晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

瀬尾谷のこと(4) 2/18

2012-02-19 | 上林地名考

2012.2.18(土)雪 積雪28cm

 シオ地名で今ひとつ気になることがある。それは”入”と書いてシオと読ませる地名である。秘湯好きの方ならご存じの奈良県吉野郡川上村の入之波温泉(しおのはおんせん)である。大台ヶ原の沢や岩壁に通っていた頃、ちょっと寄り道すればこの温泉に行けるのにと考えていたが、遂に訪れることなく残念に思っている。前述の「地名の語源」では(3)撓んだ土地の中に例として載っている。
 しかし撓(たわ)んだ土地とはどのような土地なんだろうか、あるいはシオがなぜ撓んだ土地を表すのかこの辞書には説明はない。
 ここで一昼夜考えたのだが、撓むはシワムとも読めるわけだ。たわむ、しなう、まがる等と言った意味がある。だからこそ撓んだ土地、川の曲流部などという意味があり、シワムあたりからシオと転化したのかもしれない。しかも漢和辞典(漢語林)では呉音として、ニュウ(ネウ)と読むとある。呉音とは漢音以前に入ってきた音であり、漢音とは奈良朝、平安朝頃に伝えられた音とあるから、より古い読み方と言ってよい。こんなところから入(にゅう)をシオと読むようになったのかも知れない。
 入之波(しおのは)は川の曲流部あるいは塩類泉を表しているのだろう。P1010077

雪の瀬尾谷、雪が解けて瀬音が大きくなったらミズを探しに谷奥へ行ってみたい。 


 もうひとつ、入という漢字は入るということを意味し、象形として入口をかたどる”∧”からきており楔形の谷を表すのに使われている。従ってシオ地形の谷などに入谷(しおだに)として使われることもあろうかと思う。複雑なのは入をニュウと読んで丹生を意味し水銀の産地の場合がある。岐阜県揖斐郡徳山村(現揖斐川町徳山)には入谷、門入、戸入などのにゅう地名があり、実際に水銀鉱山跡を発見している。
「信州の塩地名について」(興津正朔)では、丹生ー乳ー入ー塩として、塩・入地名をもすべて金属関連として、シオ地形には触れられていない。これでは日本中が水銀産出地となる。
 このようにシオ地名はかなり複雑な様相を示している。したがって瀬尾谷についても安易に断定することは問題があるかも知れないが、地形的にははっきりした谷なので、シオ谷→ショウ谷→瀬尾谷(しょうだに)の変化を地名の由来としたい。
 そして瀬尾谷という美しい文字で名付けられた先人のセンスの良さに拍手を送りたい。この項おわり。

【作業日誌 2/18】
雪かきくけこ

今日のじょん:今朝の雪はこんな感じ。キョーコちゃんも尻尾巻いて帰ってったぞ。P1010082 P1010083 P1010084 P1010085

コメント
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