自衛隊の練度レベルは世界的にも高いものだが、運用に当っては法律や社会的な制約が多い。 自衛隊が抱える問題点を、元自衛官であり教官でもあった著者が考察する。
平和な日本を支えている影の存在が自衛隊である。 ここ数年は、災害支援や基地のイベントなどで、平和的な存在であることを PR しているが、本来の使命は防衛である。 しかしその機能を果たそうとすると様々な障害がある。最初は法律。 基本的に攻撃は不可であり、作戦指揮にも法律の壁がある。 仮に戦争が始まった場合、想定される事態と辻褄が合わない戦力の問題、組織や国家戦略、自衛官自身の問題など、著者の経験を踏まえて問題点を指摘しており、大変勉強になった。 この本は私論であるから、著者は考え方を自由に披露しているけれど、現役の自衛官や官僚からの異論反論も多いと思う。
自分のような一般人は、ミリタリー雑誌や専門誌等で、自衛隊装備の能力などハードウェアに関する情報はよく見ているが、それを運用する自衛隊の組織や隊員の実態については関心が薄く、知らないことが多かった。 特に武器使用に関する法律の厳しさや、実態に合わない法制度などは、一般人にはなかなか分かりにくい。
また国防を担う隊員のなり手が少ないのも大きな問題。 熱狂的なミリタリーファンは確実に増え続けているのに、自衛隊員にはなりたくないという流れだ。 軍事オタクはネットで声高に国防の重要性を叫ぶけれど、所詮他人ごと、人任せである。 自分が隊員になって国防を担いたいという人はほとんどいない。 また自衛隊員の中にも、公務員気質で国防を真面目に考えない若者もいて、現代の隊員気質を憂える著者の心配が印象に残った。