「ダ・ヴィンチ・コード」は見た。確か読者にリクエストされて見たんだった。それはおぼえてる。
ではラングトン教授シリーズの二作目「天使と悪魔」は?……見た、と思う。トム・ハンクスが主演してロン・ハワードが監督するわたし好みの作品を見逃すはずはない……自信なし。自分のブログを検索。あ、ちゃんと劇場で見てました。コンクラーベのお話ね(笑)
加齢のせいもあるけれど、このシリーズは見終わったあとに何も残さない。娯楽作品としていっそ立派じゃないですか。ラングトン教授には常に時間に追いまくられる事情が発生し、名所旧跡を女性とともに走り回る……充分です。
この「インフェルノ」も、いっしょに見ていた妻が劇場から出て
「あのね、とても面白かったんだけど、×××が○○○する必要はなくて、いっそ最初から△△△すればよかったんじゃない?」
奥様、それ言ったらこのシリーズ成立しないです!(笑)
かように、“悪人”はなぜかラングトンにヒントを与え続け、彼は必死にそのパズルを(観客とともに)解く。っていうか、こちらはキリスト者じゃないのでいまひとつ例によってその謎にコクってものが感じられない。ダンテ、ボッティチェリ、神曲、地獄編……すみません、それ以前にわたし教養がありませんでした(T_T)。
トム・ハンクスは今年も大活躍。おそらく2016マイベスト男優はぶっちぎりで彼だ。「ブリッジ・オブ・スパイ」「ハドソン川の奇跡」そしてこの作品と、どれだけ勤勉な役者なんだか(イーストウッドの早撮りがそれを可能にしたらしい)。
おやおや、勤勉なのは彼だけじゃなくて、主演女優(フェリシティ・ジョーンズ)は来月公開される「スターウォーズ/ローグ・ワン」でも主役やってんのか!がんばるなあ。
っていうか、予告編でそれ見てるのに同一人物だとは夫婦ともに気づきませんでした。しかもあの微妙な人は「最強のふたり」のドリスだったのね!「わたしは何も忘れない」と豪語するラングトン教授はやっぱりえらいっす。
PART2はこちら。
しかしそんな時代背景を描きながら、「トランボ」は決して告発や批判だけの映画にしていない。娯楽映画としてめちゃめちゃに面白いのだ。
だってこの映画の監督は、あの「オースティン・パワーズ」や「ミート・ザ・ペアレンツ」を監督し、あろうことか「ボラット」を製作したジェイ・ローチなのだ。批判覚悟で開き直っている。
まず、当時絶大な権力を持っていたコラムニスト(というかゴシップライター)ヘッダ・ホッパーをヘレン・ミレンが憎々しげに演じていて、彼女がこの映画最大の悪役を引き受けている。実際に、ヘッダは赤狩りの推進役だったようだ。
彼女はトランボの追放に加担し、それどころか彼の復帰を執拗に妨害する。ここでもうひとつのグループが登場する。この映画が弾むのは彼らの登場による。面白い映画をつくるためなら、政治的なスタンスなど知ったことかという連中。
B級C級映画ばかりつくっていたキング・ブラザーズという会社を経営するフランク・キング(四文字言葉を連発するジョン・グッドマンがいつものようにいい感じ)は、「トランボたちを使うと俳優たちをボイコットさせるぞ」という脅しに、バットをふりまわして激昂し(て見せ)「役者なんぞ素人でいい!どうせうちの映画はゴミだ」と開き直るシーンには笑った。
そして、「栄光への脱出」の原作をもってオットー・プレミンジャーが現れる。この、ハリウッドのタブーを次々に破ってきた監督は、ゴリゴリのオーストリア訛りでトランボを挑発する。ほぼ同時にカーク・ダグラスも、自らが製作する「スパルタカス」の脚本を依頼。
ヘッダ・ホッパーはダグラスを詰問する。
「どうしてトランボを使うの?!」
「大きなお世話だ」
と一蹴。こちらも実際にこういう人だったようです(笑)。なにしろ勝負作の監督にスタンリー・キューブリックを抜擢した人なので狂いっぷりも板についている。以下次号。