事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「大菩薩峠」(1960 大映)

2018-05-20 | 邦画

夢枕獏の「ヤマンタカ 大菩薩峠血風録」を読んだので、これは映画だけでも観ないと、とディスカス。何度か映画化されているけれど選んだのは大映版。

三隅研次監督で主演が市川雷蔵。そして脚本が衣笠貞之助という豪華版。大映らしい様式美と雷蔵のクールさ、山本富士子中村玉緒の美しさと島田正吾の殺陣……これらの美点を誇りながら、なお机龍之介のファナティックさにはついていけない。

でもね、夢枕獏の「音無しの構えを物理的に解説する」荒技は、偶然なのかちゃんと一致してました。剣先が相手の……

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勝手に人生相談Vol.10 理想の夫婦~ポッキーマサ

2018-05-19 | うんちく・小ネタ

ポッキーマサ 2016.10.9 IN東根市

Vol.09「愛のない人」はこちら

40代のパート女性。会社員の夫が休日、行き先も知らせずに外出します。隠し事をされるのは嫌です。

私は週末が仕事で、夫は休みが合いません。夫は普段は図書館に行ったり、近くの駅ビルで買い物をしたりするのですが、月に1度ほど、何も言わずに出かけます。行き先や誰と行くのかを聞くと、「会社のようにいちいち報告しないといけないのか」と言います。

一昨年は、職場の同僚と京都へ行くと言っておきながら、アルバイトの男の子と、京都の大学のオープンキャンパスに出かけたことがわかりました。正直に話すと私が怒るから言わなかったそうですが、よその子の面倒をそこまで見るのもどうかと思います。

同じ年の息子は全く気にしていません。「まだ悩んでいるの?」と言われてしまいましたが、うそをつかれるのは悲しいです。

家事も手伝ってくれる優しい夫ですが、何でも言い合える夫婦にはなれないでしょうか。助言をお願いします。(神奈川・B子)

……うわあ。旦那はたまらないだろうなあ。相談をじっくり読むと、B子さんがあの手この手を使って夫の行動をチェックしていることがわかってくる。いったいどのようにすれば、京都にいっしょに行ったのが“同僚”ではなく“息子と同い年の男の子”だと知ることができるのだろう。

B子さんと旦那の性別を逆にして考えればわかりやすいと思う。夫が妻の行動を100%把握したくて切歯扼腕……単なる独占欲の強い男としか。

“何でも言い合える夫婦”かあ。素晴らしいカップルかと一瞬は思える。でも、お互いがお互いの全行動をさらし、頭の中にあることをすべて言葉にする……わたしは少なくともそんな夫婦生活はごめんだ。

B子さんの夫への愛情を疑うつもりは微塵もないが、旦那さんは少なくともあなたの愛情を“束縛”だと感じているはず。にしても、バイトの男の子のオープンキャンパスにつき合うのはちょっと行きすぎだとは思いますね。おそらくは“逃避”だったんでしょうけど。

Vol.11「団塊のプライド」につづく

本日は、さっきまで会っていた人の動画を。

「わたし、芸人なんです」

「え?」

「大道芸の」

「ジャグリングとか?」

「はい。猿回しもやってました」

「ええええっ」

なんかもう面白すぎる話がてんこ盛りなのでした。酒田祭りでなんかやってくれるらしいです。ポッキーマサさんをよろしく。

「明治製菓とか森永のときはこの芸名使えないです」

つかみはOK!

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追悼マーゴット・キダー

2018-05-18 | 芸能ネタ

そうか西城秀樹が亡くなったのか。新御三家の方が先に欠けていくとは。

二十代のころ、職場の先輩と話していて

「で、御三家のなかでは誰が好きだったんですか?」

と尋ねたことがあった。この人はきっと野口五郎かなあとか予想して。

「あたし?舟木一夫」

御三家が違う(笑)

わたしにとって哀しかったのはマーゴット・キダーの訃報。B級映画の華だった彼女が、一気にメジャーになったのはもちろん「スーパーマン」におけるロイス・レイン役。禁を犯して地球を逆回転させるくらいにクラーク・ケントは彼女を愛した。わかる。わたしも、彼女が大好きでした。

