「ふたり」を見終わったとき、会場から大きな拍手がおこった。映画のあとに拍手が鳴る光景はそんなにあるわけではない。今回の「尾道映画祭」という舞台の最後の上映作品に対して惜しみない拍手が会場に鳴り響いた。
会場内の客席で観ていた、故大林宣彦監督の奥様で映画プロデューサーの大林恭子さんや娘さんの大林千茱萸さん、そして「ふたり」に主演した石田ひかりさんたちに対しての労いと感謝を込めての拍手だったように思う。そう思いながらも、2年前に亡くなった、尾道出身の映像の魔術師ともいわれた、同作品を監督した大林宣彦監督への “哀悼の意” がお客様の拍手に込められていたようにも聞こえた。
私は、「ふたり」を見るのは初めてで、こういった機会に尾道で見られるのは心高ぶるものがあった。全編が尾道ロケというこの作品が、32年の時を経て、尾道映画祭で公開されたのは感慨深いものだった。
ちょっぴりドジな14歳の実加(石田ひかりさん)としっかりものの姉・千津子(中嶋朋子さん)の姉妹が繰り広げるストーリー。ある時に、不慮の事故で亡くなってしまった姉が、幽霊になって現れ実加を励まし苦境を乗り越え成長していく姿を描いたもの。赤川次郎の同名原作をもとに大林監督が映画化した作品である。
大林監督は、尾道を舞台にした「転校生」を皮切りに「時をかける少女」、「さびしんぼう」を世に送り出し、のちにこれらが尾道三部作といわれるようになった。
そして、1991年に、再び尾道ロケでこの「ふたり」を撮り。続いて4年間隔で「あした」と「あの、夏の日」を撮り、新尾道三部作として尾道シリーズを製作した。
小津安二郎監督の「東京物語」で “映画の街・尾道” の足掛かりをつくり、大林宣彦監督が映画の街の基礎を固めた。尾道から発信できる「映画」は次の世代の作家やクリエーターがどのように尾道とかかわり発信していくかが未来を創ることに。いまから楽しみである、何を見せてくれるのか。
余談話であるが、今回も、客席から遠目であるが舞台の石田ひかりさんを拝見した。20年ほど前にも、犬と散歩している石田さんを遠目から見たことを思い出した。ご主人がまだ大阪勤務のころ、西宮に住んでおられたことからそういう偶然があった。私も犬と散歩中で、たしか犬種が一緒だったことを記憶している。だから、なんだ! ということではあるが、私の拍手は石田さんへの応援の気持ちを込めて!
リポート&写真/ 渡邉雄二・尾道映画祭実行委員会 Reported & Photos by Yuji Watanabe