ああ、日本には役所広司がいる。
「孤狼の血」を見終えて、つくづくとそれがうれしい。柚木裕子原作にあったミステリ部分を最初からかなぐり捨てて、この映画は最後まで東映実録路線のまま突っ走る。なにしろ、オープニングがあの古くさい波ざっぱーんの東映三角マーク。しかもナレーションがいかにも実録系。
あの名優にやくざすれすれの悪徳刑事役は似合わない?何を言ってるんです。彼は「シャブ極道」においてキレッキレのやくざ役をかましてたんですよ。失踪したサラ金業者を探してほしいと警察に来た妹(MEGUMIだって気づきませんでした)と取調室でやっちゃい、やくざから金を平気で受け取るぐらいの演技は役所なら朝飯前だったわけだ。彼でなければできない役って、まさしくここにある。
「仁義なき戦い」の再来と騒がれているが、ベースは菅原文太が暴対を演じた「県警対組織暴力」だろう。笠原和夫脚本、深作欣二監督のあの名作の血は脈々とこの作品に受け継がれている。
松坂桃李、江口洋介、竹野内豊といった、やくざ映画に似合わないキャスティングはみごとに奏功し、彼らの代表作になった。だいたい、あの「凶悪」の白石和彌監督が役所広司を主演にやくざ映画を撮るという話に、役者がのらないはずはない。事務所は嫌がるだろうけれども。
わたしが知らなかった役者たちがすごいんですよ。薬剤師役の阿部純子(「ええやろ、あたしのオメコ、ただで見れたんやし」)、鉄砲玉の中村倫也ってこれから絶対にブレイクするはず。
おっとこれはR15+なんですか。R18じゃないんだ(笑)。びっくりどっきりクリトリス。日本の高校生はしあわせだ。これだけの描写を正々堂々と映画館で味わえるぞ。テレビじゃオンエアできないから映画館に急げ!
主役の象徴である狼が彫られたバッタもんのジッポが、豚の糞にまみれて見つかり、松坂桃李に受け継がれるあたりの泣かせも憎い。孤狼の血は、受け継がれる。興奮しています。今年のベストワンはもう決定だっ!