そうか、わたしたちは今、クリストファー・リーヴもマーゴット・キダーもいない世に住んでいる。誰も地球を逆回転させてはくれない。

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明細書を見ろ!2018年5月号 現給保障終了。

2018-05-17 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2018年4月号「出勤簿の掟」はこちら

今月は気勢の上がらないお話。何人かの給料袋に、季節外れの辞令書を同封しています。人によって内容は違うのですが、

「平成26年12月県条例第95号附則第8項の規定による給料は支給されないこととなった」

と、なんか他人ごとみたいな文言。こむずかしい理屈を抜きに言うと、引き下げられた給料額を、前に払われていた額までは払いましょうという“保障”をやめるということ。

支給するときは

「平成26年~の規定による給料○○○○円を給する」

と上から目線な文章なのに、それをやめるときは「されないこととなった」と受け身な形。本来なら

「~による給料は、これを支給しない」

なんでしょうが。

まあしかし無理もない面もあって、山形県教育委員会が主体的にこれを決めたわけじゃない。全国的にもほとんど支給されなくなっているので、さすがに勧告に抗しきれなかったのが正直なところ。

実は今回の辞令のなかで

「平成17年12月県条例第103号~による給料は支給されないこととなった」

という文言の人には

“「給与構造改革における経過措置額」の廃止の影響を受ける職員”

として、一種の謝罪文が送付されています。ちょっと紹介すると

「給与構造改革における経過措置額」の廃止の影響を受ける職員の皆様へ

平成18年4月からの給与構造改革における給料月額の引下げに伴い、平成18年3月31日(引下げ前)の給料月額との差額をこれまで経過措置額として支給してまいりました。

当該経過措置額については、本県における受給状況などから、平成26年の人事委員会の報告で「平成30年3月末の廃止が適当」と報告されていたところであり、その上で、平成29年4月1日現在の本県における受給状況や、国や大多数の他県では既に廃止されている状況を踏まえ、昨年10月の人事委員会勧告において、平成26年の報告どおり、平成30年3月末での経過措置額の廃止が勧告され、勧告どおり廃止することといたしました。

県職員の給与は人事委員会勧告が基本ではありますが、皆様の勤務条件を預かる立場としては、これまで受給されていた皆様に与える影響を考えますと、心苦しく、大変申し訳ない気持ちであります。私としては、引き続き職場環境の整備や勤務条件の改善に精一杯努めてまいりますので、何とぞ、ご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

平成30年4月  
                       山形県総務部長 大森康宏

……長々と引用したのは、実はこの“廃止の影響を受ける職員”は本校においてただ一人だけ。そうです、このわたしだからなのです(T_T)。ほんと勘弁してくれよ総務部長。

画像は「世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集」

“世界一”と言われたのも本当なら、“酒田大火の火元”だったのも事実だった映画館のドキュメンタリー。館内の灯りが落ちるとムーンライトセレナーデが流れるオープニングまで再現されている。

10席しかない名画座シネサロンが併設されていたんだけど、そこへの階段が微妙に曲がっていたのは忘れてたし、映写技師が割烹「よしのや」の人だったなんて知らなかったなあ。大火のときに上映されていたのが成人映画「愛のコリーダ」だったのははっきりと覚えていますが。ナレーターは大杉漣

2018年6月号「47と13、あるいは112」につづく

 

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「ふぉん・しいほるとの娘」吉村昭著 新潮文庫

2018-05-16 | 本と雑誌

シーボルトの娘、オランダおいねのお話。吉村昭は徹底的に史実にこだわる人だから、おそらくこれが彼女の伝記の決定版だろう。

秦新二の「文政十一年のスパイ合戦」を読んだことがあったので、フォン・シーボルトが単なる医者ではないことは承知していたが、ここまで確信犯的に日本の情報を収集していたとは。

彼は長崎に滞在し、西洋医学(それは必ずしも最新のものではなかったが)を広めたことでまず歴史に残っている。弟子たちは彼を敬愛し、結束も固い。しかしシーボルトは政治的志向が強く、外交コンサルタントと自らを規定していたようだ。

