日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

貫井徳郎著「失踪症候群」

2012-06-26 | 読書
週末に読んだ一册
貫井徳郎著「失踪症候群」双葉文庫



1995年単行本で出版されて、’98年に文庫化
2010年で第31刷、最後のページには簡素な文字だけ



初版年と重版はカバーに書かれていた。

この症候群シリーズは「失踪」「誘拐」「殺人」と続くが
私はこの失踪編が読み始めの本となる。

主人公の刑事からして不思議な存在だ
警視庁刑事部-人事2課!所属
若い女性職員に憧れられる容姿と、課内で浮いている忙しげな姿

事件ではなくとも、きな臭さを感じた他の部署から内々に解明を依頼される特異な存在
外部スタッフとタッグを組んで事件の解決に当たる。
外部スタッフたるや
工務店の現場作業員、元刑事の探偵、托鉢にいそしむ坊さん
主人公の環は刑事か?疑いつつも粛々と物語は進む。

若い人達が親元から身を隠し、行方知れずとなるが
介在していたのは成績不良な不動産の営業マン
犯罪一歩前の細工を施し、周囲から身を隠して生きたい若者に入れ知恵をする。

オウムの最後の指名手配犯達が逮捕されたが
指名手配にならなくとも名前を変え新しい境遇で暮らしたい人達がいた。
オウムのサリン事件が起こる前の出版だが
バルブがはじけた後の不安な社会を反映させたのかもしれない。

事件性が薄い行方不明者が一つの線で結ばれ、犠牲者がでる。

歯止めが効かない、パンクな若者達
見境なしに殺気立ち、たった今迄友人だった人を惨殺する。
人の心よりも獣の(ケモノに悪い)生きようの数人。
心を凍らせるシーンがある。

手に汗握る1册でした。

巻末の解説にも驚いた。
「自閉する匿名者たちの物語」佳多山大地
井上陽水の「夢の中へ」の詩がでて、
陽水のマリファナ事件が書かれ、詩がドラックソングと指摘し
数人の名前が挙がる。
調べると佳多山大地はミステリー評論家のようだが
この本の解説は本文を逸脱し過ぎていないか?
高揚して読み終えた頭に水を差された気がした。
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コメント
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