PART1はこちら。
侵略者として描かれるタルシュ帝国がしかし複雑なのだ。破った相手国の自治をある程度認め、有能な人材であれば異民族であっても登用。高い文明と技術力を誇り……どう考えてもこれはかつてのローマ帝国がモデル。彼らの侵略は、他国の民を豊かにするため、というお題目を兵は本気で信じている。
ふう、ようやく背景の説明は終わり。カンバル王は新ヨゴ国にコンプレックスをもっているとか、タルシュ帝国のなかにはヨゴ人もいるとかがわかっていただければ。
さて主人公のバルサは三十才くらい。女用心棒として凄腕だ。彼女はカンバル王によって父親を殺された過去があり、そのために父の友人である「王の槍」ジグロによって育てられ、槍術を学んだ。
バルサを演じるのが綾瀬はるか。ジグロは吉川晃司。このふたりは文句ないです。特に、アクションシーンが圧倒的に多いバルサに綾瀬はるかを選択したNHKは慧眼だ。コメディセンスが抜群の彼女が、実は運動神経がいいらしいことはわたしも気づいていましたよ(自慢)。
新ヨゴ国の王子チャグムがある事情で父親の帝(藤原竜也がいつものようにファナティックに演じています)に殺されそうになるのを救ったバルサは、チャグムの母親(木村文乃)に用心棒として雇われる。弱っちくてわがままなチャグムをバルサは叱り、鍛え上げ、チャグムのなかに宿った精霊の卵を……
画として、バルサとチャグムはどうしたって母と子のように見えるが、その姿が幼少期のバルサと、父親としてのジグロの姿に重なるように撮ってある。原作とは違う構造にしたのは脚本の大森寿美男の意図だろうか。
かつて「クライマーズ・ハイ」「64(ロクヨン)」と、横山秀夫のドラマ化に成功した(映画より面白かったです)彼のことだから、これは期待できる、と……ところが。以下次号。