社会を見て、聞いて、感じる。

人生そのものがフィールドワーク。

12月19日(木) ポルノ脳が人を裁くな。

2024年12月23日 08時02分07秒 | 2024年

 6時半起床。

 明け方に小雨がパラついたようなので、朝顔の水やりはお休み。

 朝食は蜂蜜入り豆乳ヨーグルト。

 娘を見送ってから、1階の部屋の掃除と敷物類の洗濯をする。

 9時から在宅勤務を開始する。

 昼食は目玉焼きとウインナー、キムチ、ご飯。シャウエッセンを大人使いする。

 娘が帰宅する。今日のお父さんはお仕事モードだとわかったようで、隣で静かに宿題をやり、終わってからも自分でおやつを準備したりと気遣いをしてくれている。

 勤務終了後、早めに娘と入浴。学校で流行っているというジャンケンの亜種を教えてもらう。ルールが斬新すぎて理解が追い付かない。

 妻が帰宅してから夕食。ホワイトシチューを食べる。

 洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。

 めちゃくちゃ怒っていることを書いておきたい。昨日の大阪高裁で出された滋賀医科大生レイプ犯たちへの無罪判決(飯島健太郎裁判長)である。性行為の存在、被害女性が行為を明確に拒否する発言をしているという事実、加害者たちが攻撃的な発言をしているという事実まで認定されたにも関わらず、それらもプレイの一環であり「女子学生の同意があった疑いを払拭できない」という判決は本当に意味がわからない。AV(フィクション)と現実の区別が付いていない、いわゆるポルノ脳の発想である。「自ら部屋に入ったのだから合意があった」というのも、未だにそんなことを言う人間がいるのかと驚いた。

