「この女優ってさ、お父さんもお母さんも俳優なんだ」
DVDを見ていて、妻に。
「え、誰の子?」
「さあ誰でしょう」
「うーん、どっちに似てる?」
「どっちかっていうとお父さんかな」
「………………わかんないわ。だれ?」
「面影あるわ、そういえば」
確かに、石橋静河はどちらにも似ている。ほとんど演技はど素人である彼女を主演の
“母親が自殺したことで死に敏感な人間が、看護師として日常的に死に向き合う”
くわえて
“昼は看護師、夜はガールズバーにつとめることで人間に醒めた目を向ける”
女性を演じさせようというのだ。
そんなリスキーな選択をしたのは石井裕也監督。「舟を編む」「ぼくたちの家族」で魅了し、そして「川の底からこんにちは」で満島ひかりをブレイクさせた(そして嫁にもした……離婚もした)石井裕也。
今回もさすが。お世辞にも器用とはいえない石橋静河の訥々としたセリフまわしが、ある男性(池松壮亮)と出会うことで救われていくドラマとみごとにシンクロ。見終えた途端に、このふたりに幸あれと素直に願う。
数々の賞を獲得した石橋はもちろんすばらしいのだけれど、それを支えた池松壮亮、田中哲司(こないだ、小林薫といっしょに酒田の居酒屋に来てたんですって)、死が身近にあることを軽く演じた松田龍平など、役者がとにかくみんな味がある。キネ旬ベストワン納得。すばらしい作品だ。