今年最初に読んだ本です。
三島由紀夫と言えば、劇的な最期を遂げた有名な小説家ですが、彼の作品を読んだことがありません。そこで彼について知るために読んだ本がこのドナルド・キーンに宛てた書簡集で、1956年から1970年までの15年間に書かれた97通の手紙が収められています。この本では、彼の伝統芸能や演劇や文学についての考えや作品の発表の舞台裏(お金の話も含めて)や様々な出来事に対する本音を知ることができます。日本の古典的な伝統芸能や演劇についての背景知識を持っていないと何が言いたいのかさっぱり判らない部分がありますが、彼のユーモラスな人間性はこの書簡からも窺い知ることができます。自分のことを「魅死魔幽鬼夫」とユーモラスに書いていた三島由紀夫が、「小生たうとう名前どほり魅死魔幽鬼夫になりました」と書いた
最期の手紙は、彼が親しかったドナルド・キーンに宛てた遺書とも読み取れます。「文士でなく武士として死にたい」という文章も彼なりの最期のユーモアのつもりだったのかもしれません。
意見交換を手紙で行っていた昔の人達は、その手紙自体が交友録であり、それを証拠として残すことができました。けれども電子メールに頼る私達は、電子データというある意味危うい
媒体で連絡しあっています。(パソコンや携帯が無いと見られず、しかもデータ簡単に消せるという意味での危うさです)友人との交友録を手紙で残すというのは、今でも価値のあることだと思います。