2014.11.11(火)曇り
現役時代、一体今日は何だったんだ、何をしていたんだろうという日がよくあった。それでもその時分は将来が無尽蔵にあったから、「別にどうって事は無いさ、明日またいい日にすればいいや」なーんて思っていた。ところが人生も整理時期になってくるとそういうわけにいかない。今日一日を大切に生きようなんて、妙な仏心が起きてくる。
ところが幸いなことにこの地にて定住という旅を始めてから6年あまり、無駄だったなーという日は一日もない。とにかく次々とやることがあって、手を抜く暇がない。たとえ熱にうなされて寝込んでいても、本を読んだりするし、休養のため眠ることさえ有意義に思えてくる。宮仕えと違ってすべての時間が自分のためにあるということがそう思える原因なんだろうか。その代わり収入は限られたものになってくる。いくら時間給が安い地方でも、毎日働きに出ればそれなりの収入は得られるわけだ。
しかしわたしは知っている。そうすることでもっともっと失われるものがあることが、、、。
無駄な一日は無いのだけれど、その日が幸せな一日だったかそうでなかったかは別問題である。
渡辺淳先生が来られた日、先生にお目にかかった日はなぜだか幸せな一日だったなあということになる。
今日はじっかんさんの用事で先生のアトリエを訪ねる。以前にも二度ばかし訪ねたことがあるが、ノンアポだったのでお目にかかることが出来なかった。今日はしっかりアポイントを取っていたので、アトリエでお目にかかることが出来た。
9月初めてお伺いしたときにちょうど郵便の配達があった。玄関は普通のお家である。
画家の知り合いというのは幾人かいたが、そのアトリエを見せてもらったのは初めてである。先生のお宅は外装は普通の感じなんだが中に入って驚いた。もの凄い梁や柱がふんだんに使われていて、凝った造りである。なんでも一滴文庫を手がけた大工さんが建ててくれたとのことである。さもありなんと写真を撮りまくる。先生の許可は取っていないのだけれど、許していただけるだろう。
また作製中の絵の迫力に圧倒される。展示場できれいに収まっている絵と違って、今ここで生まれようとしている絵には躍動感を感じる。
梁とかちょっと見えるかな、二階の書庫も素晴らしい。
二階の書庫がまたいい。「先生一滴文庫twoですねえ」と言ったが返事は無かった。書庫というのは多分水上先生もそうだったろうと思うのだが、本が好きな者にとっては思い入れのあるものである。わたし自身、学生時代から集めた本が、湿気の多い環境的には最悪の地下床下に眠っているのは本当に心苦しい。
そういう意味で渡辺先生宅の二階書庫は最高の書庫である。ソファーに寝袋持ち込んで本を読み開かしたい、そんな書庫なのである。
先生に会った日がなんで幸せなんかと考えると、それは先生の人柄である。「徹底して腰の低い人やなあ」というのはかみさんの言である。確かにそうなんだけどわたしは先生の話がおもしろいのが気に入っている。それはウィットでもなく、だじゃれでもなく、その場その場の機微というか人間の心模様がおもしろい話なのである。今日はカメムシの話だった。わたしがブログにカメムシバスターのことを書いていたことから話が膨らんだのだが、新幹線の中でのカメムシの話は本当におもしろかった。じょんのびを訪れた人には話してあげよう。
現在一滴文庫では渡辺先生の「谷の人」という展示が行われているのだが、11月23,24日13:00からギャラリートークが行われている。これはおもしろいですぞ。なんとか参加できまいかとかみさんと交渉中である。
予約が必要なので、一滴文庫に問い合わせること。
【今日のじょん】じょんは大好きな芝生の広場にやってきたのにとにかく嗅ぎ廻るばかり、もっと楽しめよなあ。
雄大な青葉山の景色もお構いなしに嗅ぎ廻っている。