安倍晋三総理を独裁者のように批判する人たちがいるが、官僚組織を無視できず、与党自民党の意見にも耳を傾けざるをえないわけだから、そこまでの権限があるわけがない。喫緊の課題である憲法改正にしても、遅々として進まず、歯がゆくて見てられない。忘れてならないのは、民主主義の大切さを説いたルソーですら、独裁官を認めていることだ▼「法のもつ硬直性は、それが事件のなりゆきに順応することを妨げ、ある場合には、法を有害なものにすることもあり、また国家が危機に陥ったときには、法によって国家の滅亡を招くこともありうる。秩序や手続きの上のてまは、ある程度時間的な余裕を必要とするが、時には事情がこの余裕を許さないことがある。立法者が予想しなかったような事情はいくらも生じうるし、人はすべて予見できないと感得することこそ、欠くことのできない先見の明である。だから、政治制度を確固たるものとしようとして、制度のもたらす効果を停止する権限まで、取りさってしまってはならない。スパルタさえ、その法律を停止させてしまった」(『社会契約論』平岡昇訳)▼独裁官が権力を行使するのは一定の期間に限られるとはいえ、国家存亡のときには権力の集中が不可欠である。もし中共が尖閣を含む沖縄に侵略してくるようなことになれば、政治指導者に全権を委任するしかない。東アジアの平和は破られつつある。今こそ最悪の事態に備えるべきときなのである。
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