 大阪高裁は恥を知りましょう。検察はきちんと上告してください。そして、最高裁は未来に恥じることのない判決を下してください。

 日付が変わる頃に就寝。


12月18日(水) 日常への復帰。

2024年12月22日 22時38分07秒 | 2024年

 6時半起床。

 朝顔の水やりをする。最後だと思われる種たちがまもなく収穫期を迎えつつある。

 朝食は蜂蜜入り豆乳ヨーグルト。

 娘を見送ってから、身支度を整えて家を出る。

 9時前に出勤。

 2日間休んだ分の仕事が…と言いたいところだが、後輩がフォローしてくれていたおかげでバタバタすることはなかった。ありがとうございます。

 昼食は「K​itchen Van」(キッチンバン)へ。

 日替わりランチの豚バラ肉のブレゼを頂く。

 玉ねぎと白ワインの蒸し煮とのこと。洋風のチャーシューのような味である。これは癖になる。

 定時で退社し、新横浜の「有隣堂」に寄る。職場の後輩からおすすめされた『あのこは貴族』(山内マリコ)と『ヴァイオレットエヴァーガーデン』(暁佳奈)を購入。

 民間学童へ娘をお迎えに行く。本屋へ寄り道した分、車という反則技を使って時間を取り戻す。

 夕食は豚バラ鍋。ポン酢で食べる豚肉と白菜の美味しさは格別である。

 入浴と洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。

 日付が変わる頃に就寝。


12月17日(火) 振り返りまでが旅行。

2024年12月22日 08時02分07秒 | 2024年

 6時半起床。

 朝顔の水やりをする。

 朝食は蜂蜜入り豆乳ヨーグルト。

 今日も休みを取っている。

 娘を見送ってから、成瀬巡礼旅行の日記を書き始める。旅は計画、実行、そしてこの振り返りの時間も楽しい。

 午前のおやつに、昨日京都駅で購入したこしあんの八ッ橋を食べる。八ッ橋の基本はつぶあんだが、昔からこしあんも細々と売られている。

 私はこしあん派である。特に八ッ橋はどう考えてもこしあんのほうが美味しいと思う。

 午前中で1日目の前編を書き終え、昼食。冷蔵庫に残っていたおかずと汁物をレンジで温める。生姜の利いたスープが美味しい。

 ほどなくして娘が帰宅する。普段と違って私が仕事をしているわけではないとわかったようで、遊ぼうモードに入る。そのため、日記を書くのは少し休憩。

 3時のおやつは近江勧学館で購入した「近江百人一首さぶれ」。

 八ッ橋に近い風味なのでどうかなと思ったが、娘も気に入ったようである。

 娘が録画したテレビ番組を見始めたところで、1日目の後編に取り掛かる。

 夕方、娘の宿題を見てから、いつもより早めに入浴。

 妻が帰宅してから夕食。ホワイトシチューを食べる。美味しい。

 洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。

 1日目の後編を書き終え、2日目に取り掛かる。

 写真を眺め、作品を読み返しながら書いていく。普段よりはるかに長い日記になるが、熱中して書ける。気付いたら平気で2時間くらいは経っている。

 1時過ぎに就寝。


12月16日(月) 成瀬とまひろ。【後編】

2024年12月21日 08時02分07秒 | 2024年

 前編からの続き(前編はこちらから)。

 


 前編でも書きましたが、この日記には宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』及び『成瀬は信じた道をいく』のネタバレが盛大に盛り込まれています。これから読まれる予定の方はご注意ください。個人的には、この日記のような事前情報は全く入れずに作品を読まれることをおすすめします。


 

 時刻は12時過ぎ。

 石山寺を出て、瀬田川沿いを琵琶湖に向かって歩く。

 瀬田川は琵琶湖の水が自然流出する唯一の川である。琵琶湖の南端から流れ出し、途中で宇治川、淀川に合流して最終的には大阪湾へ注ぐ。昨日のミシガンクルーズでミシガンパーサーさんから教えて頂いたばかりの知識である。

 瀬田唐橋(せたのからはし)が見えてきた。京都と東の国々を結ぶ交通の要所であり、軍事的にも「唐橋を制するものは天下を制す」と言われるほど都を守る要衝だった。そのため、敵軍の侵攻を阻むために何度も焼き落されている。「急がば回れ」の語源となった場所(「回れ」のほう)でもあるそうだ。

 また、夕日の美しさは有名で「瀬田の夕照」として近江八景にも選ばれている。

 橋の真ん中まで行ってみよう。

 私はてっきり橋の上から琵琶湖越しに見える夕日が美しいのだろうと思い込んでいたのだが、琵琶湖は真北にある。

 橋の上から見える夕日は比叡山に沈む。後から調べてみたら、夕日に照らされる瀬田川とこの橋が美しいということだった。

 橋のすぐ近くにある近江牛専門店「松喜屋」へ伺う。

 道を挟んだ両側に店舗があり、こちらは精肉店とハンバーグ専門店「ハンバーグステーキ松喜屋」。

 ここでスタンプラリーをコンプリートした。

 ハンバーグ専門店では『成瀬は信じた道をいく』とのコラボメニューが提供されている。

 私は反対側にある「れすとらん松喜屋本店」を予約している。篠原かれんが家族からびわ湖大津観光大使就任のお祝いをしてもらったお店である。

 ここにも宮島未奈さんのサインが飾られている。

 篠原一家と同じ「一番高い近江牛のコース」には手が届かないが、奮発して個室を押さえた。

 「紫式部近江牛御膳」を頂く。

 紫式部と平安貴族の生活様式や食文化をモチーフにした御膳である。

 飲み物は甲賀コーラ。味が濃くて美味しい。料理の世界観と合わないことは重々承知なのだが、コカ・コーラもペプシもボイコット中なのでクラフトコーラがあると飲みたくなってしまう。

 コースは十二単のサラダから始まる。先ほど石山寺の大河ドラマ館でまひろの衣装を見たばかりなのだが、どこが十二単なのかはわからない。ただ、味はとても美味しい。お肉は厚みもあって柔らかく、野菜も新鮮だ。

