再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度(FIT)において、高い買取価格で太陽光発電の設備認定を取得後、資材の値下がりを待って意図的に運転開始を遅らせるなど悪質な運転遅延が増えている問題で、経済産業省は土地・確保までに一定の時間的制約を設け、これを満たさない場合は認定の取り消し、または買取価格の引き下げを行う方向で制度を見直す。2月28日の有識者会合で大筋が固まった。
制度見直しによって認定取り消しがどの程度出るかは不明だが、経産省の担当幹部は「常時1割くらいは、(運転開始までいかず)脱落しているので、そこからさらに上積みが出てくるだろう」と見ている。
事業者をフィルターがけ
見直しの選択肢としては、設備認定の時点で土地・設備の確保を求めたり、調達価格の適用時期を発電開始時に変更したりする方法もあったが、それらの場合、事業資金の融資の段階で買取価格が決まらないため、金融機関の融資を受けるのが困難になる。「実態のない事業者にフィルターをかけることには賛成だが、事業者のモチベーションを下げ、入り口を狭くするようなことは避けてほしい」(太陽光発電協会)といった声に配慮する。
一定の期日設定については、設備認定から6カ月以内に約8割の案件が土地・設備を確保し、認定から8カ月以内に約9割が土地・設備を確保している現状を踏まえ、6~8カ月を目安に検討する。
適用範囲については、大規模設備を中心としつつも、できるだけ広く取る方向で検討する。本来は同一事業地での大規模な太陽光発電設備(高圧連系となる50㌔㍗以上)を、意図的に設備維持コストが安く連系手続きも簡素な低圧連系(50㌔㍗未満)に細分化するケースに関しては、同一の大規模案件として認定を進める。
また、認定を受けた後、土地のトラブルが生じて着工が遅れるケースもある。その解決のため、認定時点で当該土地の登記簿謄本を添付させ、共有地における全地権者の同意を書面で確認する。地権者が複数の事業者に同意書を出した場合には、双方に認定を与えないなど運用改善を図る。
回避可能費用のベースを火力平均に変更か
2月28日の有識者会合では、「回避可能費用」の算定方法の見直しも同18日に続いて議論された。FITでは、電力会社が再エネを買い取る費用は「賦課金」として電力料金に上乗せされている。13年度は標準家庭で月額120円程度だ。この賦課金は、当該年度に予想される買取費用の総額から、電力会社が再エネ買い取りで削減できる自社の発電コスト(回避可能費用)を差し引いて算定される。回避可能費用が大きいほど賦課金は小さくなる。
現状では、回避可能費用は全電源平均の可変費用(燃料費中心)をベースに計算されている。しかし、燃料費が安く実際には削減対象とはならない原子力が含まれるなど、回避可能費用が過小評価(賦課金は過大評価)されているとの批判がある。電力会社が再エネを買い取る際には、「運転コスト単価の高い電力から優先的に稼働を抑制すること(メリットオーダー)が必要」(自然エネルギー財団)と考えられるからだ。同財団の試算では、年間の賦課金は1000億円以上も過大に上乗せされている可能性がある。
28日の会合では全電源平均に代わる選択肢として、火力・水力平均、火力平均、卸電力市場取引価格が検討されたが、有識者の間で比較的賛同が多かったのが火力平均。調整に最も頻繁に活用される揚水式水力が省かれるという欠点はあるが、調整電源単価を求めるうえで最も近似値とする意見が多かった。
一方、火力・水力平均はダム式水力など明らかに需給調整に用いていない電源も含まれており、賛同者は皆無。卸電力市場取引価格については、現状、取引量が小売り全体の1%程度に過ぎず、月ごとの変動も大きいため、指標として不安定と評価された。
一部には、FITの長期的性格や将来的な電力制度改革を考え、見直しは慎重に議論すべきとの意見があるほか、再エネの買い取り増大に伴う既存電源の固定費削減分も含めるべきとの考え方も示された。
また、回避可能費用を見直して賦課金が減ると、電力会社の電力料金収入が減少することになる。「現行制度を前提として事業性判断を行っている新電力の多くの事業者が致命的な影響を受ける」(エネット)として、再エネ電源の調達比率が多い新電力に対して、激変緩和措置を設けるべきとの意見が出ている。
