2013.9.9(月)晴れ
谷川健一さんの名著「日本の地名」は「日和山とアイの風」という文章で始まる。周囲を海に囲まれ、複雑な地形の日本では信じられないほどの多くの種類の風を生み出した。かつての物流の主役であった廻船の動力は風である。安全に目的地まで船荷を運ぶため風をよむことは船頭の最も大切な仕事であったろう。この文章ではある廻船の航海日誌が紹介されている。その日その日の風と航程が記されている。そのなかに次の文がある。
「沢根を出立したのは文化十年四月十九日の昼頃であったが、間もなく、西北西の方向から吹くタカカゼ(シモニシ)のために引き返し、沢根の近くの二見湊へ泊まった。あくる二十日はクダリカゼ(南西風)のために出航できなかった。」
クダリカゼとは上方から下るときに使う風で、この廻船は佐渡から上方へ向かうもので、この場合出港できなかったということである。同様にシモニシも向かい風な訳である。シモニシは西南西の風というのみで言葉自体の説明はないのだが、シモは下りの意、ニシは西風と思われる。つまり下りに使う西風ということではないだろうか。なんてことはない三省堂国語辞典にも「太陽が沈む方向、西風」とある。
西の語源はニシ(西風)なのである。シが風を表すことは既に書いたが、ニは一体何なのだろう。
言語学者をもってしても不詳と書かざるを得なかった”ニ”についてわたしが解明することは無理なことだが、想像ぐらいはしてみたい。
”ニ”は西の方角を意味することは間違いが無いが、その語源はアナではないだろうか。アナがニに転訛する少し無理があるようにも思えるが、アナ→ナ→ニという変化が考えられないでもない。
アナシ、アナゼ、アナジという言葉がある。
近畿以西で使われる言葉で西北西、所によっては西南の風とある。(全国方言辞典)
本日の教材
予期しないおそろしい風。アナは驚いたとき思わず発する語。アナは、今ではアラ(アレハから)などという感動詞。驚くべき風が原義。
西北西のところが多い。南西風、北北西風、北北東風のことをいう。(語源大辞典)
風の名前は実は2,000種類以上あるという。すべてを見たわけではないが、数百種の風の名称を調べてみたが、感動詞の付いた名称は1個も見当たらない。どうもこの語源大辞典の説明は怪しい気がする。実はこの辞典は”ニ”は不詳と書いた先生の編になるものである。つづく
【作業日誌 9/9】
草刈り(6-1)
【今日のじょん】実に何日ぶりの晴れの日だろう。人間も気分いいが、じょんだって随分気持ちよさそうだ。なんてったって雨具着なくていいんだもの。いやもう走ること走ること。