ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

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いまに継承される祇園の「手打」の儀式 【八坂神社新嘗祭Ⅱ】

2022-11-26 14:38:53 | 伝統文化

 

「手打」と聞けば、誰しも「そば」を想像するが、今回は、そばの話ではない。

400年以上前の京都で行われていた歌舞伎役者と劇場との間の契約締結のための調印式のことが手打といわれていた。その手打が少し形を変え、いまも祇園のしきたりの一つとして脈々と継承されている。

いまに伝わる「手打」は、京都の限られた地域、つまり祇園という場所で慶事の伝統的儀式として長い間続けられている。江戸時代に入り、歌舞伎の顔見世の招き看板も上がり、歌舞伎役者などが芝居小屋入りするのを迎えて、馴染みの人々が盛大に「手打」を行っていた。
これが、いまの祇園の芸妓さんの「手打」の元になっている。芸妓さんの「手打」は舞ではなく儀式のひとつとして継承されている。 

その「手打式」は十数人の芸妓さんが黒紋付姿に、笹りんどうの紋の手ぬぐいを細長くたたんで頭にのせ、紫檀の拍子木を打ち鳴らしながら舞台上がっていく。その中に「木頭」とよばれる人が音頭をとり、それにあわせ芸妓さんたちが唄を歌いながら登場する華やかで雅やかな儀式である。

 

このたびの「八坂神社新嘗祭」の奉納では、井上八千代さんの倭人奉納の後に手打式が行われた。黒紋付姿の芸妓さんの一糸乱れない、舞殿までの歩く姿がひときわ目立った。そして柏子木の音が騒めく境内を一瞬に静寂の世界へいざなった。

 

 

 

 

 

 

 

リポート&写真/  渡邉雄二

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

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懸装品や錺金具に数々の生き物が飾られている 【祇園祭】

2022-07-21 15:49:20 | 伝統文化

    大船鉾の軸先に飾られる竜頭が大丸京都店のウインドーにディスプレー

 

祇園祭の前祭の山鉾巡行が17日に行われ、後祭に引き継がれた。その後祭の山鉾建てが18日から行われ、本日21日から23日までが宵山。そして24日はクライマックスの山鉾巡行。11基が御池通から河原町通を南下し四条通を巡行し、また、傘鉾や馬長稚児、児武者などは四条通を巡行し八坂神社へ。

24日は還幸祭として3基の神輿が四条御旅所を出発し八坂神社に還幸し、神霊を本社に戻す。そして31日に八坂神社で疫神社夏越祭が行われ、鳥居に大茅輪を設け、参拝者は茅輪をくぐり、厄を祓い護符を授かる。この夏越祭を最後に1カ月の行事が終了し祇園祭の幕が下ろされる。

 

三年ぶりの山鉾巡行ということで、大丸京都店では、京都新聞の協力のもと、祇園祭をより

知っていただこうと懸装品や錺金具などに施された動物をパネル展示で紹介。その写真(パネルを複写)を紹介する。

動く美術館と称される山鉾を飾る「懸装品」は祇園祭の見どころひとつである。京都の絵師が下絵を手掛けた懸装品や、海外から伝来した織物など数多くの装飾品を飾り、それぞれの山鉾が競うかのように飾りたてる。

 

その中には、たくさんの生き物が存在し、その数130種類以上といわれている。めでたさを象徴する鳳凰や龍といった空想上の珍獣たちが飾られている。それらは山鉾ならではの豪華絢爛の装飾に一役を担っている。それを楽しむのも祇園祭である。

 

 

大丸京都店に展示されていたものを改めて紹介する。

  • 蝙蝠 木賊山

木賊山の欄縁金具には黒漆仕上げの蝙蝠。金の雲の中を舞い幸福を呼ぶ縁起物とされている

 

  • 鶴 放下鉾

屋根の下の欄縁金具には鶴が飾られ、めでたい縁起物として飾られている

 

  • 蟷螂 蟷螂山

からくり仕掛けの蟷螂は愛嬌たっぷりに飾られている

 

  • 虎 保昌山

円山応挙の下絵で虎が2匹刺繍されている

 

  • 飛龍 太子山

飛龍の錺金具は迫力がある

 

  • 鶏 函谷鉾

関所・函谷関で斉の君子孟嘗君が家来に鶏の鳴声をさせ開門させ難を逃れた故事にまつわり鶏を刺繍に

 

  • 兎 月鉾

屋根の下の欄縁金具には神聖なものの象徴として兎が飾られている

 

  • 鷹 鷹山

200年近くぶりに巡行復帰。懸装品は新調し鉾の名前にちなんで鷹が刺繍された

 

