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実はこの映画は、若い女性脚本家の作品に女性プロデューサーが着目して製作された作品。だからキャサリンの成長物語であると同時に、彼女の決断をまわりの女性がどううけとめたかの話にもなっている。
裁判所で、敵である政府側の法律事務所につとめる女性がキャサリンに声をかける。
「わたしの兄はまだベトナムにいます。こんなことをわたしが言ってはいけないのだけれど……がんばって」
勝訴したキャサリンには女性たちが群がり(ニューヨーク・タイムズの方にはおっさんたちが集まるのがおかしい)、あたたかく彼女を見送る。
トム・ハンクスが発する警句が最高だ。
「報道に対する圧力を跳ね返すには、報道することだ」
「政治家と新聞記者が、葉巻を吸いながら笑い合う時代は終わった」
かっけー。見ましたか読売や産経の記者のみなさん。
実はこの作品は、スピルバーグが「レディ・プレイヤー1」のポストプロダクションの間にサササっと撮ったものだ。彼とイーストウッドにしかできない早技。もちろん、充実したキャストと、信頼している撮影ヤヌス・カミンスキー、音楽ジョン・ウィリアムズの黄金トリオがそれを支えたのだろうが。
彼がこの映画の公開を急いだのは、やはり時代の空気に当時との類似を見たからだろう。愚劣でメディア叩きに懸命な大統領とその臣下たちの醜さに一撃を加えたかったに違いないのだ。もちろん、それなしにもすばらしい娯楽映画で、今年これ以上の作品に会えるかなあ、と「ブリッジ・オブ・スパイ」のときと同じような危惧を。
さて、ここで映画は終わらない。民主党本部に何らかの目的で侵入者がいたシーンが挿入され、それを指示する人物の声が聞こえる。なじみのその声とは……もうひとつのワシントン・ポストの物語である「大統領の陰謀」特集につづけます。