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歴史ストーリーのある日本遺産のまち「尾道」が注目され続ける理由 !?  そのⅠ「寺院の存在」

2022-01-24 11:26:45 | 尾道・文化紀行

 

尾道市は広島県の南東部に位置する、人口13万1千人(平成27年と調査)を有し、商業を中心とした町として平安時代から現代に至るまで栄え続けている町である。昭和の40年代以降の高度成長期の造船業をはじめ、漁業や海産物加工業、製造業、農業をベースに、現在(新型コロナ以前)では観光業による収益もかなり伸びている。

新型コロナウィルス騒動前までは、国内外から年間700万人近い観光客が訪れていた。それに貢献したのが、「日本遺産」への登録、そして四国までの「しまなみ海道」開通が大きく貢献し、風光明媚な町として人気を集めている。その土台を築いているのが瀬戸内を代表する歴史ストーリーである。一つは、瀬戸内海を拠点に活動した村上水軍(海賊衆)のヒストリアル。一方の山では寺院の勢力が尾道の歴史を築く大きな礎になり、尾道の発展に寄与しているのは間違いない。

平安時代に、尾道の北部に位置する世羅町のあたりに豪族が管理していた備後大田庄の荘園があり、その倉敷地(穀物類を貯蔵するところ)として荘園米の積み出し港となって以来、貿易船や北前船などの寄港地として繁栄をとげた。

それぞれの時代の中で力をつけた豪商たちが尾道の地に寺院を作り寄進したといわれている。当時、豪商は働く人たちの神仏崇拝に力を入れ、とくに漁師や浜旦那((漁師を統括、魚介類などを卸す商人))は危険と隣り合わせの海を相手にしていたことから神仏に海上安全を祈願するために尾道に多くの寺院ができた。この瀬戸内海の天然の良港として栄えた尾道は寺院と共存共栄しながら時代を経てきた。

 

             寺院が立ち並ぶ尾道市街地

 

現在、尾道の三山といわれる「大宝山 千光寺」、「転法輪山 浄土寺」、「摩尼山 西國寺」など真言宗系の大本山を中心に、それぞれの塔頭を含め25カ寺が存在する。時代をさかのぼると、寺院の数で一番多かったときで60数カ寺あっといわれている。

そして、寺院が建立された理由の一つに、千光寺の巨岩をみるように三山のどの山にも大きな岩があり、神聖な場所とされたことが建立に大きく影響したといわれている。境内のあちこちに存在する大きな岩は御神体として人々に信仰されやがて修行の場となった。それがいつしか仏教と結びつき寺院建立へつながっていった。地元の労働者の安全祈願の寺院という役割に加え、修行の場として魅せられ多くの人が集まってくるようになったのが平安時代の終わりごろからである。

 

        千光寺本堂横の巨岩のご神体(上)   斜面に建つ本堂(下)

 

              浄土寺本堂と多宝塔(共に国宝)

 

          巨大に草鞋が下げられている西國寺仁王門

 

余談ではあるが、調べていくと、聞きなれない仏教宗派「時宗(じしゅう)」の寺院が大きな役割を果たしたようだ。尾道にはその時宗の寺院が6カ寺もある。全国的にみても一つの町にこれだけの時宗寺院が集まっているのは珍しい。時宗は鎌倉時代の末期に興った浄土教の一宗派で、開祖は一遍上人といわれている。総本山は神奈川県藤沢市にある清浄光寺である。時宗寺院には当時の「浜旦那」の隆盛と深くかかわっていたというものが多く所蔵されている。その中で、とくに時宗は人々を分け隔てなく受け入れ、同時に「文化の発信元」にもなったといわれている。

平安時代の終わりごろからから寺院を支え、江戸時代でも尾道には豪商がたくさんいて寺や神社を支えてきた。尾道の魅力でもある古い寺院や神社のほとんどが貴族や武士でなく商人によって建てられ、人々を支えてきた。                    そして現在でも、尾道三山を始めとする寺院が歴史ストーリーをたずさえ数々の新しい情報を発信している。その文化に支えられてこそ、新しいものが生み出されていく。   

そしてまた次の世代へと繋がっていく。尾道の魅力を育んだのは、この瀬戸内海の地形によって創造されたものが時代を経ていまに繋がっている。そこには「寺院」の存在なくして尾道はあり得ないと言っても過言ではない。

 

リポート&写真/ 渡邉雄二・栗山主税 Reported & Photos by Yuji Watanabe・Chikara Kuriyama

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尾道・文化紀行を覗いてみてください

https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

 

 

   


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