その3はこちら。
絶妙なキャスティングはつづく。
かつて同じTBSの「私の運命」(大石静脚本)でこってり味のヒロインを演じた坂井真紀が、男子高唯一の女性職員である養護教諭役。むかしはマドンナだったのに現在は「どんまい先生」と呼ばれ、生徒の交際状況に熱中しているのには笑った。
やはり同じTBSの某番組でけなげな子役→青年役だったえなりかずきが平助の兄として登場。新婚の妻は元グラビアアイドルで、やたらにまわりをエロく挑発するのに頭を痛めている。そしてなんとなんと、どんまい先生と不倫関係に……坂井真紀とえなりかずきの不倫(笑)。
生徒で圧倒的にかわいいのは山田・ビルケンシュトック・京子役のトリンドル玲奈。よくCMとかで見かける子だけど、並じゃないギャグセンスの持ち主と読みました。
これだけのキャラがそろっているので、むしろ目立たない主役だが、錦戸亮は受けの演技がすばらしい。ジャニーズ系では木村拓哉以来ではないだろうか。
さて、このドラマにはある映画がしこんであるのにお気づきだろうか。
登場人物たちがみんなローカルFM局の「カバやき三太郎のごめんね青春!」という番組を聴いていて、しかも電話でDJ(生瀬校長がおしのびでやってる)に、ごめんねしたいことを告白するのだが、これは歴然と「アメリカン・グラフィティ」がモデルになっている。
東部に旅立つ青年(リチャード・ドライファス)が、放送局を訪れてそこにいたおっさんに「ウルフマン・ジャックに会いたい」と告げると「彼の声はテープで流しているだけだ」とあしらわれる。
でも去り際にふりかえると、そのおっさんが例のスタイルで「イェーイ!」とかましているのが見えるというオチ。いいシーンでした。
アメグラもこのドラマも、中年たちが若い者たちを必死で応援するというスタイルをとっている。これはつまり、青春を終えた人間たちが、現役世代のつらさ哀しさを少しでも軽減してやろうと努力する点で共通している。クドカンの、高校生へのエールがうれしい、
これは大傑作でした。視聴率は悪かったけどDVDはバカ売れとか。さもありなん。ぜひ。
その2はこちら。
ありえない設定で青春ドラマの王道をきわめようというのだから、明るく無邪気な主人公にすればいいはずなのにクドカンはそうしない。どうしても暗い影をしのばせてしまうんだなあ。
そのかわりに、このドラマには、いつも以上にギャグがてんこ盛りだ。単位時間あたりのギャグの量はこれまでのどんなドラマをもしのぐ。とにかくキャラがみんな濃いので、自然なやりとりができないくらいだ(笑)。
キャスティングも凝りまくっている。
リアルタイムでこのドラマを見ていた妻は、
「あら、この時点でもう共演してたのね」
とDVDを見ているわたしにつぶやいた。
「?」
「ほら、この人は瑛太の弟でしょう?(永山絢斗)、離婚した満島ひかりとつきあってるって芸能ニュースで言ってたじゃない」
そ、そうだったのか。知らなかった。ということは、平助の恋人役と、むかしの恋仇がくっついちゃったわけなのか。現場はひたすら楽しかったろうから、そういうこともあるかもね。わたしは石井裕也と満島ひかりは映画界におけるベストカップルだと思ってたんだけどな。
わたしがうれしかったのは平助のお父さん役で風間杜夫、ヒロイン姉妹の父親役で平田満が共演していることだ。
つかこうへいの諸作、特に「蒲田行進曲」でみごとなコンビだったこのふたりが、ガールズバー(という名のありふれたスナック)のカウンターでしみじみと飲み交わすシーンは絶品。
その風間杜夫が、新しい恋人(麻生祐未!)の出現に罪悪感を抱きながら、亡き妻のことを述懐する演技はひたすらに泣かせた。「木更津キャッツアイ」で小日向文世が、死にゆく息子(岡田准一)になにを話しかけていいのかわからず、和田アキ子のものまねで
「あのかぁねぇをぉぅ、鳴らすのはぁ、あなーたー」
と絶唱したシーンに匹敵する。以下次号。
その1はこちら。
設定が笑えますよ。
静岡県三島市において隣り合う男子高と女子高。男子高、駒形大学付属三島高校は偏差値も低く、曹洞宗系列の仏教系高校。女子高、聖三島女学院のほうは厳格なカトリック系で成績優秀。双方の校長が生瀬勝久と斉藤由貴なのがすでに笑える。
で、女学院は経営難に陥っており、三島高校が吸収する形での統合が進もうとしているが、女学院の生徒たちは三島高校をバカにしているなどでなかなかその話は具体化しない。
なにしろ女学院の生徒は、校則で三島高校の生徒とはつきあうことができないなど徹底している→それには隠された理由があって、それがこのドラマの発端。
14年前の花火の夜、女学院の礼拝堂の屋上で三島高の男子(永山絢斗)と女学院の生徒(波瑠)がキスをしている。そのカップルに向けて遠くからロケット花火をうちこむ男子生徒、これがこのドラマの主人公、原平助(錦戸亮)の若き日。彼はのちに、三島高の教師となっている。そしてその夜、礼拝堂は焼け落ちる……
