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12月15日(日) 成瀬巡礼。【後編】

2024年12月18日 08時02分07秒 | 2024年

 前編からの続き(前編はこちらから)。

 


 前編でも書きましたが、この日記には宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』及び『成瀬は信じた道をいく』のネタバレが盛大に盛り込まれています。これから読まれる予定の方はご注意ください。個人的には、この日記のような事前情報は全く入れずに作品を読まれることをおすすめします。


 

 時刻は12時30分。大津港に到着。

 琵琶湖汽船の窓口で、数日前に予約しておいた13:00発ミシガンクルーズの乗車券を受け取る。

 港の一角にも成瀬コーナーが設置されている。

 ミシガン号は琵琶湖を代表する観光遊覧船である。1982年に就航し、滋賀県の友好姉妹都市であるアメリカ・ミシガン州との国際親善を祈念して「ミシガン」と命名された。外観はアメリカ南部ミシシッピー川に就航している外輪船のイメージからデザインされている。

 高校2年生の夏、成瀬は膳所高校かるた班の一員として全国高等学校小倉百人一首かるた選手権に出場。予選会場となった滋賀市民センターで、成瀬は広島県代表錦木高校の西浦航一郎と出会う。試合中の成瀬の豪快なフォームから目が離せなくなった西浦の一目惚れだった。同じかるた部で幼馴染みでもある中橋結希人の助けを借りて成瀬に話しかけ、成瀬は大津市民憲章の「あたたかい気持ちで旅の人をむかえましょう」という教えに則り、大会翌日に2人をミシガン観光へ案内する。

 乗船した3人は成瀬の案内で3階の部屋へ上がる。ミシガンパーサーの挨拶の後、選ばれた乗客によるドラの合図でミシガンは出航。作中では5歳の男の子、今日はお子さん連れのご家族がドラを鳴らした。

 大津港を出ると北へ真っすぐ進む。クルーズには90分と60分の2コースがあり、私は成瀬たちと同じ90コースに乗っている。90分コースは1日2便で、成瀬たちは11時の便に乗ったが、私は行程の関係で13時の便である。

 出航してほどなく、成瀬たちは4階のデッキへ上がる。中橋は気を利かせて西浦を成瀬と2人きりにしてくれた。

 「ここでぼんやりするのが好きなんだ」。成瀬は椅子に座り、西浦も隣に腰を下ろす。言葉を交わすうちに西浦は成瀬の成瀬らしさに惹き込まれていく。

 「成瀬さんは好きな人いるの?」。勇気を振り絞った西浦に、成瀬は「そのような質問をするということは、西浦は私が好きなのか」と返す。「私のどこに惹かれたのか」、「誰にも似ていないところ」、「なるほど」。

 沈黙が始まったその時、中橋が戻ってくる。助け舟か、はたまた偶然か。

 3人は1階に下りる。湖面がかなり近い。少しでも波が出たら床に流れ込んで来そうだが、そんな心配はいらないのだろう。

 海のような湿った潮風ではなく、すっきりと爽快な風が吹いている。湖面は青にも緑にも、時にはエメラルドグリーンのように輝いてもいる。琵琶湖がこんなに素晴らしいとは思っていなかった。来るきっかけをくれた成瀬(と宮島未奈さん)に感謝である。

 近い湖面を見て「落ちそうで怖いね」と言う中橋に対し、うきわを指差しながら落ちた時の対処法を具体的に熱弁する成瀬。「200歳まで生きる」を目標にしている成瀬のリスクマネジメントは完璧である。

 2階の船尾からは赤い外輪が目の前に見える。豪快に水しぶきが上がっているのは見ていて楽しいが、冬なので一段と冷える。

 成瀬は「巻き込まれたら即死だから」という理由でここへは近寄らない。そんな成瀬に対する中橋の印象は「普通じゃない」「だいぶ変わっている」である。普通の人はそうかもしれない。

 ミシガンはゆっくりと右に旋回して大津港を目指す。もう半分過ぎてしまったのか。

  3階の室内でミシガンパーサーさんの観光案内が始まる。外にも放送されるので、案内に従って景色をじっくり眺める。琵琶湖に流入する河川は460本あるが、自然流出するのは1本(瀬田川)だけしかないという話は衝撃だった。

 西岸の奥で雪化粧をしているのは比良山(系)。この雪化粧は「比良の暮雪」として近江八景のひとつとされているそうだ。この時期ならではの景色だが、これだけ綺麗に積もっているのはかなり珍しいとのこと。