 イワシの南蛮漬け、養老豆腐氷見立て、近江牛の手毬寿司の3種盛り。紫式部はイワシが好物だったらしい。私もイワシは好きだし、年齢を重ねるに連れてこういう手の込んだ小鉢料理に喜びを感じるようになってきている。

 松喜屋風空也蒸し。お豆腐の入った茶碗蒸しである。私は普段あまり茶碗蒸しを好んで食べないのだが、これは驚くほど美味しかった。私の嫌いな椎茸が入っていないのと、そもそもの出汁が美味しいのだと思う。

 早々にコーラを飲み干し、2杯目からは料理とのバランスを考えてウーロン茶にする。

 焼魚はビワマスのバーニャカウダーソースがけ。ビワマスはその名の通り琵琶湖の固有種で、高級品らしい。

 脂がのっていてとても美味しい。お刺身でも食べられるそうなので、次回は是非食べてみたい。

 はなびらたけのお吸い物。ぷるぷるした食感のはなびらたけとお出汁がよく合うし、すだちの酸味がいいアクセントになっている。先ほどの茶碗蒸し然り、ここのお出汁は本当に美味しい。

 いよいよメインの近江牛ステーキである。味付けはガーリックチップ、醤油を練り込んだ西洋わさび、泡塩(昆布だしと塩を泡立ててゼラチンでメレンゲ状に固めたもの)、玉ねぎとりんごの自家製ソースの4種類。

 お肉は最上位ランクの「極上サーロイン」(150g)にした。

 自分で焼くスタイルである。

 脂のじゅーっという音と良い香りがしてくる。

 自分で選んでおきながらサーロインだと脂が多すぎるのではないかと不安だったのだが、赤身とサシのバランスが良く、様々な味付けのおかげもあって最後まで新鮮な感動と共に食べることが出来た。特に泡塩と西洋わさびを合わせて食べると最高である。

 デザートは自家製チーズケーキ、シャーベット、フルーツ。チーズケーキがしっとり濃厚で珈琲とよく合う。

 期待以上に美味しいランチだった。奮発して良かった。

 唐橋前駅から京阪線に乗る。ホームには観光大使募集のポスターが貼られている。成瀬と篠原の同期はどんな方になるのだろう。

 京阪膳所駅を下りたところで成瀬ラッピング車両と遭遇する。

 ときめき坂のセブンイレブンでガリガリ君ソーダ味を購入。

 M-1グランプリの予選から帰って来た成瀬と島崎を真似し、馬場公園で食べる。成瀬はガリガリ君、島崎はチョコミントバーを食べていたが、チョコミントバーは売っていなかった。

 馬場公園はゼゼカラの漫才の練習場所でもあった。公園内のどこでという記述はないのだが、何となくこの場所のような気がする。ベンチに荷物を置き、木と木の間に立って漫才をしている2人の後ろ姿が目に浮かんでくる。

 オーミー(Oh! Me 大津テラス)に入っているフレンドマートのサービスカウンターへ行き、スタンプラリーの景品を頂く。成瀬の栞である。嬉しい。

 京阪線沿いに10分ほど歩き、島の関のロイヤルホスト(浜大津店)へ。「観光大使-1グランプリ」の一次予選を突破した成瀬と篠原が、二次の近畿ブロック予選に向けて作戦会議をしたお店である。

 成瀬たちと同じ京阪線が見える窓際の席に座ると、ちょうど成瀬ラッピング車両が通った。

 篠原かれんは鉄道写真を撮るのが趣味だが、そのことは成瀬以外の誰にも話しておらず、Instagramの裏アカで密かに撮影した写真をアップしている。祖母、母から続く三世代観光大使という夢を託され生きてきたが、いざなってしまうとこの先何を目標に生きていけばいいのかわからない。そんな篠原に成瀬は「趣味の鉄道写真を極めるのはどうだ」「それは十分に生きる目的だと思うのだが」と問いかける。この時はまだ「鉄道はあくまで裏だから」とやり過ごした篠原だったが、近畿ブロック予選ではその鉄道知識でピンチをくぐり抜け、本選出場はならなかったものの審査員特別賞を受賞する。彼女はこの時初めて心から「観光大使になってよかった」と思った。この章(「コンビーフはうまい」『成瀬は信じた道をいく』第4章)は彼女の「成瀬、あんた最高に映えてるよ。」という言葉で締めくくられるが、読者からしたら篠原も成瀬に負けないくらい映えていた。そして、次章で登場する彼女は堂々と「ごっつめのカメラ」を構えて京阪線のラッピング車両を撮影している。

