緊張した面持ちの男(サム・ワーシントン)が高層ホテルにチェックインする。ポーターに高額なチップを渡した彼は、ルームサービスでディナーをとった後に、なぜか食器などの指紋をふきとり、メモを書き残して窓の外に出る。地上60m、崖っぷちに立つ男の目的とは……
おそらくは高層ビルの壁からぶらさがる男のビジュアルイメージがまずあって、そこにストーリーをくっつけていったんだと思う。クリフハンガーという言葉があるように、映画にとって魅力的な題材だから。
でもほら、わたしは「ゼロ・グラビティ」のときにも告白したように、高所恐怖症なので、神経がはたして耐えられるかしらと……
心配は無用でした。その、あとからくっつけたストーリーがひたすら面白くて、身体がすくむどころか途中でタバコを吸うのを忘れるくらい熱中してしまった。
・なぜ彼は失敗したばかりの交渉人(エリザベス・バンクス)を指名したか
・なぜそのホテルでなければならなかったか
などに、ちゃんとした理由が用意してあってうれしくなる。とにかく観客をだまそうという意欲満々なのだ。もちろん突っこみどころも満載なんだけど、その最大のものは“いくらなんでもネタをつめこみすぎじゃないか”だ。でもいいじゃん、つめこめるだけのアイデアがあったんだから。
文字通り独壇場なサム・ワーシントン以外にも、魅力的な脇役がいっぱい。老いたからかすっかり痩せたけれどもセクシーなエド・ハリス。「プライベート・ライアン」の味は健在なエドワード・バーンズ、「父親たちの星条旗」が忘れられないジェイミー・ベル、そして、まともな役は絶対にできないと思っていたウィリアム・サドラーがもうけ役で。
派手な特撮やアクションがあるわけがないと予想していたら……な展開でうなる。もう一回すぐに見直したくなること必至。ぜひぜひ。