2016年10月号「オキナワ」はこちら。
「もしここで賛成したらうそつきと言われても仕方ない。自民党議員が何でもかんでも安倍首相の言いなりではない。それを多くの人に伝えなければならないと感じている」
山形2区選出の鈴木憲和衆院議員(自民党)が、地元の国政報告会で放ったことば。彼はこの発言のとおり、TPP関連法案の採決がある本会議を退席している。
もちろん背景には、県内の農村部を基盤としている彼の選挙事情がある。今年の参院選では、TPPで攻めの農業に打って出ようとした自民党の候補が、反対を唱えた野党共闘の候補に大差をつけられて惨敗したことははっきりと影響しているだろう。
でも、安倍一強時代とされるなか、彼は筋を通した。これはお世辞でも皮肉でもなく立派だと思う。冷や飯を食らうことを覚悟でやったことだし、事実、彼は党農林部会長代理の職を辞している。
当然、自民党は党議拘束を破った若造を処分する……と思ったら
「処分に値しない。処分とはよほど立派な議員にすることだ」(二階幹事長)
と突き放している。処分しない、というかできないのだろう。鈴木議員にはこれからいばらの道が待っているわけだが、ここで処分するほうが自民党に損だという発想ぐらいはあるようだ。
自民党執行部だって忸怩たる思いはあるはず。TPPに反対することで議席を獲得したその政党(2012年のポスターがふるっている)が、手のひらを返すように、というかブレまくってTPP賛成に回るのを、少しは恥ずかしいと思っている……かなあ。
まもなく「永続敗戦論」を特集するけれど、アメリカの属国となっている日本が、米国次期大統領が就任初日に離脱を表明しているにもかかわらず、TPPに固執するのはいったいなぜなのだろう。以下次号。