いかにもレンタルビデオ屋好みなタイトルだけど、原題はSafe House。証人などをかくまうあれです。
主人公のマット(ライアン・レイノルズ……ほれ、スカーレット・ヨハンソンと結婚したいやな野郎であり、離婚してくれたいいヤツでもある)は、CIAの一員として昇進し、工作員になって活躍したいと考えている。しかし現状は南アフリカのセーフハウスの世話係にしかすぎず、くさっていた。
そんな彼のセーフハウスに、裏切り者として知られていたトビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)がなぜか投降して収容されてくる。取り調べの最中に、安全なはずの場所に謎の集団が襲撃し、マットとトビン・フロスト以外は惨殺されてしまう。はたして経験の足りないマットと“人の心を操る”達人であるトビンの逃避行は……
なんか、読めた!って感じでしょ。おそらくはトビンの計略によってマットは翻弄され、しかしだんだん成長していくんだろう、とか。最後はふたりで微笑み合って別れていくんだよな、と。すっかり見たような気になって、別に見なくてもいいかなあと考えていたの。
何者かの襲撃によってシロートに近いCIA職員が孤立しちゃう展開は、ロバート・レッドフォードの「コンドル」で十分じゃないかと。
しかし途中からこの映画は予想とは違う方向に走る。ジェイソン・ボーンのシリーズそのまんまになっていくのだ。っていうかはっきりと二番煎じです、悪く言えばね。撮影と編集はあのシリーズの担当者なので、製作意図はまさしく「色男(レイノルズ)と名優(ワシントン)を使ってジェイソン・ボーンを」だったのだろう。
そのことを批判する人もいるだろうけれど、わたしはかまわない。大のスパイ小説好きとしては、もっともっとやってほしいくらいだ。剽窃がよくないのではなくて、出来の悪い剽窃がよくないわけ、娯楽映画の場合は。で、この映画はなにしろ出来がいい。
ボーンにクールな女性管理職ジョアン・アレンがいれば、こちらは「マイレージ・マイライフ」で、“昼間の国内便のトイレの中でセックスをしたことのある女”を演じたヴェラ・ファーミガ。向こうがスコット・グレンで来たらこっちはなんとサム・シェパードだぜと豪華なことだ。二時間弱をまったく飽きさせずに突っ走る娯楽作。面白かったー。