  • 鳳凰 長刀鉾

鳳凰は空想上の生き物で縁起物として数多く使用されている

 

  • 麒麟 山伏山

鳳凰と同様に、空想上の生き物として多く刺繍に使用されている

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 写真/ 大丸京都店で展示されてあるパネル展示を撮影  資料/ 京都新聞祇園祭特集 

 

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若冲の旭日鳳凰図をもとに製作された「長刀鉾」見送りが初お目見え

2022-07-16 15:20:52 | 伝統文化

明日17日が3年ぶりに行われる祇園祭の前祭のメインイベントである山鉾巡行。その山鉾の先頭を立つのが「長刀鉾」。午前9時に四条烏丸を出発。最初の見どころは四条通と麩屋町の交差点に張られたしめ縄を稚児が切る「しめ縄切り」。

そのあと四条通を東へ進み、四条河原町の交差点で第二の見どころが山鉾の迫力のある豪快なターンである。そして河原町通を北へ進み、再び御池の交差点でターンをする。この場面が山鉾巡行の最大のクライマックスで多くの人の目が釘付けになる。

 

伊藤若冲の「旭日鳳凰図」の原図をもとに製作した見送り

 

このたび、巡行の先頭を行く長刀鉾の背面の飾りものである見送りが新調され、今回の山鉾の最大の見どころの一つになっている。この懸装品が、2016年に長刀鉾保存会設立五十周年を迎え、またその年が同時に、江戸時代の絵師、伊藤若冲誕生三百年にあたり、伊藤若冲の「旭日鳳凰図(宮内庁三の丸正蔵館蔵)」の原図をもとに見送りが製作されることになった。

 

縦約3.5メートル、横約1.8メートルのつづれ織りで、朝日が昇る中、雌雄の鳳凰が力強く羽ばたくさまが絹糸や金糸を使って描かれている。美術工芸織物を手がける川島織物セルコンが約3年かけて製作し、若冲の筆遣いや微妙な色彩を再現した。

その見送りが巡行の際にお披露目される。筆者が取材した日はまだ懸けられてなく、明日の本番に控えている。

 

奇想の画家として人気が高い伊藤若冲(1716-1800)は京都、錦市場の青物問屋『升源』の長男として生まれたが、商売には興味がなく絵を描くために家督を弟に譲り、早々と隠居を決め絵に専念。しかし隠居後も町政に関わりをもち、錦高倉市場の開発には尽力したようである。

京の町衆の祭である祇園祭、若冲は京の町衆の画家である。意外なことに今回初めて相互に接点をもった。若冲の絵が山鉾に使われたのは長刀鉾が初めて、この組み合わせが今年の祇園祭で実現した。

 

この記念すべき見送は、絵が決まってから織下絵の制作、配色、試作などを経て、完成までに3年間かかった。細かな図柄部分はベテランの織手が二人がかりで一か月に8cmほど。使用した色数は800色以上。裏目を上にして織るため、小さな鏡で図柄の織り上がりを確認しながらの作業。日本文化を後世に伝え継ぐ技術の緻密さには驚かされる。

気高い鳳凰の姿は長刀鉾の宝として、未来に言い伝えられることであろう。

 

若冲の見送り以外の懸装品は室町~江戸時代に当時の町衆が

ペルシャや中国などから輸入した逸品織物を使用

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 最初の写真は、長刀鉾保存会HPのものを転載。文章の一部は保存会HPやウィキペディアを参照

 

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「菊水鉾」の4面の幕、狩野岑信の七福神絵巻原画を川島織物が製作

2022-07-15 14:47:11 | 伝統文化

               数年前の菊水鉾。前掛けのみが七福神(菊水鉾画像を転載)

 

前回紹介した「白楽天山」に続いて、祇園祭Ⅱでは「菊水鉾」を紹介する。この菊水鉾は5年前に鉾再建60周年ということで、懸装品の前掛け、後掛け、胴掛けを一新することになり4年がかりで完成し4面すべてが揃いお披露目となった。

その懸装品の新しい絵柄として登場したのが「七福神」。この七福神と菊水鉾との結びつきは、菊水鉾を有する地域は現在、「菊水鉾町」という地名だが、古くは「夷三郎町」といい、町に夷社があったことから七福神を使うことになったようだ。

これに因んで、江戸前期に御用絵師として活躍していた狩野岑信(かのうみねのぶ)が描いた「七福神絵巻」(板橋区立美術館蔵)の原画をもとに4枚の幕に七福神が表現されることに。

 