 西岸一体に広がっているのは比叡山。その全てが延暦寺の敷地(比叡山=延暦寺)である。根本中堂にある本尊(薬師瑠璃光如来)の前には1200年間灯り続けていると言われる「不滅の法灯」があるが、実は根本中堂の灯りは1度だけ、織田信長による比叡山焼き討ちの際に消えてしまったことがあるらしい。しかし、焼き討ちの30年ほど前に山形の立石寺へ分灯したことがあり、復興後の再分灯によって「不滅」は継続された。今も1日2回、僧侶が油を継ぎ足して灯りを守っている。油を断ってしまうと1200年続いた灯りが消えてしまうことから「油断大敵」という四字熟語が生まれたと言われている。

 琵琶湖の西岸、比叡山の麓には「坂本」という地域がある。成瀬と共に2025(令和7)年度の「びわ湖大津観光大使」に就任する篠原かれんの住む町である。彼女は祖母・母から続く3世代観光大使という宿命を背負って努力を重ね無事に選ばれるが、成瀬との活動を通して自分の人生を生きる一歩を踏み出すことになる。私自身が鉄道オタクだからということもあるのかもしれないが、この「コンビーフはうまい」(『成瀬は信じた道をいく』第4章)は成瀬シリーズの中でも特に好きな話である。

 観光案内の最後には『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』も紹介されていた。「聖地巡礼で訪れる方もたくさんいらっしゃいます」という説明に頷いていたらパーサーさんも気が付いてくださった。

 観光案内の後は、ミシガンパーサー・シンガーによる音楽ライブ。クリスマスソングを中心としたステージで、先ほどまで売店にいらっしゃったスタッフさんの乱入もあったりしてとても楽しかった。

 音楽と同じくらいトークも魅力的だった。喋るからには笑わしたろうというサービス精神は、さすが関西のパフォーマーである。また、これは私に半分関西人の血が流れているからかもしれないが、やはりプロの話し手さんの関西弁はテンポが良くて耳に心地良い。

 90分のクルーズはあっという間だった。ミシガンクルーズは本当におすすめである。今度は娘も連れて来てあげたい。

 湖の駅浜大津に併設されているフードコート「おいしや」に入る。クルーズを終えた西浦は中橋に「成瀬さんと二人きりにしてほしい」と頼み、中橋は西浦の健闘を祈りつつ成瀬に「急用ができた」と言って中座する。

 2人はここで「近江牛コロッケ御膳」を食べる。成瀬おすすめのメニューである。

 作中で描かれていたとおり、お米は滋賀県産キヌヒカリが使用されており、おかわりも無料だ。

 もちろん近江牛コロッケ御膳を食べる。ご飯、漬物、味噌汁、コロッケ、だし巻き玉子、きんぴら。小説そのままのラインナップである。しかも、副菜がしっかり美味しい。

 メインのコロッケは驚くほど美味しかった。揚げたてでサクサクなのはもちろん、お肉の旨みがじゃがいもにしっかりしみこんでいる。これはご飯が進む。

 西浦は4杯、成瀬も2杯のご飯を食べたが、私は1杯に留めておく。

 遅めの昼食を終え、湖岸へ戻る。歩き始めてすぐに琵琶湖ホテルが見えてくる。成瀬と篠原のびわこ大津観光大使就任式とその後の昼食会が行われた会場である。この就任式と昼食会の合間に2人は湖岸に出て、篠原が成瀬のインスタカアカウント用の写真を撮ってあげる。

 高校時代の成瀬と西浦の話に戻ろう。2人は湖岸の遊歩道を歩く。成瀬は平然と琵琶湖の豆知識を紹介しているが、西浦は告白の返事がまだなことに気が気ではない。

 そんな折、琵琶湖に飛び込もうとしている(ように見えた)男性を止めに成瀬が走り出す。西浦もそれに続き、柔道仕込みの力で男性を引き戻す。男性はここでは死ねそうにないと思い留まったところだったが、死を考えていたのは本当だった。手荒なことをされて憤慨する男性に怯むことなく成瀬は「死ぬのはもったいない」と説得を続け、駆けつけた警察官に後を委ねる。

 成瀬は「西浦の気持ちには応えられない。恋愛は人生の後半に回そうと思っている」と告白を断る。西浦は吹き出してしまう。200年生きることを目指している成瀬の人生の後半となると、まだ80年以上先だ。そして、西浦は成瀬がきちんと考えて答えてくれたことが嬉しかった。