ここですよね、低視聴率の最大の要因は。
主人公は多くの人を不幸にし(と少なくとも本人は自責の念でこりかたまっている)、しかし事件について口をつぐんでいる。これほど青春ドラマの主人公としてそぐわない人物もめずらしい(笑)。
視聴者はいつ彼の旧悪が暴露されるのかと(彼とともに)始終ビクビクしていなければならない。このドラマでは彼の自責の念の象徴として亡き母親(森下愛子!)が登場し、観音菩薩の姿をとっている。後ろめたさのメタファーだから後ろメタファー(笑)。
統合を前提に、男女共学をお試し的にやってみることになり、平助のクラスと、女学院の攻撃的生徒指導担当の蜂矢りさ(満島ひかり)のクラスがそのサンプルに選ばれる。お互いが敵意むき出しだったが、合同学園祭を成功させようと……
およそありえない設定と展開。しかし、むかしの青春ドラマとはそういうものではなかったか。視聴者だってありえないことを知りながら「青春とはなんだ」「これが青春だ」「われら青春」を見ていたのだし(このドラマのタイトル自体がこれら日テレ青春ドラマをひねってます)、青い三角定規の歌を臆面もなく歌っていたのだ。年齢ばればれですけど。以下次号。
「あまちゃん」で成功をおさめた宮藤官九郎が、その後初めてフランチャイズであるTBSで放ったコメディ。オンエアは日曜9時。
なにしろ「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」「マンハッタンラブストーリー」「タイガー&ドラゴン」「吾輩は主婦である」などで組んだ磯山晶(くどいようだが、美人)プロデューサーとふたたび組み、NHKの制約から逃れてクドカンはクドカンらしいドラマを構築してみせた。
その結果はどうだったか。
視聴率的には大惨敗(笑)。ふたケタに到達したのは初回だけ(10.1%)で、実はわたしもリアルタイムでは見ていませんでした。例によって連続ドラマをワンクール、週に一回きちんと見続けることができない人間なので(大河ドラマでせいいっぱい)、サンプルには適しませんが。
それでは、こんな劣悪サンプル以外の「あまちゃん」に熱狂した人たちは、どうしてこのドラマを見なかったのだろう。
・あまりにも下ネタが多く、日曜9時のオンエアに適さなかった
……と指摘する声もあるようだ。でもこれは本当かなあ。だっていま家族みんなが集う“お茶の間”なるものが存在しているのか。確かに下ネタ、特に高校が舞台なのでお下劣エロなギャグが多いとはいえ、もっともっと不道徳で描写も露骨なドラマはたくさんあるじゃないですか。
・「あまちゃん」が特例だっただけで、磯山=クドカンのコンビだったらこれくらいが普通の視聴率
……これは言えてますよね。クドカンのドラマには、まぎれもなく深い悲しみがあり、「あまちゃん」の場合は、もちろん悲しいのだけれど15分という短さが、その暗さを払しょくしていたというのがわたしの持論です。以下次号。
第三十四回「挙兵」はこちら。
おいおい、と言われることを承知で告白すると、ちょっと泣きました。「犬伏」後半は名作ですね。
わたしたちはこの出来事から400年以上も経っているから、当時の大名の動きについて冷静に論評できる。そのなかで、徳川にも豊臣にもつかないとすれば、真田家のようになるしかないと思える。でも渦中にいたとき、どうだろうこの策は。
もちろん、父親がたてた策(上田城にこもって様子を見る)は次男が言うように「夢物語」だ。そして長男の、実は哀しい献策(敵と味方に分かれる)をこそ、この一族は選択した。
父親はロマンチスト。
長男はリアリスト。
次男はスマート(頭だけは切れる)。
わたしが感動したのは、犬伏の会合を終えて、父親が満足そうな顔をした瞬間。彼はいくさがまた出来ると喜んでいると同時に、ふたりの息子が、自分の思いを超えて成長したことに驚いたに違いないのだ。ある事情があってわたしは兄弟の物語に弱いのだけれど、それを差し引いても素晴らしい回だった。ひとりっ子三谷がよくぞここまで。
前回の視聴率は13.2%と最低を記録した。黄色いTシャツおそるべし。この回とバッティングしなくてよかったよかった。ラストの、ほとんど空疎と言えるぐらいアットホームな男3人にも泣けた。もう、こんな場は二度とやってこないことを彼らは知っている。
わたしは、ここ数日飲みが続いていて、今日も親戚の法事。それでもこの真田丸だけは見逃すまい、と帰ってまいりました(なので今すごく酔ってます)。ま、分家からは歩いて一分なんですけどね。
よく考えたらわたしはこれまで35週間連続して夜の6時にきっちりテレビの前に座っている。大河ドラマをメールやブログでアップするようになってから、こんなことは初めてだ。35週間見続けてきて本当によかったと思える回。前半のコント芝居はなかったことにして(笑)。
今回の視聴率は読めないなあ。17%台後半?
