2016年10月号「監査終了!」はこちら。
なじみのない言葉でしょうが、このiDeCoとは個人型確定拠出年金の“愛称”だそうです。所管の厚生労働省が、おそらくは広告代理店あたりにつけさせたのでしょう。絶対に定着しないと思います。
個人型確定拠出年金、というのもどうもわかりにくい。乱暴に結論付ければ、一種の私的な年金のことです。存在自体はずいぶん前からありましたが、これまでは加入できる人が限られていました(自営業者など)。それが、来年の1月から60才までのほぼ全員が加入できることになったのです。わたしたち公務員も含めて。
どんなものかというと
・公的年金に上乗せして給付される。
・加入年齢は60才未満。
・給付は60才から(加入期間が10年にみたない場合はもっと遅くなる)。
・公務員の掛金の上限は月額12000円(将来的には年額144000円の範囲でコントロール)。
・銀行、証券会社、生命保険会社などについて、自分で積み立てる金融機関を選択する。
・運用のリスクは、すべて加入者に帰属。
……説明会を共済組合が開催したのですが、6月に改正法が公布されたのに、肝心の事務手続きについて厚生労働省からの指示が遅れぎみで、「ここからはまだ何とも言えませんが……」的な説明が多く、かわいそうなくらいでした。
さて、わかりやすくするためにメリットとデメリットをあげて比較してみましょう。
【メリット】
・掛金が全額所得控除される
これはでかいですよ。いま年末調整をやっていてお分かりのように、あれだけさまざまな生命保険をかけても控除は最大で12万。でもこちらは掛けた分が全額ですから。
・運用益も非課税で再投資
これは似たような制度であるNISA(少額投資非課税制度)にも導入されています。
・受け取るときに税制優遇措置がある。
実はこれについて公務員はあまり関係のない話ですので、セールストークを鵜呑みにしない方がいいかも。
【デメリット】
・元本割れのリスクがある商品も存在する。
これは当然ですね。責任はすべて自分で負う。やるやらないも自分の選択。
・中途での引き出しに制限がある。
基本的に60才になるまで引き出せません。だからこそ優遇されているのだし、金融機関が目の色を変えているのです。
・口座管理手数料がかかる(山形県は給与引き去りの予定はありません)。
金融によって差はあるけれども月額500円ぐらい。だからこそ金融機関が目の色を……
税金の減少を承知で国がこの制度を推進しているのは、公的年金がおそらく(きっと)これから減少していく分を自分でなんとかしてほしい、という弱気と、マーケットという名の賭場に、国民の目を少しでも向けさせて株価を引き上げたいという山っ気のためでしょう。だから急いだんです。
すでに県庁には金融が入ってセールス合戦開始とか。いずれ、わたしたちの職場にもやってくる。自己責任だから職場は関係ないようですが、でも加入するときに職場から証明をとる必要はあるんです(職種によって掛金が違うから)。まことに老婆心ながら、慎重にね。
画像は「ジャック・リーチャーNever Go Back」主演:トム・クルーズ
財形だの年金だのとはいっさい無縁のアウトローをトムが演じるシリーズ。クレジットカードまでもたないので飛行機に乗るのも苦労しています。わりとストイックな放浪者……あ、これって寅さんじゃん!アメリカの寅さんはマドンナの選択がうまいんだ。毎回よくぞこんなにいい女を。さすが、アウトローやの。どこでナシつけてくるもんだか。
2016年12月期末勤勉手当号「差額の支給日を推理する。」につづく。