制度を見直すにしても、再エネの普及拡大を阻害しては元も子もない。できるだけ電気利用者にやさしく、かつ事業者の健全な発展を後押しする制度が必要だ。
制度見直しによって認定取り消しがどの程度出るかは不明だが、経産省の担当幹部は「常時1割くらいは、(運転開始までいかず)脱落しているので、そこからさらに上積みが出てくるだろう」と見ている。
事業者をフィルターがけ
見直しの選択肢としては、設備認定の時点で土地・設備の確保を求めたり、調達価格の適用時期を発電開始時に変更したりする方法もあったが、それらの場合、事業資金の融資の段階で買取価格が決まらないため、金融機関の融資を受けるのが困難になる。「実態のない事業者にフィルターをかけることには賛成だが、事業者のモチベーションを下げ、入り口を狭くするようなことは避けてほしい」(太陽光発電協会)といった声に配慮する。
一定の期日設定については、設備認定から6カ月以内に約8割の案件が土地・設備を確保し、認定から8カ月以内に約9割が土地・設備を確保している現状を踏まえ、6~8カ月を目安に検討する。
適用範囲については、大規模設備を中心としつつも、できるだけ広く取る方向で検討する。本来は同一事業地での大規模な太陽光発電設備(高圧連系となる50㌔㍗以上)を、意図的に設備維持コストが安く連系手続きも簡素な低圧連系(50㌔㍗未満)に細分化するケースに関しては、同一の大規模案件として認定を進める。
また、認定を受けた後、土地のトラブルが生じて着工が遅れるケースもある。その解決のため、認定時点で当該土地の登記簿謄本を添付させ、共有地における全地権者の同意を書面で確認する。地権者が複数の事業者に同意書を出した場合には、双方に認定を与えないなど運用改善を図る。
回避可能費用のベースを火力平均に変更か
2月28日の有識者会合では、「回避可能費用」の算定方法の見直しも同18日に続いて議論された。FITでは、電力会社が再エネを買い取る費用は「賦課金」として電力料金に上乗せされている。13年度は標準家庭で月額120円程度だ。この賦課金は、当該年度に予想される買取費用の総額から、電力会社が再エネ買い取りで削減できる自社の発電コスト(回避可能費用)を差し引いて算定される。回避可能費用が大きいほど賦課金は小さくなる。
現状では、回避可能費用は全電源平均の可変費用(燃料費中心)をベースに計算されている。しかし、燃料費が安く実際には削減対象とはならない原子力が含まれるなど、回避可能費用が過小評価(賦課金は過大評価)されているとの批判がある。電力会社が再エネを買い取る際には、「運転コスト単価の高い電力から優先的に稼働を抑制すること(メリットオーダー)が必要」(自然エネルギー財団)と考えられるからだ。同財団の試算では、年間の賦課金は1000億円以上も過大に上乗せされている可能性がある。
28日の会合では全電源平均に代わる選択肢として、火力・水力平均、火力平均、卸電力市場取引価格が検討されたが、有識者の間で比較的賛同が多かったのが火力平均。調整に最も頻繁に活用される揚水式水力が省かれるという欠点はあるが、調整電源単価を求めるうえで最も近似値とする意見が多かった。
一方、火力・水力平均はダム式水力など明らかに需給調整に用いていない電源も含まれており、賛同者は皆無。卸電力市場取引価格については、現状、取引量が小売り全体の1%程度に過ぎず、月ごとの変動も大きいため、指標として不安定と評価された。
一部には、FITの長期的性格や将来的な電力制度改革を考え、見直しは慎重に議論すべきとの意見があるほか、再エネの買い取り増大に伴う既存電源の固定費削減分も含めるべきとの考え方も示された。
また、回避可能費用を見直して賦課金が減ると、電力会社の電力料金収入が減少することになる。「現行制度を前提として事業性判断を行っている新電力の多くの事業者が致命的な影響を受ける」(エネット)として、再エネ電源の調達比率が多い新電力に対して、激変緩和措置を設けるべきとの意見が出ている。
制度を見直すにしても、再エネの普及拡大を阻害しては元も子もない。できるだけ電気利用者にやさしく、かつ事業者の健全な発展を後押しする制度が必要だ。