原作ジョン・ル・カレ、主演フィリップ・シーモア・ホフマン。そしてわたしが世界でいちばん美しい女優だと勝手に認定しているロビン・ライトが共演……どうして見なかったのだろう。2014年にプレシディオ配給できっちり日本公開もされているのに。まあ、庄内では確実に上映されてないですけどね。
すばらしいスパイ映画でした。
ストーリーはこんな感じ。
かつて9.11のテロリストたちがハンブルクを拠点にしていたことから、かの地では各国の諜報機関が入り乱れて主導権争いをやっている。そこへ、テロリストとして指名手配されているチェチェンとロシアの血をひく青年が密航してくる。
“公的には存在しないことになっているドイツ諜報機関”の一員であるバッハマン(ホフマン)は、青年の目的が、銀行家ブルー(ウィリアム・デフォー!)との接触であることを知る。介在したのは人権派弁護士アナベル(レイチェル・マクアダムス)。自転車で常に移動するあたりがいかにも人権派。そこへ、CIAのマーサ(ロビン・ライト)がからんで……
フィリップ・シーモア・ホフマンはのべつまくなしにタバコを吸い(結果的に彼の最後の主演作になったのはそのせいもあるんじゃないすか。なわけはないけど)、ぷっくりお腹とこんもり背中で、例によって小熊のようなルックス。しかしどんどん彼の怜悧な頭脳と冷徹な哲学のために魅力的に見えてくる。
彼からみれば弁護士のアナベルは甘ちゃんにすぎない。
「現実を見ろ」
と迫るバッハマンの凄みはこの映画の最大の取り柄だ。彼のめざすものは、小さな悪を見逃したとしても、さらに大きなテロを防ぐというもの。冷戦時代なら当然のように行われていた“正義”が、はたして今どうあつかわれるかというと……なラストはおみごと。
スパイの世界にも有能な人物もいれば小役人もいる。どっちが勝つかはもう誰も予想できない時代になったのは、忖度とやらでこざかしく動く日本の官僚を見ていてよくわかります。にしても現代のスパイはつらいな。忠誠を誓うトップが、思い切り無能であることが多いので……。