ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ウラクロシジミ

2017-06-18 18:18:57 | チョウ/ゼフィルス

 ウラクロシジミ Iratsume orsedice orsedice (Butler, [1882]) は、シジミチョウ科(Family Lycaenidae)/ミドリシジミ族(Tribe Theclini)/ウラクロシジミ属(Genus Iratsume)のゼフィルス。北海道の南部の一部、本州、四国、九州に分布し、食樹であるマンサク科のマンサク、マルバマンサクの生える山間部の渓谷等に、局所的に生息している。
 環境省RDBに記載はないが、12の府県におけるRDBで準絶滅危惧種に選定されている。

 ウラクロシジミのメスの翅表は、基半部が光沢のない青白色で幅広く黒色で縁取られるが、オスの翅表は、光沢のある銀白色で真珠のような輝きを持っており、その開翅写真を撮影するべく、毎年、生息地を訪れて撮影してきたが、オスの開翅は10m先の葉上であり、証拠程度の写真ばかりであった。ゼフィルスの撮影を行っておられる方々はお分かりだと思うが、翅表が美しいのになかなか撮影できない種は、キリシマミドリシジミと本種である。それは、葉上に止まって開翅はするのだが、その距離があまりに遠すぎることが理由として挙げられる。今年は、画質の高いオスの開翅写真を撮ることを大きな目標とし、生息地における基本的な生態と行動パターンを観察し、羽化して間もない翅の痛んでいない時期を見定めて挑戦した。その結果、過去よりも画質の高い図鑑写真を撮影することができ、目標を達成することができた。(参照:今年の撮影目標
 参考までに本種の行動パターンを記しておくと、地域によって多少の差はあるものの、活動時間は夕方のみで、概ね15時頃から飛翔を開始する。それまでは、食樹や下草等で休んでいるようである。飛翔するのはほとんどがオスで、活動開始後は、しばらく飛翔した後、食樹に限らず開けた場所の葉上に止まり、西日が当たっていると開翅する。テリトリーを見張る行動はない。16時を過ぎ、西日が陰ると活動が活性化し、盛んに飛び回る。その頃になると葉に止まることは少なくなり、止まっても開翅はしない。飛翔しながらオス同士が近づくと卍飛翔をするが、それは僅かな時間だけで、すぐに分かれて様々な方向へと飛び回るのである。
 一方、メスはオスが時期的にほとんど見られなくなてからも見ることができる。その頃は、日中から食樹であるマンサクの周囲を飛び回り、止まると翅を開くという行動をとり、盛んに産卵を行う。参考までに、昨年、撮影したメスの半開翅写真も掲載しておきたいと思う。

 ウラクロシジミは、翅表が真珠のような美しさであるがゆえに、採集者による乱獲が絶えない。本記事においても撮影地域・場所は一切公表をしないのでご了承願いたい。

参照

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/800秒 ISO 2000(2017.6.17)

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/800秒 ISO 3200(2017.6.17)

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/500秒 ISO 3200(2017.6.17)

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/1000秒 ISO 2000(2017.6.17)

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(オス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE F9.0 1/1000秒 ISO 2500(2017.6.17)

ウラクロシジミの写真

ウラクロシジミ(メス)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X / 絞り優先AE FF9.0 1/1000秒 ISO 2000 +1/3EV(2016.6.26)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしい (みき♂)
2017-06-18 23:17:40
こんにちは。
ウラクロシジミ♂の素晴らしい開翅写真、お見事です!
自分も今季は2度ほど産地を訪ねましたが、遠くてどうにか証拠写真程度を撮っただけでした(汗)。
それでも、黄昏時に僅かに開いた翅の隙間から白い表翅を覗かせているこの蝶の幻想的な雰囲気は、見ているだけでもワクワクします。
肢脈まで写っているような開翅シーン、いつか撮ってみたいものです。
返信する
おめでとうございます! (ともきりん)
2017-06-19 18:59:40
こんにちは。

翅脈までバッチリ。やりましたね!!
ウラクロは露出が結構難しいかと思いますが、見事に撮影されていますね!

ウラクロの翅表は、ちょっと病みつきになる輝きですね。
私は今年5回行ってしまいました(笑)

今後の撮影行、気を付けて行かれてください。良い結果が出ることを願っています。

返信する
ウラクロシジミ (ホタル)
2017-06-19 20:58:36
みき♂さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
ブログをいつも拝見させていただいておりますが、
精力的に行動されていますね。
素晴らしいです。
さて、ウラクロシジミのオスの開翅、しかも高画質の写真を撮るということが
今年の大きな目標の1つでしたので、何とか達成しました。
また、羽化したばかりの個体を撮影できたのも運が良かったのかも知れません。
返信する
ウラクロシジミ (ホタル)
2017-06-19 21:03:10
ともきりんさん、こんばんは。
お陰様で、これまで撮れなかった写真を
撮ることができました。
何とか合格点を頂ける成果だと思っております。
返信する

コメントを投稿