取材の際に前掛け、後掛け、胴掛けを見て、それぞれの神様を確認したが、ゑびす神が見当たらない。七つの神様が揃ってその地域や菊水鉾が守られ末永く繁栄していくものである。それなのに肝心の「ゑびす様」がいないのに気づき、保存会の長老に尋ねると、長老は「ほら、あそこに」と前掛けの上の方を指で示した。「どこに?」と聞き返すと長老は、半ばあきらめ口調で「わからんやろーなぁ!」と。

こんなやり取りがあったあと、見てのとおり、前掛けは小槌を振る大黒天だけのように見えるが、実は、左上の舟と烏帽子、釣った鯛が魚かごから見えている。あの鯛がゑびす様だとはなかなか想像しにくい。

このように、持ち物などで、その人物を想起させる表現方法「留守文様」という。この手法をつかった、なんとユニークな前掛けとなっていた。

 

木槌を振る大黒天と左上に鯛が描かれ、それがゑびす様

前掛けの左上を分かりやすく。魚かごに鯛が・・。これをゑびす様とした(KAWASHIMA storiersより)

 

左面の胴掛けは、寿老人と福禄寿が描かれ、近くで見ると絵画そのままに濃淡や筆遣いなどが再現されている。右胴掛けには毘沙門天と弁財天。そして後掛けの見送りは布袋尊である。4枚に共通して、これらの七福神を囲む枠は、菊をあしらったデザインを施し、漁業の神様であるゑびす神を表す波文とあわせ菊水の意味を込めている。

 

左面の胴掛けには寿老人と福禄寿

右胴掛けには毘沙門天と弁財天

後掛けは布袋尊

 

これら4面は約500色の色糸が染め出しされ、綴織技法で4年の歳月をかけて製作された逸品である。保存会や板橋区立美術館、そして実際に製作した京都の織物メーカー、川島織物の最高のテクノロジーが融合しできたもの。未来に向けてさらに伝統が築かれ、後世に受け継がれていくのを目のあたりにした。

 

鉾の天井には優雅描かれている

車輪の中心には菊の御紋があしらわれている

 

山鉾巡行を見る機会があれば、ぜひ菊水鉾にもご注目ください!

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 前掛けの写真の一部は川島織物セルコン「KAWASHIMA stories」より

 

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「白楽天山」の見送りは、手織錦の「万寿山之図」 【わたしの祇園祭Ⅰ-<白楽天山>】

2022-07-14 11:49:44 | 伝統文化

 

祇園祭のハイライトといえば、やはり山鉾巡行だ。山鉾は、前掛け、後掛け、胴掛けの懸装品(けそうひん)や錺金具(かざりかなぐ)をまとい、コンチキチンのお囃子を響かせながら、音頭取りと曳き手が一体となって都大路を練り歩く姿はいつ見ても圧巻。

華やかな懸装品の中には重要文化財などもあり話題を集めている。伊藤若冲、円山応挙、尾形光琳や江戸狩野派の高名な画家の原画を織り上げた懸装品などを見送り(山鉾の後ろに飾るに懸装幕)に飾っている。

 

それらに魅せられ、一部の山鉾保存会を訪ねた。その第一弾が「白楽天山」。前掛けはトロイの木馬で有名な「イーリアス」。16世紀にベルギーで製造されたゴブラン織りのもの。なんといっても見応えのあるのが、見送りが手織錦の「万寿山之図」。1953年に京都出身の染色家の山鹿清華氏によって製作されたものである。

 

           見送りが手織錦の「万寿山之図」

 

山に乗るのは、中国・唐の詩人「白楽天」と「道林禅師」が禅問答する姿を再現した像。

白楽天が、老松の上に住む道林禅師を訪ねる場面を表している。白楽天は、白地の衣装に唐冠をかぶり、笏(しゃく)を両手に持ち、道林禅師の答えを承る姿勢で立つ。

また道林禅師は、紫衣と藍色の帽子を着け、手には数珠と払子(ほっす)を持ち、白楽天から仏法の大意を問われた道林禅師が「悪いことをせず良いことをすること」というと、白楽天は「そんなことは子供でも知っている」と答えた。道林禅師は「その通りである。しかし八十歳の翁でも行い難いことではないか」と説かれ、白楽天は感服する。

白楽天の求道心にあやかり学問成就の御利益があるとされる山となっている。(白楽天山保存会のHPの一部を参照)

 

          白楽天と道林禅師

 

両師の問答から生まれたこの「白楽天山」の取材中に、市内の小学生が課外学習として保存会を訪ねてきた。人間形成や学問成就の山ならではの光景に、些細なことだけど祇園祭の意義を感じた。

 

           子供たちが興味深く耳を傾けていた

 

 白楽天山の骨組み、このあと懸装品などが飾り付けられる

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

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