ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

国宝「柴門新月図」は19人の禅僧が絵と漢詩で綴ったもの 【藤田美術館シリーズ-Ⅴ-】

2023-03-02 14:56:04 | 美術館

「月」を題した序文が書かれたパネルがスポットライトに照らされていた。「夜がまだ暗闇だったころ 地上を照らすのは空に浮かぶ月でした ・・・・」という出だしで綴られていた。

 

 

そこから藤田コレクションがはじまる。最初の作品が国宝「柴門新月図(さいもんしんげつず)」だった。絵と複数の漢詩の両方が書かれ、絵と詩が密接に関わりあっている「詩画軸(しがじく)」という一服の掛軸。これが国宝作品というのは門外漢の私には理解不能である。多くの人が一つのテーマに、それぞれの詩を寄せているものとして貴重で珍しい日本の文化財産ということから国宝に指定されているという。

 

むかしは、よく禅宗系寺院などで禅僧たちが修行の一環として「詩会」を催し、同一テーマで詩や絵を描いていたといわれている。この柴門新月図は、中国の杜甫の詩「南鄰」に因んで送別をテーマに漢詩が18首詠まれ寄せ書き風に書き綴られたものである。

藤田美術館の解説では、序文に「柴門新月の図に題して、南鄰(なんりん)の故友に寄せる詩の序」と書かれているという。

 

この18首は、応永12年(1405年)に18人の南禅寺の禅僧が詠んだ詩であると記されてある。3首以外すべての自筆で署名し落款印が押されている。この作品の最後の句が「白沙翠竹 江村の暮 相送れば柴門に月色あらたなり」(訳 白い砂 緑の竹 江ぞいの夕暮れ 互いに見送れば 柴で作られている粗末な門に月があらわれた)。この詩が「送別」の代表首として結びに使われている。

これらの詩を読んで一人の画僧が絵を描いたのか、絵を参考にしながら18首を詠んだのかは分からないが典型的な詩画軸だろう。

 

ひとつ不思議ことに、この作品名が「柴門新月」とあるが、新月というのは月の満ち欠けの中で初めの月のことをいうので見えない月のはず。しかしながら絵からして満月をイメージしている。最後に「月色新たなり」という最後の一節から想像すると送別の詩としてやはり満月というとになる。満月を意味しながら新月と表現したのだろうと想像する。

 

 

 

リポート&写真 /  渡邉雄二 参考資料 / 藤田美術館解説文

 

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雪村、悟りを開いた「釈迦」を描く 【藤田美術館シリーズ-Ⅲ-】

2023-02-06 11:18:53 | 美術館

 

カードで決済を済ませたあと、スタッフから各作品の解説がスマホで聞けます、という案内があった。QRコードを読み込めばそれだけでOK。イヤホンを持っていたので作品の前に立ち、スマホに読み込んだ各作品の情報をタップすれば解説が流れてくる。このような操作が得意でない私でも便利機能に助けられ作品を堪能した。

 

トビラを入った瞬間、「暗ら」という心の声が発せられた。我われ世代(私だけかも)では見えにくい展示室というのが第一印象だった。まず、最初の作品の前に行くと作品にスポットの光があたり耳に作品の音声ガイドが流れる。作品に集中できる雰囲気づくりの演出だったようだ。

 

展示作品にテーマが掲げられてあった。「緑」「僧」「輝」「装」の4つで、「装」は3月からということであった。テーマによって少し期間が異なる展示スタイルのようである。作品すべてがスマホに限り撮影(フラッシュなし)が可能である。但しガラス張りではあるが、不思議と光の屈折なしで撮影ができる。

 

すべての作品を紹介したいが、知識が乏しいので何点かに絞って掲載しようと思っている。その第一弾が「僧」をテーマにした作品群の中で、室町時代の後期に活躍した画僧・雪村(せっそん)が描いた「中釈迦左右梅竹図」という三幅対の掛軸。中央幅には釈迦が描かれ、左には曲がりながら鋭く上へ伸びる「竹」、右には「梅」、そして中央幅には釈迦が描かれている。

解説によると、雪村が描いている釈迦は悟りをひらいた姿を描いていると言われている。それは、頭頂部の盛り上がりや、白毫(びゃくごう)と呼ばれる眉間の白い毛、足の甲が高くなっているなど、また、衣が粗放で太い墨線で表現されるのに対し顔は繊細な線で表されている。

 

悟りを開いたあとに、体にいくつかの悟りの特徴が現れるといわれている。これは古代歴史の中で伝え継がれているものらしい。その真意は全く分からないが、雪村は強調して悟り釈迦を描いている。

鋭く天に伸びる竹に梅を両幅に釈迦の凛々しい姿を描きたかったのだろう、と勝手に推測している。リアリティあふれる釈迦の姿に親しみを覚える。心に残る三幅対の作品であった。

 

 

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

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