経済学については門外漢だが、ケインズが見直されてきているのは、漠然とながら理解できる。ここにきて市場原理主義が行き詰まつてきており、その象徴がトランプの登場なのである▼1926年に出版されたケインズの『自由放任の終焉』(宮沢義一訳)の文章は、未だに色褪せていないのではないだろうか。「私としては、資本主義は、賢明に管理されるかぎり、おそらく、今までに現れた、いかなる他の制度よりもいっそう有効に経済目的を達成するのに役だちうるものであるが、それ自体としては見るかぎり、資本主義は多くの点できわめて好ましくないもののように思われる。われわれの問題は、満足のゆく生活様式というものに関するわれわれの考えに逆らうことなしに、できるかぎり効率の高い社会組織を創り出すこと、これである」▼ケインズはそれを実現するための思想として、独自の経済学を提唱したのである。しかし、そこで危惧したのは「ヨーロッパには、行動に移る手段が欠如しており、アメリカには、そのための意志が欠けている」という事実であった。第一次世界大戦後のイギリスの果たすべき役割があると主張したのだ。現在の世界とまったく同じではないか。そのケインズの言葉を受けて、日本の経済学が金字塔を打ち立てるべきなのである。資本主義の先頭を走っているのは、アメリカやヨーロッパではなくて、我が日本なのだから。
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