 『俺はますます成瀬さんが好きになったよ』

 この後、成瀬は西浦を膳所駅まで送る。「レッツゴーミシガン」ではここまでだが、2人は手紙のやりとりを続け(この時点で成瀬はまだスマホを持っていない)、「成瀬慶彦の憂鬱」(『成瀬は信じた道をいく』第2章)では西浦が京都の大学を受験することがうっすらほのめかされている。

 琵琶湖沿いを歩いていくと、今日の宿泊先である「ホテルピアザびわ湖」が見えてきた。

 成瀬たちのように膳所駅まで歩くのは大変なので、ひとつ手前の石場駅から京阪線に乗る。この選択は大正解だった。

 滞在中に一度は乗りたいと思っていた成瀬のラッピング車両がやってきた。めちゃくちゃ嬉しい。ちなみに、2日間の滞在中に京阪電車には何度も乗ったが、成瀬車両とすれ違うことはあっても乗ることが出来たのはこれが最初で最後である。

 私が乗った車両の側面には「ありがとう西武大津店」(『成瀬は天下を取りにいく』第1章)のイラストが描かれている。

 膳所本町駅で下りる。わずか3駅、5分足らずの乗車だったが、幸せな時間だった。ちなみに、ラッピング車両の運行期間は来年2月までとのこと。

 膳所駅周辺とは少し雰囲気が違う。古き良き風情のある町である。

 駅のすぐ近くに成瀬の通う滋賀県立膳所高校がある。滋賀県内で最も偏差値の高い高校だそうだ。成瀬は入学式に坊主頭で登場して新入生代表の挨拶を堂々と務め、その後かるた班に入る。最高峰の高校でも勉強は順調そのもので、最終的にはセンター試験で校内1位(ということは実質的に県内1位)の得点を叩き出し、教師からは「二次試験も普通に受ければ普通に受かる」と太鼓判を押され、実際に第一志望の京都大学に合格することになる。そんな成瀬のことを父・慶彦は「ディープインパクトのようだ」と思っている。確かに、成瀬の京大受験とディープの単勝元返しだった菊花賞は似ているような気がする。

 大貫かえでは膳所高校まで徒歩で通っている。入学式に坊主頭で登場した成瀬に驚き、同じクラスになって頭を抱えた。成瀬と同じ中学校から膳所高校に進学した生徒は2人おり、その内の1人が大貫である。彼女は成瀬のことを苦手としているが成瀬はそんなことは全く気にかけておらず、2人は東大のオープンキャンパスのついでに西武池袋本店を見に行ったりもしている。成瀬が髪の伸びるスピードの検証を早々にやめようとした時には「最後までちゃんとやんなよ」と発破をかけ、高3の夏になって髪型がおかしくなってきた時には逆に「さすがに変だから切ったほうがいい」とプラージュを紹介している。島崎の引越しを知って勉強が手に付かなくなった成瀬にペースを取り戻すきっかけを与えてくれたのも大貫だった。脇役ではあるものの、私の中ではとても印象に残っている登場人物である。ちなみに、作中で彼女は東大受験を目指していたが、合否は定かではない。

 膳所本町駅へ戻る。ベンチに可愛い座布団が置かれている。膳所高生のためだろうか。

 通常塗装の電車が入ってきた。京阪カラーもカッコいい。

 膳所駅へ戻り、これまで散策していた駅の北側(琵琶湖側)ではなく南側へ下りる。成瀬、島崎、大貫の母校である大津市立打出中学校(作中では「きらめき中学校」)はこちら側にある。平野小学校(ときめき小学校)とは違って公認されているという情報はないが、大津市教育委員会のHPで学区を確認したところ平野小学校の学区は全て打出中学校の学区に含まれている。

 ただ、膳所駅からでも延々と坂を上って20分弱は歩かなければならないから、成瀬たちの住むにおの浜からは30分近く掛かるのではないだろうか。

 到着する頃には足がパンパンになっていた。

 随分と上ってきたことがわかる。そりゃ足も悲鳴を上げるだろう。そういえば、大貫も「中学まではきつい上り坂だった」と述懐していた。

 帰りは駅前を通らず、におの浜方面への最短ルートと思われる道を歩いてみる。通学路として指定されている様子が伺えるから、おそらくこのルートが正解だろう。

 平野小学校の児童が考えた交通安全標語(川柳)が掲示されている。成瀬が6年生の時に考えた「信号を守って守る わたしの未来」もこちら側(山側)の通学路に飾られていた。

