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時代は70年代初頭。ということはわたしが酒田グリーンハウスで洋画を見始めたころ。気持ち的にはほぼ地続きです。しかしそのころと現代は確実に変わった部分がある。
エグゼクティブたちの会食が終わると、男性たちはビジネスや政治の話をタバコをくゆらせながら。女性たちは、別室で語らう。しかしこちらの話題は“社交”や“ファッション”だ。つまり、まだ女性たちはビジネスや政治の世界でフロントに立てなかった時代なのである(だからむしろウーマンリブの運動は盛り上がったのだ)。
ワシントン・ポストの社主であるキャサリン(メリル・ストリープ)にしても、前社長だった夫が“事故”(自殺だったようだ)で亡くなったために、家業を継いだにすぎない。それまでは、外で働くことのない専業主婦だった。経営安定をめざして株式を公開しようとするワシントン・ポスト社の役員は「女性経営者は投資家にうけが悪い」とつぶやく。
そこへ、ニューヨークタイムズのスクープが炸裂。同じ日、ワシントン・ポストの一面は(皮肉にも)ニクソンの娘の披露宴を報じたものだった。編集主幹のブラッドリー(トム・ハンクス)は、部下たちに機密文書を手に入れろと命ずるが……
名優ふたりが競演するのだから、さぞやこってりしたやりとりが、と思ったら違った。自分に自信がなく、ビジネスの世界に不安でいっぱいのキャサリンを(受話器をとるときにさりげなくイヤリングを外すなどの小細工もありつつ)メリル・ストリープはむしろ抑え気味に演じていてすばらしい。この人、やっぱり凄い。
そんな彼女が、社運をかけてペンタゴン・ペーパーズを報ずる決断をし、
「Publish,Publish,Publish」
と静かに語ったシーン。そしてトム・ハンクスが
「Run!」(輪転機を回せ!)