食品表示がワイドショーを賑わしています。
まさにワイドショーレベルの話題ですが、どのワイドショーも企業を個別に追求していくだけで、どの番組もどのコメンテーターも構造的な問題ではないかという問題提起はしません。
飲食業界に限らず、売値を高く、売上原価を低くすれば利益は多くなります。誰でもわかる話ですね。
メニューの表示価格を高くしても買ってもらえる、食べてもらえるためにはどうすればいいかというと、地名やブランド、収穫の仕方や保管の仕方、処理の仕方などの付加価値をつければいい訳です。葱ではなく「九条葱」「下仁田葱」「深谷葱」などとつけると値段を上げやすくなります。「気仙沼産のフカヒレ」や「丹波の黒豆」なども付加価値のための表現となります。このあたりも誰にでもわかる話です。
そして表示価格を上げても納得されるようにした後は、今度は仕入原価を下げる努力をします。物品だったらバレる場合もありますが、食材は殆どバレません。食べてわかる人は非常に少ないのです。
だからゴミみたいな肉の屑を集めて結着剤でくっつけて出してもわかる人はあまりいません。肉が柔らかければそれでいいと思っている人がたくさんいますし、それほど外食にお金を使っているわけでもないので、たまに食べるステーキがいい肉なのかそうでないのか、たいていの人がよくわからないのは当たり前だと思います。このあたりも誰でもわかる話です。
したがって、付加価値があるような表現をして、仕入原価を安くするためにその表現とは異なる食材を使用するというのは、飲食業界だけではなく、産業界の構造的な問題であり、ひいては日本の構造的な問題なのであるということを認識しないと、根本的な解決には至りません。
ところが、根本的な解決をしようとするためには政治的、経済的な抜本改革が必要になってきますから、たいていの企業にとって不利益な話になってしまいます。マスコミも例外ではありません。
だから報道しない。構造の問題だと、日本全体の問題なんだと、誰も言わない。
そして庶民はマスコミに誘導されて、この件が構造の問題であることを認識せず、個別の企業の倫理の問題に矮小化して捉えてしまいます。
総理大臣が危険極まりない原発を他国に平気で売ることのほうがよほど問題だと思いますが、それは問題にされません。食材の偽装による被害者よりも原発事故の被害者のほうがよほど甚大で深刻だと思いますが、やはりそんなことも報道しません。原発被害者はいつまで経っても避難所から抜け出せず、亡くなった人は浮かばれません。
日本はいつまで経ってもこんな調子です。