 ヨーグルトジャーマニーを食べる。今日は既に30,000歩以上歩いてるので、糖分補給は大切である。

 オーミーへ戻り、2階の一帯を占めている大きな「TSUTAYA」で成瀬グッズを購入。発売直後のびわ湖マラソンとのコラボTシャツやクリアファイルなどを買う。

 におの浜地区最寄りの神社だと思われる「石坐神社」を参拝する。奇想天外な大晦日を終え、2026年の元旦に成瀬と島崎は近くの馬場神社へ初詣に行く。それがこの石坐神社であるという確信はないが、可能性は高いと思う。

 2人はおみくじを引き、島崎は吉、成瀬は大吉だった。成瀬はなぜか毎年大吉を引くらしい。さすが。

 島崎は成瀬が何を祈るのか気になるが、知りたくないような気もして聞けない。逆に聞かれても、本当の願い事は成瀬には言いづらい。私はもうすぐ終わる旅の無事と家族の健康を祈った。近江神宮の時と同じだ。

 参拝を終え、琵琶湖を目指して歩く。におの浜地区のマンションはどれも成瀬が住んでいそうに見える。

 今回の旅で琵琶湖を訪れるのもいよいよこれが最後である。

 2026年の初詣を終えた2人は湖岸を歩く。

 「島崎、今年もよろしく頼む」。琵琶湖に目を向けたまま言う成瀬に、島崎は「もちろん」と答える。そして、先ほど神社で祈ったことを、琵琶湖に向かってもう一度祈る。

 「これからもずっと、成瀬を見ていられますように。」

 それは私を含む多くの読者も同じ気持ちだろう。

 琵琶湖に別れを告げ、「びっくりドンキー」(大津店)で夕食。高校3年生の8月、翌週に迫ったときめき夏祭りの全体打ち合わせを終えた2人が食事に訪れ、成瀬が島崎から引越しを知らされる。

 成瀬が毎回必ず食べているというチーズバーグディッシュを注文。びっくりドンキーのハンバーグを食べるのはかなり久しぶりだが、やはり美味しい。

 デザートはミニソフト(イチゴソース)。これも成瀬の定番である。島崎の引越しを聞かされた時、成瀬はこのミニソフトの白玉を食べていた。しかし、今はもうデザートメニューに白玉は入らなくなったようである。そういえば、昔のびっくりドンキーには「メリーゴーランド」という理想的なパフェがあり、それに入っていた白玉は本当に美味しかった。

 食事を終え、におの浜地区を後にする。ときめき坂を歩くのもこれが最後である。成瀬の月曜日のパトロールコースなので、どこかですれ違ったかもしれない。

 電車の時間まで少し余裕があったので、朝食がとても美味しかった「ベルエキップ」(Belle Equipe)を再訪。

 珈琲を飲みながら膳所駅前の様子を眺める。店主さんと常連客の会話が心地良い。

 膳所駅から琵琶湖線に乗る。今回予定していた場所は全て訪問することが出来たが、成瀬シリーズはこれからも続くようなので、今後また新たに行きたい場所が増えていくだろう。成瀬、島崎、またね。

