シリーズ:自演クラシック音楽3.~玉川大学管弦楽団
ベートーヴェン 交響曲第9番 二短調 作品126「合唱付き」 山田 一雄 指揮 玉川大学管弦楽団
ベートーヴェン 序曲「コリオラン」 作品62 山田 一雄 指揮 玉川大学管弦楽団
「第九」として、日本では年末になると恒例行事のように演奏されているベートーヴェン作曲 交響曲第9番「合唱付き」。私も学生時代に11月から12月にかけて何回も演奏してきたので、かつての演奏から第一楽章の冒頭部分と第四楽章(抜粋)を編集してみた。演奏風景や指揮者等の写真を色々と使いたいところだが、著作権上1枚のみの固定で動画ではない。今回は「音」だけに耳を傾けていただきたい。
「第九」において、多くの方が知っているメロディーは、第4楽章の「歓喜の歌」で、これはシラーの詩「歓喜に寄す」(An die Freude)の「抱き合おう、もろびとよ!この口づけを全世界に!」( Seid umschlungen, Millionen! Diesen Kus der ganzen Welt!)をもとにベートーヴェンが曲を付けたものだが、「第九」は全部で4つの楽章から構成されており、演奏時間はおよそ90分になる。(第4楽章だけでも約30分)クラシック好きでなければ、全楽章を聞く機会は少ないかもしれないが、聞いたことのない方は、是非とも全楽章を聞いていただきたい。
簡単に解説すると、第1楽章は「音楽は情熱だ!」第2楽章は「音楽はリズムだ!」第3楽章は「音楽は愛だ!」このようなことを表現していて、聞きながら、それを感じて頂ければ良いだろう。
そして第4楽章。初めの方に第1~3楽章のさわりのフレーズが少しだけ出てくる。そして、その後にコントラバスのフレーズ。このフレーズは、否定を表わしていると言われている。つまり、音楽は、情熱?いや違う。リズム?いや、それだけだけではない。愛?でも足りない・・・では何なのか?
これらの否定のフレーズの後、静かに「歓喜の歌」のメロディーが出てくるのである。そして、大合唱へと続いていく。これら全楽章を聞いて初めてベートーヴェン作曲 交響曲第9番「合唱付き」の意味が分かり、感動できるのだ。
大晦日、または前日にNHK交響楽団の演奏がテレビで放映されるが、その時期その時間に見ることは難しいだろう。CDで聞く場合は、
日本コロンビアから発売されているオトマール・スウィトナー指揮 ベルリン・シュターツカペレの「第九」がお薦め。ありきたりな演奏だが、ドイツらしい風格がある。何と言っても、B&K社の録音用マイクを使用し、合唱付きの大オーケストラの幅や奥行きが的確に捉えられた名録音で、音の素晴らしさは類を見ない。
さて、今回の演奏は、1985年11月に東京厚生年金会館大ホールにて行った玉川大学「第九」演奏会のライブ録音を編集したもの。第九交響曲は、全曲で65分を超えるが、以下の演奏は第一楽章から第四楽章までをおよそ28分にまとめたダイジェスト版である。指揮は、山田一雄(1912年~1991年)先生である。
山田一雄先生は、日本のクラシック音楽界を支えた指揮者の一人で、学生時代に2度、先生の指揮でフルート(首席)を吹いた経験がある。この演奏が最初で、翌年のベートーヴェン作曲 序曲「コリオラン」が二度目であった。ちなみに、山田一雄先生の前年は、山田先生の弟子である石丸寛(1922年~1998年)先生の指揮でベートーヴェン作曲 序曲「レオノーレ」第3番と「第九」を首席として吹いている。
石丸寛先生は厳しかったが、山田一雄先生は、更に厳しかった。一番最初の練習のことは、今でも忘れられない。皆、物凄い緊張感の中で待っていると、扉が開いて先生が指揮台に立った。挨拶もそこそこに、すぐに練習が始まった。小柄で銀髪、メガネの奥に光る眼差し。そして独特のスタイル。はっきり言って、指揮がよく分からない。しかし、その時に奏でていたオーケストラの音は素晴らしかった。先生もおっしゃっておられた。「時々、プロの音がするね。」
迎えた本番。先生は、指揮をしながら唸る。皆も、その気迫にどんどん付いていく。私も4人のソリストにオブリガートで張り合ってしまった。全体的に荒削りの感じで、乱れた音や外れた音だらけだが、指揮者と演奏者、観客が1つになり、ホールの空間に響く「第九」に感動したことを覚えている。
演奏終了後に舞台裏で、楽譜にサインをしていただいた。その時、おっしゃった。「笛さん、大きな音が出てたね。」と。
また以下には、翌年の第九演奏会の時に演奏したベートーヴェン 序曲「コリオラン」も掲載した。この時まで「アルルの女」「モルダウ」「サン=サーンス 交響曲第3番」「ベートーヴェン 第9」の主席フルートを務め、山田先生とは2度目の演奏。そして、この「コリオラン」が学生時代最後の演奏でもあった。(第九は、下級生に譲って降り番)フルート・パートは難しいパッセージがなく、ソロもない。しかしながら、気合を入れて演奏したことを覚えている。これまでの「玉川大学管弦楽団」の演奏の中で一番の名演かもしれない。絶対に忘れてはいけない思い出として大切にしたい。
参照(Youtube動画では、山田一雄先生をご覧頂けます。)
- 玉川の「第九」
- モーツァルト作曲 交響曲第41番 山田一雄 指揮 NHK交響楽団(Youtube動画)
- マーラー作曲 交響曲第一番「巨人」第四楽章 最終部分 山田一雄 指揮 NHK交響楽団(Youtube動画)
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ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」/山田一雄 指揮 玉川大学管弦楽団(1985年11月15日 東京厚生年金会館大ホール ライブ録音)
ベートーヴェン 序曲コリオラン 作品62/山田一雄 指揮 玉川大学管弦楽団(1986年11月21日 東京厚生年金会館大ホール ライブ録音)
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早くも師走で、慌ただしい日々ですが、
「喜びの歌」を聞いて、希望に満ちた明日、そして新年を迎えたいと思います。
やはり、第九は良いですね。
私は、涙が出てしまいます。
機会がございましたら、是非一度、生のオーケストラの演奏を聴いてみてください。