すっかり忘れていたんだけれど、シーボルトはあまりオランダ語が得意ではなかった。だって彼はドイツ人だから。通詞には「わたしの言葉は方言なので」で通したのだからおそれいる。だから本来は「ドイツおいね」だったの。

さて、ヒロインのおいね。彼女の母親は長崎の遊女。美貌で知られた彼女は、気は進まないながらも“毛むくじゃらで赤い顔の大男”に身をまかせ、娘を産む。

日本唯一の国際都市、長崎にはそのような境遇の“あいのこ”は多く、偏見もあまりなかったようだ。しかし美貌のハーフであり、聡明で医学を志した彼女はどうしても目立っていく。

驚かされるのは、母、おいね、娘の三代の女性が、いずれも男に翻弄され(おいねも娘も強姦され、妊娠する)、同じような苦労をしていたことだ。

妻や娘がこんな屈辱をなめているのに、再来日したシーボルトはのほほんとしていて、なぜ自分が愛されないのかも理解できない。ほんとに男って……

この作品ではおいねはそんな経緯だから男を愛することはない。しかし彼女が登場する大河ドラマ「花神」においては、演じた浅丘ルリ子が……あ、これは極私的大河ドラマ史で。

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勝手に人生相談Vol.09 愛のない人

2018-05-15 | うんちく・小ネタ

Vol.08「同居のリアル」はこちら

19歳の頃、これが愛ということを知りました。

「橋の上で待っている」

と手紙が届き、車で一緒に浜辺へ行きました。その彼が忘れられません。その後、別の人と結婚し、子供もできましたが、愛のあるキスは今の夫とはしていません。夫は、私が持病で苦労して病院に行ったとき、車から降ろそうともしませんでした。他人からは、ご主人は良い人ですねといわれますが、私はどう思えばいいのですか。(69歳・女性)

……これまでは読売新聞に掲載されたシリーズだけど、毎日新聞のも趣深いですねぇ。回答者は高橋源一郎。確かに、恋愛経験がこれほど豊富な人はなかなかいませんしね。彼はこう答えた。

あなたは夫との間に、「愛」と呼べるものがなかったことを残念に思っています。では、あなたの夫はあなたのことをどう考えているのでしょう。もしかしたら、あなたと同じように、

「この結婚には愛がなかった」

とさびしい思いをしているかもしれない。そして、夫もまた、青春時代にあった輝かしくも眩(まぶ)しい記憶を、ときに思い出しているかもしれませんね。パートナーは、自分の鏡でもあるのです。あなたが、夫を不満をぶつけるだけの存在と考えるなら、同じものが返ってくるだけです。

……さすがだ。さすがだけれど、おそらくこの69才の女性は、夫への見方を変えることはなかろうと思う。19才のころにあったエピソードは、おそらくなんの意味もない。現在が不満で不満で仕方がないから、数多くの思い出の中からピンセットでつまんだにすぎないだろう。

50年前にデートした彼と再会することはないと自分でも気づいている。気づいているからこそ、「私はどう思えばいいのですか」という中途半端な相談になっているのだ。

よいご主人だというまわりの評価と、自分の不満のはけ口としか見れない現状の落差。新聞の人生相談において高橋さんはこうとしか答えられなかったのかもしれないが、わたしはこの女性の心性は、かなり貧しいのではないかと予想しています。愛のあるキスをしていない?愛そうともしなかったくせに。

画像は「経世済民の男 小林一三」(NHK)。あ、そうかこれって阿部サダヲ&森下佳子の「おんな城主直虎」コンビだったのね。朝ドラ「わろてんか」に出ていた高橋一生は彼がモデルとか。ここまで直虎か。

Vol.10「理想の夫婦」につづく

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「百年泥」 石井遊佳著 新潮社

2018-05-14 | 本と雑誌

芥川賞受賞作を読むのって久しぶりだなあ。でもなんかわたし向きなのではないかという匂いが……

当たりでした。

海外のIT企業に勤務し、エリートたちに日本語を教える女性がヒロイン。設定だけならおしゃれにも思えるが、彼女は多重債務のために前の亭主に「ちょっと行って稼いでこい」と追いやられたのであり、行った先はインド南部のチェンナイだったというあたりがひねってある。