 京都駅19:10発のこだま752号に乗り、新横浜へ帰る。帰りも「ぷらっとこだま」である。最新のN700S系グリーン車に乗れて嬉しい。

 売店で白湯が売っていることに驚いたが、よく考えてみれば水が売られているのだからそれほどおかしなことではないか。

 なぜ私はこんなにも成瀬シリーズにハマったのだろう。本屋大賞を受賞するくらいだから作品そのものが素晴らしいというのはもちろんだが、それ以外にも私の趣向とぴったり合う何かがあるような気がする。ひとつわかっているのは、私は女性同士の友情を描いた作品に惹かれる傾向がある。角田光代さんの『対岸の彼女』がきっかけだったと思うが、男性同士のそれとは明らかに何かが違い、私自身は経験することの出来ない女性同士の友情、影響の与え方、与えられ方といったものに興味(「憧れ」という表現のほうが適切かもしれない)がある。

 元々私は、何かを見たり聞いたりすると現地へ行って実物を体感してみたいと思うタイプではある。しかし、小説を読んでその聖地巡礼をするというのはこれが初めてだ。しかも今回はかなり強い衝動に突き動かされ、一度インフルエンザで中止になってもそのまま諦めるという発想は全くなく、すぐに再チャレンジの計画を立てた。訪問先のリストを作るために作品を何度も読み返し、エクセルシートに場所とエピソードをまとめて整理するほど気合いが入っていた。楽しみ過ぎて前日の夜になかなか寝付けないということも、かなり久しぶりに体験した。そうしていざ巡ってみて思うのは、「聖地巡礼めちゃくちゃいいじゃん」ということである。今後読めるであろう成瀬の続編はもちろん、他の作品・コンテンツでもこういう楽しみ方をするという選択肢が得られたことは大きい。

 そんな風に今回の旅を振り返っていると、3時間20分もあっという間である。

 23時前に帰宅。

 入浴を済ませて洗濯機を回し、お土産を整理する。妻には地ビール、娘にはクッキーを買ってきた。

 自分用には成瀬グッズ。びわ湖マラソンとのコラボTシャツと、

 クリアファイルを3種類。

 クリアファイルは2枚ずつ買った。大人買いである。

 洗濯が終わるまで時間で写真の整理をしつつ、足をマッサージする。2日間で6万歩以上歩いたので、足がパンパンだし足首も痛む。

 1時過ぎに就寝。楽しい2日間だった。


12月16日(月) 成瀬とまひろ。【前編】

2024年12月19日 17時08分02秒 | 2024年

 この日記には、宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』及び『成瀬は信じた道をいく』のネタバレが盛大に盛り込まれています。これから読まれる予定の方はご注意ください。個人的には、この日記のような事前情報は全く入れずに作品を読まれることをおすすめします。

 


 

 5時起床。成瀬と同じ時間に起きる。厳密には成瀬は5時のアラームが鳴る2秒前、4時59分58秒に自力で目を覚ます。

 スマホだけ持ってホテルの部屋を出る。

 成瀬の朝のランニングコースに従い、琵琶湖沿いを歩く。作中では夏の一場面として描かれているので既に日差しが強く暑い様子だったが、当然ながらこの時期ではまだ真っ暗である。ちなみに、2024年12月現在の成瀬は高校3年生の受験追い込み期に入っているので、怪我防止のために早朝ランニング(走り込み)は室内トレーニングに切り替えられている。

 めちゃくちゃ寒い。本当に寒い。しかし、真っ暗な琵琶湖には神秘的な美しさがある。

 ちなみに、一連の写真はiPhoneで自動設定になっていたナイトモード(暗いところでも精細な写真が撮れる)で撮ってしまったのでかなり明るく見えるが、実際にはほぼ真っ暗である。

