「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館

市原湖畔美術館
「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 
2021/10/16~2022/1/16



市原湖畔美術館で開催中の「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」を見てきました。

1947年に長野県で生まれた戸谷成雄は、チェーンソーで木を彫り込む作品を手がけ、国内外の芸術祭や美術館の展示に参加するなどして活動してきました。

その戸谷の新旧作にて構成されたのが「森―湖:再生と記憶」で、大きなアトリウムを有する美術館の特徴的な空間を活かし、大小10点の作品を展示していました。


「双影景」 2008年

まず冒頭の「森」を抜けると現れるのが、木の彫刻が垂直に並ぶ「双影景」で、いずれも木の表面はチェーンソーによって荒々しく刻み込まれていました。


「双影景」(部分) 2008年

ただ端的に刻み込まれたと言っても、例えば細かく砕くように切り込みが入っていたり、龍のうろこのようなうねりを見せるものもあり、個々の彫刻ではかなり様子が異なっていました。また切り込みそのものも木の半分のみ施された作品から、上から下までほぼ全部刻まれたものもあり、必ずしも一様ではありませんでした。


「落下」 1992年

そうした「双影景」の向こうの小部屋にあるのが「落下」で、ちょうど中央部がクレーターのようにくり抜かれ、穴の空いた一枚の円盤のような木の彫刻が吊るされていました。


「落下」 1992年

木の周囲は「森」などと同じく、チェーンソーで刻まれていて、穴の下には木屑と思しき粒子状の物体が小さな山を築いていました。

今回の個展のハイライトを飾るのは、地下から地上へと至るアトリウムの空間に展示された「雷神 - 09」、及び「水根II(スワ)」と「地霊 Ⅳ」でした。


「雷神 - 09」 2009年

そのうち高さ9メートルにも及ぶのが「雷神 - 09」で、丸みを帯びた木の根のような部分から、1本の幹のような彫刻が直立していました。


右奥:「水根II(スワ)」(2005年)、左手前:「地霊 Ⅳ」(1993年)

そしてガラスと鉄の箱に木の彫刻を納めた9点の「地霊 Ⅳ」と、木が根を張り巡らせたような「水根II(スワ)」が斜めに向かうように展示されていて、荘厳とも言うべき雰囲気を醸し出していました。この地下空間を古代の洞窟に見立てれば、例えば木の精霊を祀るための場のようにも思えるかもしれません。


「水根II(スワ)」 2005年

戸谷は関東において近年、「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」(武蔵野美術大学美術館、2021年)や「ドローイングの可能性」(東京都現代美術館、2020年)でも作品を発表してきましたが、美術館での単独の個展となると「戸谷成雄―現れる彫刻」 (武蔵野美術大学美術館、2017年)にまで遡るのかもしれません。


「視線体ー散」 2019年

作品数自体こそ多くはありませんが、美術館の空間と一体となったようなインスタレーションとして見応えがありました。


「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」会場風景

12月26日まで開かれている「いちはらアート×ミックス2000+」のパスポートにて観覧することができました。


2022年1月16日まで開催されています。

「戸谷成雄 森―湖:再生と記憶」 市原湖畔美術館@LSM_ICHIHARA
会期:2021年10月16日(土)~2022年1月16日(月・祝)
休館:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月27日〜1月3日)。
時間:10:00~17:00(月~金)、9:30~19:00(土曜・祝前日)、9:30~18:00(日曜・祝日)
 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般800(700)円、65歳以上、大学・高校生600(500)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:千葉県市原市不入75-1
交通:JR線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車、徒歩約20分。
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