 線路下をくぐって琵琶湖側に出たところに、大津市立平野幼稚園があった。ここが成瀬と島崎の通っていた幼稚園(作中では「あけび幼稚園」)ではないだろうか。確証はないが、大貫が「あけび幼稚園の卒園児がときめき小学校の最大派閥だった」と回想していたので、おそらくそうだと思う。

 ときめき坂へ戻ってきた。

 せっかくなのでもう少し散策しよう。

 平野小学校企画の謎解きウォークラリーも開催中のようである。とても気になるが、1泊2日ではここまで手が回らないので諦める。

 来年3月に開催される「びわ湖マラソン」のメインビジュアルに成瀬と島崎が登用されている。そういえば、SNSで公式グッズの成瀬Tシャツが紹介されていた。どこかで見つけたら買ってみよう。そして、どうやら島崎は走らないっぽい。

 少し休憩できる場所を探しつつ、膳所駅方面へ歩く。

 駅の近くにある喫茶店「ラーゼス」(COFFEE HOUSE RHAZES)に入る。

 「ときめき坂ブレンド」というホットコーヒーを頂く。喫茶店というよりも焙煎豆の販売がメインのお店のようだが、居心地は良い。

 ときめき坂を下り、再び「Oh! Me 大津テラス」へ。

 フレンドマートで夕食やおやつ、飲み物などを購入する。レジで成瀬が働いているかなと思ったが、よく考えたら彼女が大学生になるのは来春である。

 日没後の琵琶湖に出てみる。

 湖面に映る月の光がきらめいている。まひろ(紫式部)が石山寺から見た月もこんなに綺麗だったのだろうか。

 「ホテルピアザびわ湖」にチェックイン。人気の琵琶湖側の部屋も空いていたが、敢えて街側の部屋を選んだ。琵琶湖の景色も魅力的だが、今回は膳所の街を眺めたい。

 大浴場で汗を流してから夕食。フレンドマートで今日のおすすめ品としてアナウンスされていた寒ブリが中トロ・赤身とセットになったお寿司を中心に、生春巻き、ポテトサラダを買ってきた。

 おすすめされていただけあって、寒ブリのお寿司は脂がよくのっていて美味しかった。中トロ、赤身もしっかりしたものだ。やるじゃんフレンドマート。

 成瀬シリーズの2冊を開き、明日訪れる予定の場所に関する章を読みなおす。明日も楽しみである。

 まだ時間が早いので、プライムビデオで『NCIS:ハワイ』を観る。新幹線の中でも観ていたのだが、やはりNCISシリーズは面白い。

 夜のおやつは「三井寺力餅」と「六方焼」。

 三井寺力餅は、青大豆と抹茶で作ったきな粉がふんだんにまぶされている。

 夜に和菓子を食べるのもいいものである。

 21時に就寝。せっかくの聖地巡礼なので、就寝・起床時間も成瀬を真似てみることにする。

 翌日へ続く(翌日はこちらから)。


12月15日(日) 成瀬巡礼。【前編】

2024年12月17日 12時55分08秒 | 2024年

 この日記には、宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』及び『成瀬は信じた道をいく』のネタバレが盛大に盛り込まれています。これから読まれる予定の方はご注意ください。個人的には、この日記のような事前情報は全く入れずに作品を読まれることをおすすめします。

 


 

 5時45分起床。

 荷造りをして身支度を整え、朝顔の水やりをする。

 7時前に家を出る。今日から1泊2日で滋賀県大津市へ1人旅に行く。先月、妻と娘が妻の会社の軽音部合宿へ行くのに合わせて企画していた旅だが、その時は家族全員がインフルエンザにやられて中止となってしまったので、妻にお願いして再チャレンジさせてもらうことにした。目的は、宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』と『成瀬は信じた道をいく』の聖地巡礼である。

 新横浜7:15発の東海道新幹線こだま703号に乗る。「ぷらっとこだま」という格安切符を利用すると、のぞみ号の定価よりはるかに安い金額でグリーン車に乗れる。時間は掛かるが、座席は快適だしガラガラなので居心地はすこぶる良い。