 日中の琵琶湖文化会館は趣きがあって素敵だったが、この暗さで見ると不気味さが勝る。

 桟橋風の遊歩道で湖の中に入っていく。先ほど歩いて来た湖畔でもそうだったが、所々で釣りをしている人がいる。

 先ほど歩いてきたにおの浜方面を眺める。

 大津港方面は少しだけ明るい。

 琵琶湖は静寂に包まれている。時々、魚が跳ねるのと鴨の羽ばたく音だけが聞こえてくる。

 大津港までやってきた。成瀬の走り込みの折り返し地点である。

 ミシガンが幽霊船のように見えてちょっと怖い。

 私も大津港で折り返す。ちょうど東の空が明るくなってきた。

 朝日に向かって歩く。ライニングや犬の散歩をする人も増えてきた。日常的にこの景色が見られるのは羨ましい。

 ホテルを通り過ぎ、成瀬と島崎の住んでいるあたりまで歩いてみることにする。

 さすがに疲れてきた。におの浜から大津港まで往復すると約4キロ歩くことになるので、おじさんが朝の5時からやることではなかったかもしれない。

 成瀬と島崎が住んでいるのは、におの浜3丁目(の4丁目寄り)か4丁目(の3丁目寄り)だと思われる。架空の人物とはいえ、早朝から女子高生の住むマンションを探し歩いている自分がちょっと怖い。

 3丁目から4丁目にかけてはたくさんのマンションが建っている。膳所駅までは徒歩10分強の場所で、商業施設も琵琶湖も近い。買ったらいくらくらいなのだろう。

 湖畔へ戻る頃にはかなり明るくなっていた。もうカメラもナイトモードにならない。

 「びわ湖大津プリンスホテル」は、におの浜地区の北東の端に建っている。ときめき坂に事務所を構える弁護士の吉嶺マサルと大阪のWeb会社に勤める稲枝敬太はときめき小学校の同級生で、このプリンスホテルで卒業後30年の同窓会を企画していたが、新型コロナウイルスの影響で中止となってしまう。しかし、稲枝が作成した同窓会HPをきっかけに、かつてケンカ別れしたまま急に転校してしまったタクロー(笹塚拓郎)と連絡が取れ、2020年8月31日の夜、営業最終日となった西武大津店で再会する。(「階段は走らない」『成瀬は天下を取りにいく』第3章)

 湖畔のベンチで少し休憩してから、7時前にホテルへ戻る。

 小一時間ほど二度寝をしたら、外はすっかり明るくなっていた。急いで身支度を整え、8時半前にホテルをチェックアウトする。

 朝のときめき坂を上る。ときめき小学校(平野小学校)の児童たちが元気に校門へ吸い込まれていく。

 京都や大阪へ通勤する人たちは既に電車に乗っているのだろう、人通りはそれほど多くない。

 と思ったら、膳所駅からたくさんの学生が下りてきた。島崎の通う大津高校の生徒だろう。

 駅前にある喫茶店「ベルエキップ」(Belle Equipe)に入る。

 店内の窓からは膳所駅前の様子がよく見える。

 朝の通学ラッシュ時間帯だからだろう、京阪電車の運行本数も多い。

 ハムエッグのモーニングセットを頂く。成瀬は早朝のランニングを終えて帰宅すると、自分でハムエッグを焼いてご飯にのせて食べる。ハムエッグ丼を真似するのは難しいので、私はトーストと食べる。

 卵2個とハム3枚の豪華なハムエッグである。サラダも焼きたてのトーストも美味しいし、珈琲もとても香り高い。幸せな気持ちになる朝食である。

 朝食を終え、京阪膳所駅から浜大津・坂本方面の電車に乗る。

 びわ湖浜大津駅から三井寺駅までの区間は路面電車になる。電車はともかく、車を運転する側は難易度が高そうだ。

 南滋賀駅で下りる。

 すぐに滋賀市民センターが見えてくる。全国高等学校小倉百人一首かるた選手権の予選会場のひとつで、西浦が成瀬に一目惚れ(?)した場所である。

 建物の端に大津市民憲章の石碑が設置されている。「あたたかい気持ちで旅の人をむかえましょう」。成瀬はこの教えにのっとって西浦たちをミシガン観光へ案内した。

 滋賀市民センターはいわゆる市役所の出張所と公民館を兼ねた施設だが、地域の歴史紹介や観光案内コーナーもある。地元の小学生たちが作ったオリジナルかるた「しがやふる」も展示されていた。

