20231111
ぽかぽか春庭アート散歩>2023アート散歩白秋(2)コスチューム・ジュエリー展 in パナソニック汐留美術館
ジュエリーは私にとって、身に着けるものではなく、見て楽しむものです。美しいものを見るのは心楽しいこと。この1年の間にも、大倉集古館でのヴィクトリアンジュエリー展や、アクセサリーミュージアムの常設展などジュエリーを楽しむ機会がありました。今回はパナソニック汐留美術館での「コスチュームジュエリー」展。
貴族などが希少な宝石で身を飾りつけるのと異なり、コスチューム・ジュエリーは、ガラスビーズ、メタル、プラスチックなど、安価な材料を使って、斬新なデザインのアクセサリーを創作したものです。ポール・ポワレ、ココ・シャネルなどの新時代の洋服に合う新しいアクセサリーが生み出されました。
会期:2023年10月7日-12月17日
ポール・ポワレが嚆矢となり、シャネルによって広く普及したコスチュームジュエリー。宝石や貴金属といった素材の既成概念から解放され、優れたデザインや衣服との組合せの魅力によりパリのモード界では不可欠の要素となり、やがてアメリカへも伝わりました。本展はコスチュームジュエリーの展開を包括的にご紹介する日本初の展覧会です。ディオールやスキャパレッリなどオートクチュールのコレクションのために生み出された作品はもちろん、それらのブランドからの依頼も受けたジュエリー工房による卓越した技術の精緻なネックレスやブローチに、リーン・ヴォートランやコッポラ・エ・トッポらによる独創的な逸品、そしてミリアム・ハスケルやトリファリに代表される、幅広い層に支持されたアメリカン・コスチュームジュエリー。これらを、国内随一のコレクションから選りすぐり、400点あまりの作例を通じてご紹介するとともに、各デザイナーが素材の自由を獲得することで生み出した、それぞれの様式美を探ります。
第Ⅰ章 美の変革者たち オートクチュールのためのコスチュームジュエリー
ポワレやココ・シャネルなどパリのオートクチュールは、20世紀の女性のために、コルセットを取り払い、活動する服、働く女性の服を作るようになりました。昼、職場で働くための服を着ていた女性が、コスチュームジュエリーを身につければ、華やかなパーティに出ていける。高価な宝石ではなくても、デザインの華麗さ優美さは、どんなダイヤモンドやルビーにも負けない美しさをみせます。(第Ⅲ章の一部は撮影可能。撮影不可画像は借り物)
夜会用マスク、ブレスレット「深海」
ポールポワレデザイン、マドレーヌ・パニゾン:制作 1919
(メタリックチュールにガラスビーズ、クリスタルガラスで刺繍)
ココ・シャネルデザインのコスチューム・ジュエリーは、メゾン・グリポワやロベール・ゴッサンス が制作しました。
「ビザンチンクロス」ココ・シャネル:デザイン ロベール・ゴッサンス:制作 1960頃
(ガラスビーズ メタル)
《ネックレス「葉」》デザイン・制作:ジャン・クレモン、1937年頃
クリアエナメル彩メタル、メタルメッシュ
第Ⅱ章 躍進した様式美 ヨーロッパのコスチュームジュエリー
「私は職人」と自己規定をしていたココ・シャネルは、コスチュームジュエリーを「本物の偽物」と表現しました。本物の宝石ではなく、人造パールやダイヤモンドに似せたガラスなど、宝石の偽物ではあるが、「その美しさは本物以上」という意識です。
一方シャネルの好敵手スキャパレリの自己規定はあくまでアーティストであり、自己主張や表現を明確にしつつデザインしました。
シャネルが働く女性のためにデザインした服は、男っぽいテーラードカラーをもつ、かっちりしたスーツ。19世紀の女性たちはスカートで乗馬するとき、足を同じ側に下げ、馬にまたがることはありませんでした。ココは男性のための乗馬服を自分自身のためにアレンジし、鞍にまたがって馬に乗りました。ココは、この「男性と同じ乗馬服」から出発しています。シャネルの「男装の麗人」スタイルは、第1次世界大戦で男性に代わって社会に飛び出した働く女性からの支持を集めました。そして、昼働いた女性たちにとって、夜のお出かけに必要なものがコスチュームジュエリーでした。
一方スキャパレリは、ショッキングピンクを駆使したシュールレアリズムとコラボした奇抜なデザイン。いわば男も女も飛び越えてしまっています。
チョーカー「花火」コッポラ・エ・トッポ
デザイン:リダ・コッポラ、1968年、クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル、
デザイン:リダ・コッポラ、1968年、クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル、
第Ⅲ章 新世界のマスプロダクションーアメリカのコスチュームジュエリー
西欧のコスチュームジュエリーが貴族文化としての宝飾品から出発したのと異なり、アメリカ新世界では、最初から新しい素材のコスチュームジュエリーが「偽物」としてではなく、それ自体の存在によって受け入れられました。
さまざまな素材、さまざまな色によって表現がひろがりました。
・ネックレス「葉と藤の花」クリスチャン・ディオール:デザイン 1952
メゾン・グリボワ:制作
・ブローチ「白鳥」メゾン・グリボワ:制作1950-1960 ガラスペーストラインストーン エナメルガラス メタルサイズ
・「えんどう豆」シュザンヌ・グリ歩ワ:デザイン メゾン・グリボワ制作
1955頃
クリスタルガラスや人造パール、メタルなど、さまざまな素材が用いられて、新しいデザインが歓迎されました。
パナソニック汐留美術館は、水曜日が定休なので、月曜日お昼前後に観覧しました。ブローチやピンなど、小さい作品に顔を寄せるように近づいてみることもできる程度の人の入りで、ゆったり回れました。観覧客のほとんどは女性。
デザインの多様さ、素晴らしさに感嘆するばかりで、出口のショップで売られている素敵なデザインのアクセサリーも、図録も買うことはできませんでしたが、絵ハガキを2枚買いました。2枚で230円。ぐるっとパス(2500円)使用は、松濤美術館五島美術館についで3館目。これで元はとった。
交通費のほかは節約しようと思って、ハムチーズサンドイッチを作って持参。広場のベンチで空きボトルに入れて持ってきたコーヒーでランチにしました。ベンチの目の前が丸亀製麺に店だったので、お昼はうどんにして、サンドイッチはそのまま持って帰って晩御飯にしようかなとも思ったのですが、いやいや、初志貫徹。帰り道、スーパーで半額牛丼300円を買って帰りました。やはりコスチューム・ジュエリーといえどもジュエリーにはとことん縁のない暮らしです。
<つづく>