕事の復興を目指したアーツ・アンド・クラフツ運動は、美術や工芸、建築だけにとどまらず、産業や人々の生活文化にも影響を与え、その思想は現代の日本にも息づいているのです。
本展では、各地の歴史や文化を反映し発展したアーツ・アンド・クラフツ運動の歩みを、テキスタイルや壁紙・家具・金工など、約170点の作品を通じてご紹介いたします。

 産業革命のあとの機械製品勃興時代に、手仕事による染織や手工芸の価値を復興させようとしたアーツアンドクラフツ」でした。アーツアンドクラフツが、アメリカにも広がっていき、フランク・ロイド・ライトらが、「機械による大量生産」も取り入れたアーツアンドクラフツの新しいムーブメントを立ち上げました。高価な手仕事製品を買えない層にも、機械による大量生産によって、手ごろな価格で消費者に届くからです。

 ティファニー創業者の息子、ルイス・コンフォート・ティファニーが手掛けたランプやステンドグラスは、伊豆のティファニーガラス美術館で堪能しました。しかし、この時は、「アーツアンドクラフツ」の影響を持つ作品という視点がありませんでした。フランツ・ロイド・ライトの建築作品も、モダニズムの一語で見ていましたので、モリスとの関連で見たことがありませんでした。

 展示は、ウィリアム・モリス(1834 - 1896)の代表作「いちご泥棒」などのテキスタイル作品のほか、アーツアンドクラフト工房関連の椅子やガラス製品、金工作品など、さまざまな意匠が並んでいました。
 展示第1室に写真OKのコーナーがありましたが、第2室以後は写真不可。ネット借り物写真で思い出作り。

 モリスは亡くなってから127年たっており、著作権はとうに消滅。そのデザインはパブリックドメインとなっています。しかし、展示物には所有権というものも付随しているので、全部が撮影OKとはなっていないところが残念。所有している方々、フラッシュ無しのシャッターを受けても、展示品が劣化するわけじゃないので、撮影OKにしていただけるとありがたいし、貴重なものを持っている人の徳を示してほしい。モリスの仲間たちの作品もほとんどがパブリックドメイン。

 撮影OKのコーナー モリス タペストリー「孔雀と竜」1878 ほか
ウィリアム・モーガン「バラと格子」1872
C・F・アン・ズリー・ヴォイジ―「ポピー」1895
ウィリアム・モリス「格子垣」1864年

 生活の中にこそ「美しさ」を、というのがアーツアンドクラフツの主張でした。毎日暮らす家の壁紙もカーテンも、自分の好みの柄にすれば、心地良い日常がすごせます。産業革命後の機械万能時代に、職人仕事の保護など、機械生産に対抗する必要があったのだと思います。しかし、今となっては、手作りの品々は、私のようなものには手が出ない高価なものになっています。フランク・ロイド・ライトが「工場大量生産の安価なものも必要」と考えたのもわかります。

 アーツアンドクラフツ発祥の地である英国は、モリスが生きた19世紀後半、厳然たる階級社会でした。現在も貴族制度が残っている英国社会。貴族や地主ジェントルマン階級と無産労働階級との差は、モリスの時代と今では大きく異なってきました。現在は、意識の上では労働者階級の首相も出てきたとはいえ、貧富の差などはいまだに大きい。移民階級などの問題も広がっています。

 資産のある投資家の息子に生まれ、聖職者をめざしたこともあるモリスは、「生活の美」は労働者階級にこそ必要と考え、カール・マルクスの娘エリノア・マルクスとともに、ハマスミス社会主義協会を結成し、終生社会主義者として活動しました。詩人としても才能を発揮し、美しい本、美しい活字の制作も行ったモリス。展示には、モリスデザインの活字や装丁による本の展示もありました。貴族階級ブルジョア階級が「美しいもの、よきデザイン」を保護してきたという歴史はあるのですが、モリスの考えた「働く階級にこそ美を」という理念はまだまだ理想です。

 現実の我が家など、整理整頓の対極にある散らかり放題の「生活の美」の反対「生活の醜」の暮らしを続けていますが、きちんと片づけができないのも生まれ持った「片づけられない症候群」と開き直って、今後も「美」は美術館で楽しむことにします。

<つづく>
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