 1駅隣の近江神宮まで歩く。

 近江神宮は、大津京を開いた天智天皇を祀る神社である。

 百人一首の一首目は天智天皇の句である。だから大津は「かるたの聖地」なのか。

秋の田の かりほの庵の 苫を荒み わが衣手は 露にぬれつつ(天智天皇)

 成瀬と島崎はここで大学受験の合格祈願をした。

 いや、彼女たちの受験は来年だから、「これからする」というほうが正しいか。

 私は旅の無事と家族の健康をお願いした。

 まだ綺麗な紅葉が残っている。

 近江神宮の敷地内にある近江勧学館へ。全国高等学校小倉百人一首かるた選手権のメイン会場である。

 私は「勧学」の【勧】を【歓】だと見間違えて「歓んで学ぶ」ことだと思っていたが、「学ぶことを勧める」という意味だった。

 受付の近くに宮島未奈さんのサインが飾られている。

 私は成瀬の聖地巡礼で来たが、『ちはやふる』の聖地としても有名(というかそちらがメイン)なようだ。

 かるた対戦を再現できる撮影スポットもある。

 巨大な読み札(絵札)も置かれている。

 大津市のご当地キャラ「おおつ光ルくん」。石山寺に住んでおり、かるたや和歌を詠むのが得意。

 全国大会の会場は2階にある。毎年7月に開催されているそうなのだが、一般客も見られるのだろうか。

 受付の近くに「広報おおつ」が置かれていた。

 令和7年度のびわ湖大津観光大使の募集情報が掲載されている。成瀬と篠原の選ばれる年である。

 帰りがけにお土産として「近江百人一首さぶれ」を購入。1年間限定で『光る君へ』とのコラボパッケージになっている。

 近江神宮駅を越えて湖畔近くまで歩き、「ブランチ大津京」へ。中学3年の時、成瀬はここで開催されたけん玉大会に参加して「もしかめ」を4時間やり続け、最後は主催者に止められる形でチャンピオンになっている。

 作中に記載はないが、敷地内にある「三角広場」が大会会場だったのではないだろうか。

 近江神宮駅へ戻り、石山寺行きに乗る。座ってすぐにうとうとし始め、気付いたら終点の石山寺駅に到着するところだった。

 成瀬巡礼を一時中断し、石山寺を参拝する。

 まひろ(『光る君へ』)の聖地巡礼である。

 この大きな硅灰石を見て気付いたのだが、以前に西国三十三観音巡礼で訪れたことがある。

 本堂の内陣まで参拝し、観音様にゆっくり手を合わせる。ご無沙汰しております。

 紫式部が『源氏物語』を起筆したとされている「源氏の間」に人が集まっている。

 紫式部は、石山寺から見た琵琶湖に映る中秋の名月の美しさに心を打たれて『源氏物語』を書き始めたと言われている。本来ここは天皇や皇族、貴族、高僧など身分の高い人が使用する部屋だったそうで、物語の制作がいかに重要な任務だったかが伺える(と説明書きに書いてあった)。

 今はもう境内から琵琶湖はほとんど見えない。

 紫式部像に挨拶してから下山する。何となく、まひろ(吉高由里子さん)に似ているような気もする。

 大河ドラマ館へも立ち寄る。

 彼女が「IXY」(キャノンが当時販売していたデジカメ)のCMで「イクシー持って行くしー!」と言っていた頃からの大ファン(当然「IXY」は買った)としては、今回の『光る君へ』は必見だった(最終回はまだ見ていないが)。

 最終回放送翌日ということもあり、多くの人で賑わっていた。贔屓目抜きにしても『光る君へ』はとても面白かった。『篤姫』、『西郷どん』、『鎌倉殿の13人』と並ぶ傑作だと思う。

 時刻は12時過ぎ。後編へ続く(後編はこちらから)。