星月夜とは、秋の季語で、星と月の出ている夜ではななく、星の光が月のように明るく見える夜のことである。絵画「ひまわり」で有名なオランダのポスト印象派の画家・ゴッホも星月夜を描いている。そんな星が瞬く光景に憧れて星景写真を撮るようになったが、なかなか奇麗には撮影できていない。
そもそも私が暮らす東京では、ほとんど星が見えない。そのため「満天の星」(満天の星空という表現は、重複表現なので間違い)を求めて、人工的な光害の少ない山梨県や長野県まで行くのだが、気を付けたいのが「月」の存在である。月が出ていれば、星月夜のような光景を撮ることができない。しかしながら、街明かりが届かない場所で見る月夜は、表現できないほど美しいことにも気付かされる。
「月」は、日本人にとって昔から欠かせないものとして詩歌や小説に登場しきてきたが、世界中でも月にまつわる伝説や神話があり、月の神秘的な力が信じられてきた。海の潮の満ち引きやウミガメやサンゴの産卵に関係していることは良く知られたことであるが、我々人間にも様々な影響を及ぼしている。月の満ち欠けとバイオリズムは深い関係性があり、満月の夜に犯罪や事故が増えるのも周知の事実である。
月夜を美しく思うのは、月のパワーを体で感じているからこそではないだろうか。
今回は、あえて月も入れた星空の写真を掲載してみた。2018年に信州の開田高原で撮影したものを再現像し、蔵出し写真を含めて掲載した。ゴッホの星月夜には、星が輝く夜空を背景に大きな糸杉が描かれている。糸杉はキャンバスの下端から上端まで描かれており、それは土地と空を視覚的に接続する役割を果たしているが、私は、輝く月の前景に一本のナラの木を、また、ムンクの星月夜と同じように手前には雪景色を配置した。
さすがに月明りによって「満天の星」ではないが、それでも東京の夜空では見ることのできない輝く星々と、薄いオレンジ色に輝く月、そして地上における「生」の象徴とした「一本のナラの木」との組み合わせに神秘の力を感じた。
開田高原では「満天の星」と「天の川」も撮っており、まさに星月夜という光景も見ているが、今や日本人の7割ほどは、街明かり等の光害の影響で満天の星が見えない場所に暮らしているという。「真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり」(夜空を見上げると、砂のように数え切れないほどのたくさんの星。そのなかに、私に向かって光っている星がある。)は、正岡子規の短歌である。私達は、私達それぞれに光ってくれている星の存在すら知らずに、コロナ禍による混沌と混乱が続く今を過ごしてはいないだろうか?
私は、私のために光ってくれている星を探しに、また出かけようと思うが、真の星月夜(星景写真)は、赤道儀を使わない撮影とその現像方法を新たに学んだので、2月中旬頃の月のない夜、夏の天の川で試そうと思う。
参照お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels 及び 533*800 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。
星月夜(開田高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 5秒 ISO 1000(撮影地:長野県木曽町 2018.2.3 21:36)
星月夜(開田高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 6秒 ISO 1000(撮影地:長野県木曽町 2018.2.3 21:47)
星月夜(開田高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 15秒 ISO 1000(撮影地:長野県木曽町 2018.2.3 21:56)
星月夜(開田高原)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 20秒 ISO 1000(撮影地:長野県木曽町 2018.2.3 21:57)
月
Canon EOS 7D / EF100-300mm f/4.5-5.6 USM / 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 640 -2EV(撮影地:東京都自宅 2012.1.05 16:58)
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早くコロナが終息して欲しいですね!
1枚目の写真、いいですねえ。