というか、作者の石井遊佳は現実にチェンナイでいまも日本語教師をやっているのだとか。

そのチェンナイを百年に一度の洪水が襲い、町は水に沈む。ようやく水が退いたチェンナイに堆積した百年分の泥のなかから、さまざまな“記憶”にまつわる物や人が出てくる……

いかにも純文学っぽい紹介になったけれども、全体がブラックなユーモアでラッピングされていて、とにかく読ませる。ちょいと泣かせる大阪万博記念コインのエピソードの直後に、それがなんだとあっさりヒロインが吐き捨てるあたり、ハードボイルドでもある。

ありえたかもしれない出会い、ありえたかもしれない時間が実は無限にあり、それを単に自分が選ばなかっただけ、という思いが全篇をつらぬいている。

だからここに東日本大震災の影を見つけようというのは不毛な行為だ。むしろ百年という単位にガルシア・マルケスを想起した方が有益かと。

この作品で描かれているのは単に

“インドにおいては、富裕層は翼を装着して飛翔して通勤する”

世界を抽出して呈示しているわけ。あ、また純文学っぽくなってしまった。その飛んできたエリートたちは、着陸するときにプリッと糞をひり出すという、まるでいしいひさいちのような世界。作者のコテコテの関西人らしい笑いが炸裂。

大乗仏教とか輪廻とかこむずかしく考えなくても、「純粋に面白い文学」ですこれ。おすすめ。

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「エアポート’75」 Airport 1975 (ユニバーサル)

2018-05-13 | 洋画

大空港」のヒットに気をよくしたユニバーサルが二匹目のドジョウを……って感じだったのかはよくわからない。続篇をつくるにはあまりにも時間が経ちすぎているし。でも構えは完全に二番煎じ。原作はアーサー・ヘイリーだけれどもinspired(インスパイアされた)あつかいなのでほぼオリジナル。

わたしは中学生のときにこの映画をグリーンハウスという酒田の著名な映画館で観たんだけど、ほぼ同時期に「大地震」という、同じようなキャストで撮られたパニック映画が、センサラウンドという音響効果とともに大騒ぎになっていたので、こみで語られていたのをおぼえてる。センサラウンド……なつかしいなあ。グリーンハウスでは前の二列ぐらいの座席をとっぱらって設置してました。要するに重低音をどかどかかましてたわけよね。

さて「エアポート‘75」はある程度はヒットしたみたい。この作品の原題は

Airport 1975

普通、日本では大げさにやるのが通例だから当然この場合

大空港1975

になるはずでしょう?でも当時の配給会社CIC(ユニバーサルとパラマウントを扱っていたので当時の洋画界最強)はそうしなかった。

エアポート’75

うん。かっこいい。

ヒットの多くの部分をこのタイトルが担っていたんだと思います。チャールトン・ヘストンとジョージ・ケネディが出てきたらたいがいの危機は解決できると観客は思うはず。

「エクソシスト」で話題のリンダ・ブレアや歌姫ヘレン・レディ、そして往年の名女優グロリア・スワンソンまでひっぱる、なんか東宝のお正月映画みたいなお祭り映画。

ただひとつ新しいとすれば、主役にいわゆるお姫様女優ではなくてカレン・ブラックを選んだこと。保守的な観客を相手にしていた大空港シリーズも、アメリカン・ニューシネマを無視できなかったってことでしょ。わたしも彼女が出ていなかったらDVD借りてません(笑)。

……いきおいで「エアポート’77」も借りたんですけど、こちらはちょっといくらなんでもな出来でした。

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勝手に人生相談Vol.08 同居のリアル Donald Fagen - I.G.Y. (What a Beautiful World) (HQ)

2018-05-12 | うんちく・小ネタ

Donald Fagen - I.G.Y. (What a Beautiful World) (HQ)

