万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」は久しぶりの弁当箱本。750ページ超の重量級。これを東京1泊2日に持っていくわたしは旅慣れていないにもほどがある。
でもなにしろ途中でやめられなくなったのだ。万城目の作品はいつも面白いけれど、週刊文春に二年にわたって連載されたこの時代小説(というより懐かしの忍者小説)の面白さは比類がない。
特急「いなほ」で読み、上越新幹線「MAXとき」で読み、水道橋グランドホテルで読み、神保町の喫茶店で読み、帰りの新幹線、特急でも酒を飲みながら読み続け、それでも終わらずに酒田に帰ってから駅前の飲み屋のカウンターで読み、それでも終わらず、そして終わらないことがこんなに幸せな本はめったにない。
あまりやる気のない忍者が大阪の陣で活躍せざるをえなくなる展開がいいし、途中で想像がつくように、万城目の某作品につながるようになっている。
徹底して風太郎の一人称で描かれるのに、登場人物たちのキャラが立ちまくり。果心居士まで登場させたのは司馬遼太郎への挑戦の意味もあったか。
一人称でこれだけ“大きな物語”を語れるのってやっぱり才能だ。ひょうたん栽培の農業小説としても一級品です。ぜひぜひ!
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とっぴんぱらりの風太郎 価格:¥ 1,995(税込) 発売日:2013-09-28 |