第三十六回「勝負」につづく。
上屋敷で異変が起こり、手はずどおり主人公の新蔵は、中屋敷にいる姫を脱出させ、その逃亡を助ける……その姫が十才であることが序章の最後に明かされるリズム。さすがハードボイルドの名手。
この、姫を故郷(蓬莱屋シリーズでも使われた新潟~山形ルート)に送り届ける逃避行と、その故郷がかかえる謎がシンクロする中盤以降はちょっとゆるくなってしまうけれど、齢八十を数えた志水の新作が読めるだけでもありがたいありがたい。深夜に一気読みしました。志水の作品はやっぱり深夜が似合いますもの。
Danny Boy - Sinead O Connor
PART3「アスリートファースト」はこちら。
「本当につまらない男」
民進党の蓮舫代表代行が岡田代表を評して。このフレーズだけだと意味不明だが、要するに岡田代表の謹厳実直ぶりを揶揄することで、こんな冗談が言えるくらいに仲がいいんですよとアピールしたかったのだろう。
わたしは、だからこそ彼女に失望した。ユーモアのセンスの欠如に。座持ちがいいだけのジジイが、ちょっとしたユーモア(のつもり)で発言してそれが失言につながるというパターンとまるでいっしょじゃないか。
しかしそれ以上に悲しいのは、今回の代表選での対抗馬が前原だったこと。あの党には人材がいないのか。まあ、前原が代表になったら、この党のことはボロクソに言ってやるんで、それはそれでけっこうですが。
救いは、岡田代表の
「妻に言われればショックですが(笑)」
というコメント。変人で知られるこの人のほうが、よほどウィットに富んでいる。
「これを狐につままれたような気分というのか…」
日刊スポーツが夏目三久と有吉弘行が年内結婚、そして夏目が妊娠中と報じたことに、有吉がツィッターで。
ことの真偽はわからないが、いまのところ報じているのは日刊スポーツだけ。事務所(夏目=田辺エージェンシー、有吉=太田プロ)は全否定。そしてワイドショーはこれだけのネタなのにまったくふれていない。不自然きわまりない(笑)。
でもわたしは、これはけっこうな話だと思う。事務所の意向だの、芸能界のルールにしばりつけられて動かないマスコミが多いなかで、ニッカンは少なくとも意地を通そうとしている。
ジャニーズ系の話にしたって、事務所べったりの「女性自身」と、コントロールできない「週刊女性」が違う記事を載せているからこそ、SMAP解散の裏事情が透けて見えるというもの。もっとがんばれ芸能マスコミ……で、今日発売のオヤジ系週刊誌が煽り、夏目は涙の否定。既定の路線ね。
本日の一曲は、「デッドプール」でもギャグのネタになっていたシンニード・オコナーの「ダニー・ボーイ」。すばらしい。
2016年9月号「実力」につづく。
PART2「ラッキーな人」はこちら。
「JOC全体で考えることだと思いますが、『どこまでがアスリートファースト』にすべきなのか、入場行進は役員は一番後ろの方がいいのか、選手に負担のかからないように、より選手が輝ける場所でどのように環境を整えていくことを、指摘を受けた中で考えさせていただく」
リオオリンピック日本選手団の団長だった橋本聖子参院議員の発言。さすが、7度の五輪出場を誇る人だなあ。政治家としてもタフなところを見せている。この発言、なにしろ“何も語っていない”のだから。
オリンピックに政治を介入させるな、などと無邪気な主張をしたいわけではないけれど、アスリートたちが光り輝けば輝くほど、そのアスリートたちを子分あつかいするかのような政治家たちには腹が立つ。君が代のときに特集した森喜朗はその代表。
スタジアム建設やロゴの盗作騒ぎのときに思い知ったように、いつもあか抜けないユニフォームのデザインなど、この人たちのセンスが影響しているんでしょう?
いやそれにしても開会式の演出がフェルナンド・メイレレスだったとは!そうか、「シティ・オブ・ゴッド」で行われた五輪なんだよな。
「性的嗜好がおかしいと思ったことはないか」
高畑淳子の息子(という認識しかわたしはあの人にもっていません)の強姦事件については、例によって犯人の家族を徹底的にマスコミが叩き(上の質問はフジテレビ)、被害者女性への配慮の足りない記事(特に東スポ)が出るなど、予想どおりの展開。
ところが、ここから先は意表をついた。報道する側がボロクソに言われているのだ。弱みを見せればいっせいにいじめにかかるのが昨今の常識だったのに、これはどうしたことだろう。
世間も、少しは大人になったということか。あるいは、いじめにすら飽きてしまったということなのだろうか。少なくとも、世間の空気をマスコミが読み違えていることだけは露わになったと言えるかもしれない。
PART4「つまらない男、つまらない女」につづく。