ボーン三部作(だから彼が出ない「ボーン・レガシー」はわたしのなかではなかったことになっています)にはひたすら熱狂した。スパイ映画の、そしてアクション映画のレベルを確実にワンランク引き上げたはずだ。
で、待ちに待った続編が、監督ポール・グリーングラス、主演マット・デイモンの黄金コンビで登場。うれしいよー。
ところが、どうもいまひとつ弾まない。
美点は多いのよ。ボーンに個人的な怨恨もある暗殺者(バンサン・カッセル)とのチェイスは、衛星によってCIA本部で徹底的に分析され、じりじりとボーンを追いつめていく緊張感がある。CIAがまるで神のような存在だと誤解させてくれる(思えばこのシリーズは、そうでもねーじゃん、ってことのくり返し)。
前作の最後で心の平穏をとり戻したかに見えたボーンが、トラウマをかかえてベアナックルの賭け試合に出ることで自分を痛めつけているあたりも、説得力ありあり。ITのヒーロー(まるっきりスティーブ・ジョブズかザッカーバーグ)のプレゼンが微妙なのも計算されている。
でも、シリーズの美点をなぜか継承していないのがつらい。
・ヨーロッパの狭い道を常識はずれのスピードで(しかも地図をチェックしながら)走る→今回はラスベガスのだだっ広い道路をSWATの護送車で爆走するが、広いだけに緊張感がない。
・身の回りにある安っぽい小物を利用して敵をせん滅する(2作目のウォッカの使い方が白眉)→今回は最新のガジェットを利用するので工夫が感じられない。
・シリーズのファンみんなが大好きで、ボーン以外の唯一のレギュラーだったニッキー(ジュリア・スタイルズ)を退場させるなんて!
もはや照明次第では悪鬼のような形相となったトミー・リー・ジョーンズと、小娘部下の腹の探り合いや、メインの登場人物のなかでボーンが誰よりもセリフが少ないあたりはうれしいので、続編ができたらまたつきあいます。なかったことにはしないけれども……。