8月の上映会(20日の金曜日と21日の土曜日ですっ!)のメインは、クリント・イーストウッドの名人技が冴える「硫黄島からの手紙」。
監督:クリント・イーストウッド
製作総指揮:ポール・ハギス
製作:スティーブン・スピルバーグ
クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ
出演:渡辺謙(栗林忠道) 二宮和也 伊原剛志(西竹一) 加瀬亮 中村獅童 裕木奈江
アメリカ人であるイーストウッドが、日本人の側から硫黄島の死闘を描いて見せています。渡辺謙、二宮和也など日本人キャストも期待に応えて好演。さて、渡辺謙が演じた栗林忠道という中将がどんな人物だったかを知るには、彼の“手紙”が最適だと思います。
この人をとりあげた毎日新聞の00年8月9日付【余録】全文掲載。
「末娘のたか子さんは、当時10歳だった。別れの日は門の前で泣いた。お父さんの栗林忠道さんは『たこちゃん、元気ですか』という短い遺書を硫黄島から送った。『お父さんはお家に帰って、お母さんとたこちゃんを連れて町を歩いている夢などを時々見ますが、それはなかなか出来ない事です』
▼『たこちゃん、お父さんはたこちゃんが大きくなって、お母さんの力になれる人になることばかりを思っています。からだを丈夫にし、勉強もし、お母さんの言いつけをよく守り、お父さんを安心させるようにして下さい。戦地のお父さんより』
▼若いころ米国に留学して国力の差をよく知っていた栗林さんは、米国との戦争に勝ち目はないと主張した。そのため主戦派の軍上層部に嫌われ、絶対に生きて帰れない硫黄島守備隊の司令官を命じられたと言われている
▼着任した栗林さんは、まず島の住民を戦火に巻き込まないよう強制疎開させた。掘ればすぐ硫黄ガスの混じった蒸気がわき出る島にトンネルを掘り、要塞化した。そして、できる限り敵を食い止めるから、早く終戦交渉を始めるよう上申した
▼地下の洞窟に立てこもった硫黄島守備隊二万は、押し寄せる米軍上陸部隊六万、支援部隊二十二万を相手に歴史に残る激闘を演じて、全滅した。しかし東京のソファに座った戦争指導者たちは終戦の決断ができなかった。いたずらに時が流れ、沖縄、広島、長崎と、多くの国民の命が失われた
▼重い責任を負わされたらだれでも逃げたくなる。体が逃げなくても、心が逃げれば思考停止になる。だが栗林さんのように踏みとどまる人はいる。いっしょに散歩したたこちゃんの小さな手の感触が支えだったのだろうか。責任から逃れたくなったら、栗林さんの短い文章を思い出すといい。時を超えて励ましてくれる気がする。」
……この硫黄島からの手紙に、現代の日本からどんな返信ができるのか。わたしたちが突きつけられているのはその一点です。
※栗林中将を、意外なほど熱血に演じた渡辺謙は、その後もハリウッドでのキャリアを積み重ね、「インセプション」においては、もう日本人だからどうというレベルではない。
イーストウッドの演出の特徴は、俳優を信じること。ほとんどファーストテイクを採用するあたりはさすが俳優監督らしい。もちろん、そのためには有能な役者の選択が前提になっているわけで、よくもまあ二宮和也を見つけだしたものだ。
この作品をやるんなら「父親たちの星条旗」もやんないと、とわがままを言ったら「上映料が……」うううみんな来てね港座。
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