 ホームの売店で買ったサンドイッチを朝食にする。

 雲ひとつない青空で富士山も綺麗に見える。絶好の旅行日和である。

 10時半過ぎに京都に到着し、琵琶湖線に乗り換える。

 京都に住んでいる叔父一家から「素通りかい!」とツッコまれること間違いなしなので、連絡はしなかった。

 10分ほどで膳所に到着。

 駅のコンコースで主人公の成瀬あかりとその親友・島崎みゆきが出迎えてくれる。2人は同じマンションに住んでいる幼馴染みで、中学2年生の時に「ゼゼカラ」というお笑いコンビを結成しM-1グランプリにも挑戦した。

 ゼゼカラのキャッチコピーである「膳所から世界へ!」かと思いきや、「世界から膳所へ!」である。世界まではわからないが、少なくとも日本中から私のような聖地巡礼者が訪れているはずである。

 個性全開の成瀬と比べて島崎はいわゆる普通の女の子だが、成瀬の良き理解者である彼女の存在感は物語が進むに連れて大きくなっていく。

 スタンプラリーが実施されているようだ。チェックポイントは13ヵ所あり、全て巡るとオリジナルの栞がもらえるらしい。13ヵ所はさすがに…と思ったが、見てみると全て今回予定している訪問先(もしくはそのすぐ近く)だったので、やってみることにする。

 膳所駅は思っていたより大きかった。JR琵琶湖線の膳所、京阪石山坂本線の京阪膳所という2つの駅が隣接している。

 駅前から琵琶湖方面に「ときめき坂」を歩く。駅から成瀬たちの住む「におの浜」へ向かう主要ルートで、作中に何度も登場する坂である。成瀬の巡回パトロールの月曜ルートでもある。

 思っていたより広い坂(道)である。車もそれなりに通る。

 坂を下り始めてすぐ右手に滋賀県立大津高校がある。島崎の通う高校である。『成瀬は信じた道をいく』で成瀬は京都大学へ、島崎は家族で東京へ引っ越して私大へ通うことになるが、成瀬と島崎は2006年生まれなので2024年現在は18歳(高校3年生)である。

 更に進むと右手にセブンイレブンがある。中学2年生の成瀬と島崎が初めて「M-1グランプリ」に出場した後、予選会場の大阪から膳所へ帰って来てここでアイスを買い、(後述する)馬場公園で食べた。

 ときめき坂全体が商店街となっており、セブンイレブンのようなチェーン店も点在しているが、歴史のありそうな個人店や良い意味で不思議な雰囲気のお店も多い。成瀬がここをパトロールしている様子が目に浮かぶようである。

 成瀬がパトロールで商店街の安全を守っているだけでなく、商店街も成瀬を全面バックアップしている。

 坂を下りきる少し手前に大津市立平野小学校がある。作中では「ときめき小学校」という名前で、成瀬と島崎の母校である。

 小学校も公認なんだ。すごいな。

 駅構内や商店街の看板もそうだが、地域全体が成瀬シリーズを応援していることがよくわかる。

 「膳所から世界へ!」というゼゼカラのキャッチフレーズは、未来ある子どもたちの通う小・中学校の標語にもぴったりである。

 小学校を過ぎたあたりで勾配はなくなるが、ときめき坂はもう少し先まで続く。

 小学校の裏にある「よりみちぱん」もスタンプラリーの訪問先に入っているが、私の記憶では作中には登場していない。どうやら、何かのインタビューで作者の宮島未奈さんが島崎のお気に入りとしてここの塩パンを紹介したようである。日曜日はお休みなので、食べられず。

 様々なお店で成瀬シリーズが紹介されている。もしかして成瀬は実在するのではないかと思えてくるほどの推しっぷりである。

 美容室「プラージュ」。高校入学時に「人間の髪は1ヵ月で1cm伸びるというのが本当か検証したい」という理由で丸坊主にした成瀬が、高校卒業までという計画を途中で断念して高3の8月上旬に髪を切った美容室である。1ヵ月に1cmだと髪の長さは28cmになっているはずだが、実際にはトップは30cm、サイドは31cmだった。美容師さん曰く「若いから伸びるのが早いんやね」とのこと。

 ときめき坂の終わりに「馬場公園」がある。先述のM-1帰りにセブンイレブンで買ったアイス(成瀬はガリガリ君ソーダ味、島崎はチョコミントバー)を食べたり、ゼゼカラの漫才の練習場所でもあり、成瀬に憧れる小学生・北川みらいが落ち込んでいるところを島崎が励ましたこともあった。現在は改装工事中で園内に入れないのが少し残念だ。

