3年前の秋分の日、高野山に登った。
どこのお寺さんでもこの日は彼岸会が行われる。ここ高野山でも壇上伽藍の金堂で彼岸会の読経が響いていた。たまたま金堂の入口で多くの信者さんが、その読経を聞きながら手を合わせていた。筆者もその片隅で皆さんと同じように手を合わせた。声明(しょうみょう)を聞くが如く、読経が体内に沁みわたるようだった。
金堂前の椅子に腰をかけている一人の僧侶が目に入った。穏やかな表情で私を見つめているので声を掛け、しばし歓談させていただいた。人を受け容れる包容力が笑顔から溢れていた。タイの仏教僧で、数日間、高野山に研修で滞在しているとのことだった。
日常にない時空に身を置くとなぜか心がウキウキする。そういう場所がいくつかあるというのは幸せである。