日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

貫井徳郎著「修羅の終わり」

2012-09-26 | 読書
貫井徳郎著「修羅の終わり」講談社文庫 
1997年刊行の文庫版

文庫本にして厚さ33㎜!文庫本にして1,095円!(税別)
超長編、アマゾンで取り寄せた1冊



物語は3人の男性を取り巻く事件
最後に一つに収斂して目出たく解決か?と読み進む。

悪徳刑事、
身体の中の蟲が騒ぎ喜ぶ時の快感に酔いしれその時を待つ。
国家公務員でありながら己の欲望のままに突き進む
やがて陥れられて、自ら破滅に進む。

公安刑事、
公安の中の秘密組織「桜」になる為に過酷な授業を受け
偏った正義感を持ちつつ、人間としての尊厳と市民を貶めても
国歌の為なら受け入れ、若者達を陥落させる。

記憶喪失の若者、
歌舞伎町で自分の名前、住処など記憶の全てをなくし途方に暮れる。
たまたま声をかけられた女性の家に転がり込み
徐々に過去の記憶を取り戻す。

3人の行いが順番に巡り
3人が一つになる事なしに破壊、破滅で終わる。

学生運動が終息した1970年頃、その後の過激派に依る爆発事件を下敷きに
公安が隆盛を極めた(多分)時期の物語。
今に比べると、人々が荒れ狂っていたし
マスコミや民衆の規範がまだ成形されていなかった時期だったのだろうし
警察権力が大手をふるっていた頃
現実はどうだったか知る由もないが
国家権力が大手をふるう時は、民衆がないがしろにされる。

公安は「国家の為」と人間としての常識をなくし
人達は嫌々ながらスパイへと落ちる。

途中3人の登場人物が4人になり交錯するかに見える仕掛けもある。


こんな世界もありか?と思いつつ
恐(こわ)面白いで一気読みをさせられる「修羅の終わり」でした。
コメント
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