 勝手な予想だが、成瀬と島崎がM-1帰りにアイスを食べたのはこの場所ではないだろうか。

 高校1年生の時、ここで漫才の練習中だった成瀬と島崎は実行委員長の吉嶺マサルからスカウトされ、ときめき小の校庭で開催される地域祭「ときめき夏祭り」の司会と漫才をするようになる。

 高校3年生の夏祭り前、島崎から東京へ引っ越すことを聞かされた成瀬は珍しく動揺して日常のルーティーンが乱れて勉強も手に付かなくなり、ここのブランコを全力で漕いで自分自身と向き合った。

 公園越しに見えるのが、西武大津店の跡地に建設された「シエリアシティ大津におの浜」(作中では「レイクフロント大津におの浜メモリアルプレミアレジデンス」)である。めちゃくちゃ大きいな。

 公園を抜け、右側へ回ってみる。先ほど公園越しに見えていた棟が左端で、右側にもうひとつ同じ大きさの棟が建っている。一体何部屋あるのだろう。

 西武大津店の閉店は成瀬たちが中学2年生だった2020年8月31日。竣工は今年の4月(成瀬たちは高校3年生)だから、解体から建設まで約3年半掛かっている。

 2025年夏、大学生になった成瀬がアルバイトをするスーパー「フレンドマート大津テラス店」(作中では大津打出浜店)へ度々クレームを入れている呉間言実とその夫・祐生が住んでいる。マンションを購入したのは2024年ということだったので、既に入居済みかもしれない。ということは、もうフレンドマートへのクレームも始まっているのかも。

 グーグルマップ上で「西武百貨店跡地」として表示されるのはもう少し(1区画)琵琶湖側で、そこは「シエリアシティ大津におの浜」のモデルルーム展示場や駐車場、一部は空き地のままになっている。

 『島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う』。成瀬の物語はこの場所から始まった。

 成瀬と島崎のマンションは後述する「Oh! Me 大津テラス」方面から見てびっくりドンキーの奥にあるということだった。2024年現在で築20年のマンションで、琵琶湖とは反対側の山が見える南向きの部屋らしい。駅からは徒歩で10分強、西武大津店跡地からは2、3分の場所である。彼女たちにとって西武がいかに身近な存在であったかは想像に難くない。

 ときめき坂方面へ戻り、「Oh! Me 大津テラス」へ。

 想像よりはるかに大きなショッピングモールである。

 大学生になった成瀬がアルバイトをしているスーパー「フレンドマート」(平和堂)は1階に入っている。

 ゼゼカラがときめき夏祭りでの漫才用に考えた地元あるある「平和堂の入口にある自動のアルコール消毒がめっちゃ出る」は本当だった。成瀬は余った分を顔につけているらしいが、私は怖くて出来なかった。

 お店の一角に成瀬コーナーがあり、フレンドマートの制服を着て記念撮影が出来たり、成瀬へのメッセージを書けたりする(読者様のお声)。

 私も成瀬へのメッセージを書いた。

 このメッセージコーナーは「やめたいクレーマー」(『成瀬は信じた道をいく』第3章)のオマージュだろう。関西らしい遊び心である。

 呉間言実がクレームを書いていた「お客様のお声」コーナーも実在する。彼女は備え付けのものは使わず自前の書きやすいボールペンを用意するほど熱心にクレームを書いていた。これだけの説明だと作品を読んでいない方はめちゃくちゃ嫌な奴を想像するだろうが、実際にはツンデレ系の憎めないキャラクターである。

 同じく1階にフードコートがある。ときめき小学校の「ときめきっ子タイム」(総合学習)で地域で活動する人を取材して紹介するという課題が出て、4年生の北川みらいはときめき夏祭りでなくした財布を一緒に探してくれたゼゼカラを取り上げることにした。この一連の取材がきっかけで彼女は成瀬に魅せられ弟子入りすることになるのだが、その最初のインタビューの場所がこのフードコートである。

 取材時、成瀬はフードコートを使うためにフレンドマートで好物のおやつ昆布を買って食べていた。私は昆布が食べられないので、併設されている「ドンクエディテ」でシュトーレンと珈琲を購入。さすがはドンク、シュトーレンがとても美味しい。