PART7「おとなしい夫婦」はこちら

結婚歴のない50代の事務職女性。約5年つきあった男性と一緒に暮らしたいと思っていますが、そのつもりはないと言われました。

彼は私とつきあう前に離婚し、高齢の母親と同居しています。学生気分で楽しくつき合っていたのですが、彼の母親に介護が必要となり、自由につき合えなくなりました。

私は来年、働いてきた事務所を退職します。彼と介護を助け合い、結婚までいかなくても、寄り添って一緒に住みたいと考えていました。しかし、将来のことを彼に尋ねると、結婚はもちろん、同居も考えていないというのです。離婚したため、結婚に前向きになれず、別居中の子どもにも遠慮しているようです。

彼が好きで胸が苦しくなります。先のことは考えず、このままつき合った方が幸せか、別れる方がお互いのためか、分かりません。(大阪・W子)

前回の「おとなしい夫婦」と真逆のパターン。女性が男性との生活を夢見て突っ走ったら、男の方はその気がなかったと。

W子さんの嘆きも分からないではないが(実はちょっとイラッとは来ています)、男の立場になってみましょう。離婚して、高齢の母親と同居、子どもとは別居している。どのような離婚の経緯があったかはわからないけれど、なんとか生活のサイクルが安定してきたところなんでしょう。いくら好きだと言ってくれる女性だとしても、簡単に自宅に入れられるものかしら。

W子さんの願いは、よく考えると自己中心的なものばかりだ。

・母親の介護のために彼と自由に会えない

・まもなく自分は退職する(時間が出来る、経済的にも不安定になる)

50代の男女なのだからそれなりにオトナの関係だったんでしょう。たまに会い、食事やセックスで時間を過ごす。そりゃー楽しいでしょうや。でもね、同居するってことはその男のだらしない部分を見ることだし、あなたのだらしない部分も見せるってことですよ。その覚悟はおありなんですか?少なくとも向こうにはそこまでの覚悟はないってことです。第一、あなたは介護とはどんなことなのか理解できています?

PART9「愛のない人」につづく

本日の1曲はドナルド・フェイゲンの「I.G.Y.」
彼のソロアルバム「ナイトフライ」に針を落とした(死語)ときの衝撃は忘れられない。なんだこのめちゃめちゃにきれいな音質はっ!と。

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「ヤマンタカ 大菩薩峠血風録」 夢枕獏著 角川書店

2018-05-10 | 本と雑誌

中里介山の時代小説「大菩薩峠」を、全巻(41巻まである!)を読み通した人はまずいないはずだ。三十年にもわたって書き続けられ、しかも未完。なにしろ、あの作品を下敷きにこの新作を著した夢枕獏自身が2、3巻でギブアップしたとあとがきで告白しているくらいだし。

もちろん、盲目の剣豪である机竜之助の名や、“音無しの構え”などのフレーズは有名だし、何回か映画化もされているのでそちらの方でおなじみかも。わたし?もちろん読んだことはなくて映画も観てません。完全にまっさらな状態で血風録を読み始めました。

うわ。めちゃめちゃに面白いじゃないか。もちろん夢枕獏作品なのだから面白くないわけがないのだが、それにしたって560ページを一気読みである。

主役はもちろん机竜之助。そのライバルとして新選組の土方歳三が大々的にフューチャーされている。邪悪で虚無的な竜之助と、なにごとかを成したいのにまだ田舎道場の二流剣士である土方の対比。

クライマックスは4年に一度開催される御岳神社の奉納試合。天下一武道会ですか、青梅オリンピックですかっ!

キャラクターたちにどれだけのドラマを提供できるかが作家の腕の見せどころ。そのドラマの軽重が強さに直結するわけだし。世界でいちばん格闘小説を書いている(そりゃ、確実だ)夢枕獏のことなのでそのあたりの差配はおみごと。

くわえて、音無しの構えとはどんなものか、片腕を失い、もう片方の腕は手首から先がない剣士が使う必殺技とは何かなどが、きちんと物理的に説明されるのだ。

その奇想天外ぶり&合理的なのに爆笑。山田風太郎の忍者小説をほうふつとさせる面白さ。映画化希望!土方歳三役が山本耕史なのはゆずれないとして、机竜之助は……浅野忠信しかありえないな。父親役をビートたけしにすれば「座頭市」の再現だ。

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