事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「悲しみのイレーヌ」「傷だらけのカミーユ」 ピエール・ルメートル著 文春文庫

2016-11-28 | ミステリ

その女アレックス」であらゆるミステリランキングでトップに立ったカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの、実は第一作と第三作がそれぞれ「悲しみのイレーヌ」「傷だらけのカミーユ」。アレックスは二作目。

作者のピエール・ルメートルは、これは三部作であり、もうカミーユについて書くことはないと明言している。とすると、これから文春文庫で読もうとする人は、「イレーヌ」「アレックス」「カミーユ」の順に読むことで、この壮大で緻密な(そして血塗られた)物語の完結を堪能することができるわけだ。

順番を変えた文春に文句を言いたいわけじゃないの。アレックスはミステリとしてほんとうによくできていたし、だからこそ他の二作(こちらもとんでもない仕掛けがほどこされていますよ)が刊行できたんだろうしね。まさか60万部も売れるとは思わなかったでしょうが。

ただ、1作目で某人物がどのようなことになるかをアレックスの冒頭でばらしてしまっているため、その人のパートを読むのがしんどいのは確かでした。ルメートルの計算も透けて見えるし。それに、イレーヌのラストを読んだ人が、はたして2作目に素直に手を出せるものでしょうか……あわわわ、ネタばれになっちゃうな。

画家だった母親がニコチン中毒だったために、身長が145センチしかないという、およそ名探偵としては破格なキャラのカミーユは、例によって内省的で魅力にあふれている。やることは無茶ですが。

他にも、大金持ちのルイ、ケチなアルマン、6回も結婚している上司で親友のル・グエンなど、キャラ総立ち。この人間関係が事件にからんできたりもするので、三作一気読みをおすすめします。休んではいけない。すると、最後の最後に、この物語が誰と誰のラブストーリーだったのかが浮かび上がってきて感動必至。ぜひぜひ。

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