 オーミーでの糖分補給と休憩を終え、琵琶湖に出る。近くを通ったついでに眺めたことはあったと思うが、本格的に観光するのは初めてである。

 海のような広大さがありつつも、波はなく潮の香りもしない。不思議な感覚である。

 湖畔を歩いて大津港へ。作品内でも紹介されていた「うみのこ」が停泊している。

 琵琶湖の生き物や水質について学べる学習船で、滋賀県内の小学5年生は全員乗るらしい。

 時刻は12時30分。後編へ続く(後編はこちらから)。


12月14日(土) 午前10時のハンバーガー。

2024年12月16日 08時02分07秒 | 2024年

 8時起床。

 朝顔の水やりをする。

 朝食は後回しにして、家族3人で車に乗って娘の小児科へ。花粉症の舌下免疫療法の定期検診である。

 土曜日の朝一番ということでかなり混雑していたので、私は院内へは入らず、菊名駅前の「コロラド」へ避難(という名のサボり)。

 ゴールデンモカブレンドを注文。サイフォンで淹れているようなので楽しみにしていたら、その期待以上に美味しかった。強くはないが存在感のある酸味が絶妙である。

 診察終わりの妻と娘と合流し、朝食をとりに出掛ける。当初はハワイアンレストランという話だったのだが、娘の希望で急遽モスバーガーに変更された。

 10時の開店直後にイオン横浜新吉田店へ入り、フードコートにあるモスバーガーへ。

 娘はお子さまチーズバーガー、妻は新とびきりアボカドバーガー、私は黒毛和牛バーガー(山わさび醤油仕立て)を注文。

 トマトは結構遠方で生産されたものを使用している。

 朝食にしてはかなりがっつりである。

 黒毛和牛バーガーは山葵との相性も良くて美味しいが、モスバーガーらしさという点では少し物足りなさも感じた。

 前回同様テレビの目の前の席に座ったため、娘は旅番組を満喫しながらゆっくり時間を掛けてチーズバーガーを完食していた。のんびりとした週末感がある。

 クリスマスカードやお年玉用のポチ袋を購入してから、妻の運転で帰宅する。

 珈琲を淹れてお菓子を食べる。

 朝食(ブランチ?)ががっつりだったので、これといった昼食は抜き。

 妻が玄関や居間の片付けをしてくれている中、私と娘はゴロゴロして過ごす。

 その後もテレビを見たり少しお昼寝もしたり、まったりモード。

 入浴を済ませてから夕食。妻が唐揚げを揚げてくれた。タルタルソースと合わせて食べるとよりご飯が進む。また、鶏団子スープも生姜が効いていてとても美味しかった。

 洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。

 日付が変わる頃に就寝。


12月13日(金) スシローへ走る。

2024年12月15日 08時02分07秒 | 2024年

 6時半起床。

 朝顔の水やりをする。さすがにそろそろ限界を迎えつつあるが、まだ大きな種をいくつか付けており、もう少しで収穫できそうだ。頑張れ。

 朝食は蜂蜜入り豆乳ヨーグルトとソイプロテイン。

 娘を見送ってから、身支度を整えて家を出る。

 9時前に出勤。

 昼食は久しぶりに「本陣房」へ。

 今日は無性にお蕎麦が食べたい気分だった。

 鴨南蛮を頂く。

 濃いめの出汁と柚子の香りが絶妙である。お蕎麦も美味しいし、鴨肉はもちろん大きな九条ねぎがたくさん入っているのも贅沢だ。

 午後は打ち合わせなどで比較的バタバタして過ごす。

 定時から15分遅れで退社する。新橋駅まで走って電車は普段の10分遅れのものに乗り、品川からの新幹線は9分遅れ、新横浜に着いてからはタクシーで帰宅し、遅れは5分にまで縮小した。

 荷物を置いて車に乗り、民間学童へ娘をお迎えに行く。帰宅までは急いだが、車に乗ってからはむしろ普段以上に安全運転を意識する。

 娘を車に乗せて「スシロー」へ。無事に予約時間に間に合った。今日は妻が出張で少し遅いので、2人でスシローへ行こうと約束をしていたのだ。

 娘は久しぶりのスシローに大喜びである。

 寒ブリなど冬季限定のネタが多く、美味しい。

 「無理して食べすぎないようにね」と娘をたしなめつつ、私のほうが調子に乗って食べすぎた。

 デザートはシャーベット。娘はいつものメロン味、私は季節限定の梨味を選んだ。どちらも美味しいが、やっぱりメロン味が一番だねと親子で意見が一致する。

 コンビニへ寄ってから帰宅。妻は少し前に帰宅していた。

 入浴と洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。

 注文していた「Kalita」の珈琲ドリッパーが届いたので、さっそく使ってみる。夜の珈琲はご法度だが、今日だけは仕方ない。

 一般的な「円錐型」と「台形型」の中間的な抽出具合となる3つ穴タイプのドリッパーで、「カリタ式」とも呼ばれる。せっかくなので、波型フィルター専用でより特徴的なウェーブ式という種類を選んだ。

 これまで使用していた台形型に比べると抽出速度が速いため、お湯の入れ方次第で味に変化が生じやすいらしい。

 正直なところ、味の違いはわからなかった。何となくのレベルで言えば、これまでより若干すっきりした味わいになるのかもしれない。これから色々な淹れ方をして味がどう変わるのか楽しみである。

 日付が変わる頃に就寝。普段通りの時間に普段通りの眠気がやってきたが、やはり眠りの深さに影響が出ていたりするのだろうか。


12月12日(木) 石焼き芋。

2024年12月14日 08時02分07秒 | 2024年

 6時半起床。

 朝顔の水やりをする。

 朝食は蜂蜜入り豆乳ヨーグルト。

 娘を見送ってから、敷物類の洗濯と1階の部屋の掃除をする。

 9時から在宅勤務を開始する。

 寒いが良い天気なので、昼食は外へ食べに行く。

 久しぶりに「ちゅらさん」へ。

 シークワーサージュースはオールシーズン美味しい。

 いつもの軟骨ソーキそば。少し前にこのブログを読んでくれている友人から「あの沖縄料理屋さん行ってみたいんだけど、紅生姜がちょっと苦手なんだけど抜いてもらえるかな」と聞かれたことがあり、他にも同じような人がいるかもしれないのでお伝えしておきたい。ご安心ください、紅生姜はデフォルトでは入っておらず、毎回自分で入れています。

 紅生姜の有無に関わらずとても美味しいので、自信を持っておすすめします。

 フィットケアデポ(ドラッグストア)へ寄り、お菓子などを買ってから帰宅する。

 TBSラジオ『空気階段の踊り場』で12月限定のスポンサー(日清シスコ)コラボコーナーとして実施されている「孤独なココナッツサブレ」を聴いていて、思惑通り「ココナッツサブレ」がどうしても食べたくなった。私が子どもの頃に食べていたプレーンのものに加えて、今は発酵バター味も売られている。

 珈琲を淹れ、さっそく食べ比べてみる。

 左が発酵バター、右がプレーンである。見た目に違いはない。しかし、発酵バターの味は名前のとおりバターの芳醇な味と香りがマシマシになっていて、インパクトは強い。ただ、食べやすさという点では安定のプレーンに分があるように感じる。いずれにしても、久しぶりに食べたがとても美味しかった。

 娘が帰宅する。私の予想より20分近く遅く、最後は気が気ではなくて家の周辺をうろちょろしていたのだが、寄り道をしていたとかではなく、今日は掃除があった関係で下校時間そのものが遅かったようである。

 勤務終了しばらくして、外から「い~しや~きいも~、おいも~」という石焼き芋屋さんの放送が聞こえてくる。娘からこの音は何なのかと聞かれ、「トラックで焼き芋を焼きながら売ってるんだよ」と教えたら興味津々だったので、2人で外へ出て買ってみることにする。1本500円という値段におののきながら、2本購入。焼いている様子も見せて頂き、娘はとても良いリアクションをしていた。

 さっそく1本を2人で分けて食べる。買ってはみたものの、娘はそれほどサツマイモが好きではないのですぐに飽きるだろうと思っていたのだが、「この焼き芋はおいしいわ」と言いながらしっかり食べていた。正直なところ、蜜も多くないし若干スカスカだしあまり良いお芋ではないと思うのだが、確かにこれくらいのほうが量は食べられるかもしれない。私も、今流行りの蜜たっぷりねっとり系より昔ながらのホクホク系のほうが好きだ。

 入浴を済ませ、妻が帰宅してから夕食。生協の焼き鳥とお味噌汁などを食べる。

 洗濯を済ませ、娘を寝かしつける。危うく私もそのまま寝落ちするところだった。

 日付が変わる頃に就寝。